色のない無機質な空の下の見たこともない町の高台の上で学校の制服のセーラー服に身を包んだ私は大声で叫んでいた。
「ここ、どこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
ペットして可愛がっているクワガタがそんな私の肩をのん気に這っていた。
「っていうかここって未来・・・だよね?」
高台から見える町並みはまるで小学生が画用紙に書いた「みらいのまち」のようなマンガチックな世界だった。
「アタシ、たしかふざけてクワガタにチョップして遊んでたらいきなりクワガタが光って・・・はっ!!」
ここに来るまでのことを思い返してタイムスリップした原因に思い当たる。
「お前かあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
肩を悠々と這っていたクワガタを捕まえて鬼の形相で睨む。
ズビシッ!!
「かえせ!!」
ズビシッ!!
「アタシを元の時代に帰せ!!!」
ズビシッ!!ズビシッ!!ズビシッ!!
完全に錯乱した私は一心不乱にクワガタにチョップしていた。
「こら!!そこの歯ならびがリアス式海岸の女子高生そこで何してる!!」
人の最大のコンプレックスを叫びながら変な髪形の警官?らしき男が声をかけてきた。
「気にしないで下さい。クワガタにチョップしてるだけですから!!」
「いや、どんな理由が知らないがむやみに昆虫をチョップするのはいけないから」
警官はそう言って注意した。
「で、クワガタにチョップしてたのはいいとしてなんだい君のその格好は?」
「・・・え?何かおかしいですか?」
自分で見回すが特に変わったところは見当たらないのように思える。
「その明らかに50年前に流行ってました的な制服はコスプレか何かかい?それにそのクワガタちょっと見せてもらえる?」
「は、はあ?どうぞ」
クワガタを見てどうするのかわからないがとりあえず言われた通りクワガタを見せる。
「ふむ?・・・ん?こ、これはやっぱり!!お嬢さんこのクワガタどこで手に入れた?」
「ペットですよ。普通にデパートで買いましたけど?」
「そんなバカな!!このクワガタは10年以上前に絶滅したはずの種類のクワガタだぞ!!」
警官が声を荒げて詰め寄る。
「え、え~と信じられない話だと思いますけどアタシ、過去からタイムスリップして来ちゃったみたいなんです」
正直にタイムスリップしてこの時代に来たことを打ち明ける。
「・・・・・・・・・・にわかに信じがたいが君の格好とそのクワガタを見ると50年前の過去から来たと言う君の話を信じるしかなさそうだな」
元の時代の話と簡単ないきさつを話すと驚いたことに警官は私の話を信じてくれたらしい。
「あの、アタシこれからどうすればいいんですか?
「どうすればってとりあえず署に行って・・・・・ん?待てよ?身元が分かるならひょっとして・・・」
警官が何か思いついたらしくブツブツとつぶやく。
「とりあえず、これを見てくれるか?」
警官がポケットの中から鏡のような物を取り出す。
「これですか?」
覗いてみるとしばらくして鏡だったものが黒くなり何かの端末の画面のような物に変わる。
「あ、やっぱりあった!!今、君の網膜と指紋のデータを市役所に送ってみたがやっぱり登録があるな」
「どういうことですか?」
言ってる意味がよくわからないので聞き返す。
「つまり、この時代にも君が居るってことだよ。あとは住民票にある住所に行けば逢えるだろう」
「え?ほんとにアタシがこの時代にいるんですか!!」
考えてみれば50年後の未来なら居てもおかしくないが居ると分かるとやっぱり驚く。
「住所はすぐ隣町だから送って行こう。この時代の君に逢えばおそらく帰り方も分かるだろう」
そう言うと警官は端末に映し出された住所まで送ってくれた。
「ここだよね?」
警官が送ってくれた場所に未来の一軒屋が建っていた。
「ここに未来のアタシが居るんだ・・・ううっ緊張してきた」
そう思いながらそっとピンポンを押した。
「は~い」
そういって出てきたのは三十代半ばぐらいの私に似た女性だった。
「あ、あのアタシっ・・・」
極限の緊張で頭が真っ白になる。
