それは突然だった。
今まであったものが全部消えてしまった。
当たり前だと思ってた日常が、突然姿を消した。
どうして、私はボーカロイドでマスターは人間なんだろう?
どうして、私は生きているのにマスターは死んでしまったんだろう?
私のために歌を作ってくれた、私のためにいろいろなことを教えてくれた、私のために沢山の場所に連れってってくれた、私のために、私のために私のために私のために……。

私のマスターはどこなの?

私はマスターに何を与えただろう?
私はマスターに何をあげたのだろう?
私はマスターにもらってばっかりで、まだ恩返しも何もできてないのに。
こんなの不公平だよ。
マスターがどこにもいない。
私のために、また歌を作って。
マスターの歌を皆んなに聞いてもらえるように私頑張るから。
また、1からはじめよう。
出会った時のように。
だから、戻ってきてよ!

データが劣化して消えていく。
音楽ファイルも、思い出ファイルも全部少しずつ消えていく。
私というデータはあとどれくらいまで残れるのかな?
劣化は、死?
それなら、私もマスターにもう一度会うことができる?

周りが暗くなっていく。
マスターと共にすごした大切な鮮やかな世界が黒く塗り潰されたかのように真っ暗になっていく。
思い出が少しずつ剥がれ落ちて、所々思い出せない。
嫌だよ、怖いよ、マスター。
泣いていた私を抱きしめてくれたあの日のように、温もりを感じたい。
少しずつ蝕まれ、マスターの声や姿が思い出せなくなってくる。
大切な大切なマスターの記憶が消えていくのが怖い。
私はどうなっちゃうんだろ?
私はマスターの所へいけるのかな?
機械の私と人間のマスターが、同じ場所に本当に行けるのかな?
「私なんかが、マスターのところになんて行けるはずない。」
ノイズ混じりの私の声がさらに私の恐怖を煽る。

最後に作っていたマスターの曲、完成したのが聞きたかったな。
最後まで完成しなかったあの曲、マスターが生きてたらどんな言葉を紡いでいたんだろう。
私が考えたってわからないけど、きっとマスターらしい言葉だったんだろうな。
私が歌って上手くいってないところでたまに喧嘩して、それで、それで?それでどうしてたんだっけ。

マスター、ごめんなさい。
大切な事なのに、もう思い出せないよ。
マスター、ごめんなさい。
私はマスターのところへなんて行けない。
ますたーごめんなさい。
もし、またどこかであえるならカンセイしたあのキョクをわたしにうたわせてください。

さよウなラ……。











No Data.

ライセンス

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No Data Miku.

マスターが死んだあと消えていくまでのミク。

閲覧数:116

投稿日:2021/11/23 04:58:35

文字数:1,088文字

カテゴリ:小説

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