※もう少し諸注意続けます(汗)
何年も前に書いたテキストの続編です。
まずは前作をお読みいただくことを推奨します。
こちらhttp://piapro.jp/antiqu1927の投稿作品テキストより。
・カイト×マスター(女性)
・妄想による世界観
・オリキャラ満載
・カイトは『アプリケーションソフト・VOCALOID・KAITO』の販促用に開発されたキャンペーン・イメージロイド(?)機械的な扱い、表現を含む
・女性マスターの一人称が『オレ』
恐らくツッコミ処満載ですが、エンターテーメントとして軽く流して楽しんで頂けると幸いです
上記が許せる方は、自己責任で本編へどうぞ
☆☆☆☆☆☆☆
〈シャングリラ第二章・三話②~続・社会進出の為の日常の数々~〉
その③
SIED・KAITO
社会生活の為のあらゆるマナーや常識は、必要最低限の基本的知識として俺の中にある。が、それらを応用し実践的に使いこなすには、やはり地道に『経験』を積むしかない。
公共にある様々な施設を回り、見ず知らずの人間と会話する。それが目下の俺の日常になった。
「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」
「んー、オレはおろしハンバーグ、ライス・サラダ付きで。あと、アイスティーをストレートとアップルパイね、」
「…では、俺はキノコのクリームパスタとアイスラテ、アイスクリーム三種盛で、」
「かしこまりました、」
☆☆☆☆☆☆
「あー、正隆さんがいないと、自由でいいねー♪」
「そうですね、」
運ばれてきたハンバーグを美味しそうに頬張りながら、マスターが笑う。
今日は午前中から、彼女と二人でデパートに来ていた。
店を端から回っていき、気に入ったものを購入しながら散策。昼時の混雑を避けて、上階にあるレストランに入った。
今回の外出には、正隆さんはいない。現在研究開発中を進めている女性型アンドロイドにかかりきりで、しばらくこちらには顔を出せないらしい。
…しばらくは、マスターと二人きり。
「でも、ちょっと調子に乗って買いすぎちゃったかなー、」
傍らに置いたショッピングバッグの中には、服や靴など数点が入っている。決してそう多くはないと思うが、普段はあまり買い物に興味のない彼女には、そう感じられたようで少しきまり悪げに肩を竦めた。
「たまにはいいんじゃないですか?それに、マスターのものはそんなに買ってませんよね、」
「うん、まぁ、」
確か、シャツを二枚購入しただけで、あとは全部俺のものだった。
俺が様々な系統の服を試着するのを楽しんでいたマスターは、そのうちの何着かを購入。その後も彼女の喜々とした笑顔が嬉しくて、好きな人に服を選んでもらえる幸せを噛みしめながら、言われるがままに店を巡った。
「それに、所長さんから預かった経費以内に収めてますから、問題はないと思います、」
「…そっか、そだね。じゃあさ、このあと午後はどうしよっか。今まだ14時前だから、帰るには早いし、」
頬杖をついて時計を見るマスターが、さりげなく俺のパスタにフォークを伸ばす。あ、もうハンバーグは食べきってしまったのですね、俺の残りでよければ全部あげますよ。
口が小さいのに、いっぱいに頬張ってもぐもぐする動き…彼女の食事風景は、いつも俺の心を和ませてくれる。
「では、催事場に行ってみませんか?今この一つ上の階で、物産展やっているみたいですよ、」
「いいねー、行こ行こ!」
先ほどインフォメーションを通りかかったとき、貰っておいたパンフを見せると、マスターの目が輝いた。よかった、この提案は気に入ってもらえたみたいだ。
「…あっ、ねーカイトー、」
「はい?」
「何かこれって、デートみたいだよね、」
「…!」
いいえ違います!みたい、ではなく完全にデートです!
その④
SIED・SINOBU
今、カイトはメンテのためラボのほうに行っている。
いつもなら、オレも付き添いで一緒に行くのが当然なのだが、カイトのデビュー用の曲を作っている途中だったから遠慮させてもらった。オレの場合、気分が乗ってるときに一気にやるのが一番いいからだ。
今日は朝から体調・気分・環境・天候等、取り巻く全てのバランスがよくて、うまく自分の中にある『何か』を捉えられた。こんなにはっきりと『捕獲』した感触は久しぶりかも。この調子なら、あと2~3曲はいけるな。
捉えた曖昧なものに、色と形と匂いと性格を与えて、あとは…。
………。
そこでオレは、今更ながら大変なことに気が付いた。
「………マズい、」
どうして、何でもっと早く気づかなかったのか、一瞬で脳内が真っ白になる。全身の血の気が引いて、身体が震えた。
オレ、作詞とか。
し た こ と な い 。
「ああああああああああああああああああああ‼‼‼」
嘘だろ⁉嘘だろ‼マジか‼
何やってんだオレ⁉
今まで、ピアノソロ用の曲しか手掛けてこなかった…。
歌詞って何?どうやって書くの???
「うわあああああああああああああああ‼‼‼」(大パニック)
「ど、どうしたのっ⁉篠ちゃん何があったの‼⁇」
「マスター‼大丈夫ですか‼」
どうしよう、どうしよう、こんな致命的なミスに今頃…‼
「篠ちゃんてば、ちょっと‼暴れないで‼」
「マスター‼マスター‼落ち着いてください、俺がわかりますか⁉」
馬鹿じゃないか⁉いや馬鹿だろ‼もうこれ馬鹿でしかない‼これじゃカイト歌わせてやれないじゃないかぁぁぁぁぁぁ‼‼
「あわわわわわわわ(汗)」
「マスター、俺を見てください‼ほら、わかりますね?大丈夫ですよ、」
「…あ、」
視界を塞ぐ蒼と、身体を包み込む暖かい何かに、やっと二人の存在に気付いた。
「カイト…、ごめん、」
心配そうにオレの顔をのぞき込むカイトの温もりに、目の前が滲んで溶けていく。
「…マスター?泣いてるんですか?」
ごめん、ごめんね、覚悟と責任をもってお前を受け入れたはずなのに、こんな不甲斐ないマスターで。
「オレ、もう、…死ぬしかない、」
「「なんで‼⁇」」
見事にハモる二人の声に返す言葉もなく。
オレは困惑するカイトの胸に顔を埋めて、ただただ号泣した。
三話③へ続く
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