「ふふっ・・・あなたが誰なのか母から聞いて分かってます」
そう言ってその女性はリアス式海岸な歯を見せながら微笑んだ。
「母って・・・まさかっ!!」
彼女のその言葉で彼女の正体に気づいた。
「ええ、私はあなたの娘です。母から今日たずねてくるだろうと聞いて待っていました」
「娘えええええええええええええ!!」
うすうす分かってはいたが衝撃の事実を前に叫んでしまう。
「お母さん、そのお姉ちゃんだ~れ?」
私の娘と名乗ったその人の足の影から小さな女の子が顔を覗かせた。その歯並びはやっぱりリアス式海岸だった。
「孫おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
私はその女の子を見た瞬間おもいっきり抱きしめた。
「ごめんね!!ごめんね!!リアス式海岸でごめんね!!でも、港としては優秀だから!!」
二世代経ってなお色濃く残った私の負の遺伝子を持ったその女の子に私は精一杯の謝罪をした。
「母は今、病院にいます」
「え?病院?」
「行ってあげて下さい。あなた一人で病院に行くこと。それが母からの伝言の全てです。
「ここか・・・」
教えられた病院の教えられた病室、入院とは無縁の生活をしてきた私がはじめて見る自分の病室プレート。
「ここにアタシが居る・・・」
コンコン
「失礼します」
「遅かったじゃない。待っていたよ」
部屋の中心、たくさんのチューブに埋もれたベッドの中からまるで最初から私がここに来ることが分かってたかのような返事が返ってきた。
「っつ・・・アタシだ・・・」
声の主を見た私は息をのんだ。青白い肌、やせ細った身体、皺くちゃな顔、それでいながら絶対に見間違いようのない姿、この老婆は間違いなく私だった。
「あんたがここに来ることは分かってた。なぜならあんたは50年前の私。今、あんたが見ている景色は全て50年前に私が見た景色なんだからね」
「そっか、そうなんだね」
ベットの私が本当に私と同一の存在なら今ここに居る私は彼女にとっては過去の自分。つまり彼女もまた一度未来へ行って同じ体験をしているということになる。
「聞きたいことがあるんじゃないのかい?・・・たとえば誰と結婚したのかとかね?」
「っつ!!そ、それは!!」
彼女は未来の自分ということはつまり私の未来{運命}を知っているということである。
「逆の立場から言うとあんたに何か教えることで私は{運命}を変えることができる。過去の失敗や後悔をやり直すことができる」そう、老婆の私は自信たっぷりに言った。
「でも、私から伝えるのはたった一つだけだ」
そう言って老婆の私は静かに語りはじめた。
「これから、あんたは何度も失敗して、何度も挫折して、何度も後悔して、そのたびにたくさん涙を流すことになるだろう。でもね、それも時間が経って思い出として噛み締める時がくる。だから、今は何も知らずに元の時代に帰りなさい」そう言って老婆は最期にこう締めた。
「大丈夫。今、私はちゃんと幸せだ・・・じゃあね、過去の私」
そして、ベッドの上で<私>は静かに息を引き取った。
「じゃあね、未来のアタシ」
「う、う、うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」私の目から大粒の涙が流れた。
そして、その涙がクワガタの上に落ちた瞬間、クワガタは光った。
「あ、あれ?空が青い・・・」
病室で泣いていたはずだったが目を開けた時には何故か外にいた。
「ははっ!!帰ってきたんだ!!!」
青い空と高台からはありふれた普通の町並み。元の時代の景色だった。
「うんっ!!アタシ精一杯今を生きるよ!!!」
それは過去から未来の自分への約束だった。
クワガタにチョップしたらタイムスリップした
家の裏でマンボウが死んでるP様の名曲を元に小説を書いてみました。タイトルでネタ曲だと思ったら泣けるGUMI曲でビックリ!!
pixivからの転載になります
[pixiv] http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=741335
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