第三十二話 守りたかった

 おとてはつい四半時前くらいと同じ、不気味な笑みをその頬に浮かべていた。

 
 “――殺される――?”


 たぶんぐみも、おりんさんも、同じような感情を持っているだろう。
目の前のこのおなごに、ひとたまりもないほどに木っ端微塵にされるかもしれない。

 今にも震えて、泣き出してしまいそうだ。


 ≪雪女≫というのは、あまり攻撃性がない。
使える術や、妖力というのも、雪を降らせるくらいしかない。

 だた、ひとつ。

 用心すべき点があるのだ。


 それは―――。



 ――ひゅっ


 そんな何かが鋭く風を切る音とともに、ぐみの「きゃっ」という声が聞こえた。

 驚いて少し後ろにいたぐみに振り返る。
少し頬から血を流していた。
ぐみの真後ろの柱には、つららのような尖ったものが突き刺さっている。

 ――そう。これだ。

 ≪雪女≫は、物を凍らせ攻撃してくる。
今のは小さかったが、おおきな物を受けると、人間など一溜まりもない。



 「くすくすっ。 さぁて、どうするのかねぇ」



 まるで子供のように笑うおてと。



 「れん、逃げて」



 その声は、おりんさんだった。



 「えっ……でも、ここは……っ」


 「いいからっいきなさい!!」



 らしくもなく、大声を出したおりんさんに、私はなにも言えなかった。



 「……わかり、ました……」



 私はぐみの手をとって、人ひとりがやっと通れるくらいの破れた穴から抜け出した。
おてとは追ってこない。何かを言っても来ない。



 おりんさんが何をしようとしているのかは分からない。



 それでも、あんなふうに言われたら―――。








 本当に、あれでよかったのか。





 守りたかったんじゃないのか。








 あの人を、あの子を――。







 守りたかったよ。




 守りたかったよ。




 守りたかったよ―――!!!












 “でも、僕には出来ないんだよ――……。”




















ライセンス

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ノンブラッディ

閲覧数:108

投稿日:2013/01/19 09:36:32

文字数:901文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • Seagle0402

    Seagle0402

    ご意見・ご感想

    レンっ!
    おりんちゃん置いてっちゃ駄目でしょーが!
    おりんちゃんには何か計画(?)でもあるのでしょうか…?

    2013/01/21 06:23:17

    • イズミ草

      イズミ草

      色々あるので、レンにも……っww
      やるせない様々な感情がいっぱいなのです、多分っ
      私がそうですから、たぶん。ww

      何かあるんですかねww
      いまだにおりんさんが何を考えているのか……把握できてませんww

      2013/01/21 18:59:53

  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    ダメじゃん!w
    そこは俺に任せろ!だろ!
    何、女の子に守ってもらってるのさ!←

    雪女関係、私も書きたい
    そして、どうでもいいけど、今年の雪ミクがかわいすぎるww

    2013/01/20 14:01:15

    • イズミ草

      イズミ草

      色々あるわけですww
      レンもきっと、「ダメですっ! おりんさんを置いてはいけませんっ」
      とか言いたいんでしょうけど……

      書きたいなんて言ってくれるなんて……
      どうず書いてくださいww

      わかりますw
      今までの雪ミクは微妙でしたが
      今年は描きたいぃぃってなりますww

      2013/01/20 14:09:44

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