「ありがとうございましたー!」
「はぁ……」
溜息ひとつ、俺は自分の財布をしまった。
残高は三千円。月末まではあと十日。本来ならばこれでも十分すぎるのだが、初音ミクが我が家に来てからは、いくらあっても足りない生活を強いられている。これほどの我儘の塊に、俺は今まで出会ったことがない。
当の張本人は、ビニール袋を手に持って、満面の笑みで鼻歌を歌っている。
ショッピングモールに入ってから三度もものを買わされている。あっという間に飛んでいった2000円に俺は唾を飲んだ。そして察する、このままではまずいと。
「さて、ミク、そろそろ帰るよ」
「そうなの? 了解です! あっ!」
またまた何やら欲しいものを見つけたようで、ミクは目的と思われる店へ一直線に走っていく。
帰ることには同意してくれたので、あとはこれをしのげれば、無事に帰路に立つことが出来るだろう。俺は、ゆっくりとその店に向かいながら、必死に頭を巡らせる。
「もう、遅いよ隼人! これねこれ、これが欲しいの!」
指差す先にあるのは金色の髪飾り。値段こそ500円と、その類のものにしては安いわけだが、今の俺にとっては大金である。さてどう回避しようか、頭をフル回転させて俺は考える。様々な策が頭に浮かんでは消え浮かんでは消え。まるで走馬灯のよう。浮かんでは消え浮かんでは消え。俺は遂に最善の策を見つける。
「ミク、今日俺はお前にたくさん買ってあげたよな?」
「うん」
「他人がたくさんいいことしたのにまだねだる人は、神様に嫌われてもうねだれないように家族とか友人を全部奪っちゃうんだ。それぐらい知ってるだろ?」
「ほ、ほんとう!?」
無論、まっぴらな嘘である。だが、ミクは社会知らずの子である。そしてこの単純さと合わされば……。
「し、知らなかった……。分かったよぉ……諦めるよぉ……」
それみたことか!
心の中でガッツポーズをして、俺は歩き出す。この僅か数分の中であまりに頭を使ったため、俺の疲労はピークに達していた。だが、それに見合うだけの達成感も味わうことが出来たので、俺は笑顔でショッピングモールを出ようとする。
だが、表情はすぐに歪んだ。否、歪まされた。
「あ! あれ欲しい!」
「ミク! さっき言っただろ、おねだりが過ぎると神様に嫌われるって」
「だってさっきのおねだりは引っ込めたじゃない! 神様だってそこまで冷たい人じゃないでしょ? 冷たい人だったら神様って呼ばれてないはずだもんね、だから、今回は大丈夫なの!」
な…………。
何か考えるが、疲れ切った頭はもう回らない。そして目の前ではミクが自信満々に自説を通すつもりでいる。
引きつった笑顔のまま、俺はカウンターに向かった。
「ありがとうございましたー!」
「はぁ」
溜息ひとつ、俺は自分の財布をしまった。
No.4 金欠【ボカファ】
始めましての方も。お久しぶりの方も。
こんにちは。
ヘルです^^
アップが遅くなりました^^;
作品自体は出来上がっていたんですけどね、忘れてますた←
前回のNo.4は2828回でしたが、今回は毎度毎度のネタ回です←
ほとんどがネタ回ですけどねw
金欠のことはNo.1でも仄めかしましたが、フラグ回収ですねw
今後も金欠関係でのイベントを使いそうな気がします。
次回いつになるか分かりませんが、それ相応に速いペースで上げたいとは思ってます、はいOTL
今回は読んでいただいてありがとうございました~^^
読者の皆様にワルキューレが微笑むことを
コメント1
関連動画0
オススメ作品
8月15日の午後12時半くらいのこと
天気が良い
病気になりそうなほど眩しい日差しの中
することも無いから君と駄弁っていた
「でもまぁ夏は嫌いかな」猫を撫でながら
君はふてぶてしくつぶやいた
あぁ、逃げ出した猫の後を追いかけて
飛び込んでしまったのは赤に変わった信号機
バッと通ったトラックが君を轢き...カゲロウデイズ 歌詞
じん
意味と夢と命を集めて
作られてしまって身体は
終わった命を蒸し返す機械らしい
【これは彼の昔のお話】
人一人は涙を流して
「また会いたい」と呟いた
ハリボテの街の終末実験は
昨日時点で予想通りグダグダ過ぎて
その時点でもう諦めた方が良いでしょう?
次の二人は 街の隙間で...コノハの世界事情 歌詞
じん
ねえ 僕らは何千年 何を目指して歩いてきたんだっけ
歩んだ数千年 に一体何を期待してたんだって
煌めく満月と 僕らの存在なら対照的で
みち照らす月光は 不安定な将来への道しるべ
ねえ 君らは約何年 何を探して歩いてきたんだっけ
うずいた唇を 息の根止まるくらいに貪って
溶け込んだ よだれと悪魔の囁き...僕の数千年
mint
■Vocal : 初音ミク, 鏡音リン
■Music : ユラメ
■Guitar:Sayu
煽ってくる様なまたそんな浮遊感
嫌なこと隠して
煽ってくる様なまたそんな傷跡
晒して 見せてる
溜まり込んだ気持ちの最中
今も
蠢いて光っている...未知のまま Lyrics
ユラメ
ゼロトーキング / はるまきごはんfeat.初音ミク
4/4 BPM133
もう、着いたのね
正面あたりで待ってるわ
ええ、楽しみよ
あなたの声が聞けるなんて
背、伸びてるね
知らないリングがお似合いね
ええ、感情論者の
言葉はすっかり意味ないもんね...ゼロトーキング(Lyrics)
はるまきごはん
気付いてよ 君のこと
好きなんだったら好きなんだ
独り占めしたいんだ
好きなんだったら好きなんだ
君といる夢を見た
ヒロインは私で決まり
人目憚らず王子様にキスされて
そんな夢を見た 今の私は
なぜ…
どこにでもいるモブの一人...好きなんだったら好きなんだ
おんださとし
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想
kumoia
ご意見・ご感想
(ノ゜ο゜)ノ オオォォォ-
No.4でましたかー。
金欠はラノベ系小説には欠かせないです。どっかで絶対一回はいれなくちゃ、というくらいのもんですからね~(すごいのは500円ぐらいしかない話もあるですよ~)
ちょうど昨日の夕方、2週間の英国研修というものがありまして、帰ってきたばっかなんですよー
ナイスタイミングですねー
2012/09/13 10:01:34
ヘルケロ
おw
さっそく読んでいただけたようで嬉しい限りです^^
そして金欠は大切ですよね?w
500円……がんばるねぇ?(遠い目
そして、英国研修!?
優等生!? いや優秀な社会人!?
こんな方に読んでいただけていたとはとは(汗)
次回もお楽しみにね!←
2012/09/13 11:15:48