【メイコちゃんカフェ】2話『ベルサを持った悪魔』
とある雪国の―――
とある街の―――
小さなカフェを営むメイコの
とある日常です。
今回は、ちょっとエッチな書き出しかも?
『ベルサ』という葉っぱの模様のコーヒーカップのお話です。
「はぁ、はぁ……、もうやめて」
「ふふっ、いいじゃねえか、好きなんだろう?」
「イヤ!もうだめっ!―――買うっ!」
メイコはカウンター越しに顔を赤らめながら言った。
そして向かいの席で意地悪そうな顔してニヤニヤしてるのは
近所の骨董品屋の主であるルカである。
最近仕入れたアンティークのコーヒーカップを売りつけに
メイコの店にやってきたのだ。
「はぁ……、今月、ピンチなのに~……」
メイコは溜息混じりにレジから数枚の千円札を抜き
裸のままでルカに渡した。
「まいど♪」
ルカはお金を受け取ると膝に畳んでいたツイードのコートの
ポケットにねじ込んだ。
「もう、しばらく何も持ってこないでよね」
「えへへへ、こういうのってさ、突然入荷するのよね~」
アンティークのカップの出物が入荷すると、とりあえず
ルカはメイコの店に持ってくるのだ。
メイコの趣味を良くわかっていて今のところ、ほぼ100%の
確立で買わせている。
はじめは数回、普通の客としてルカは訪れたのだが
そのうちにメイコと意気投合し、彼女が骨董屋をしてるのを
知ると、何か面白いものは無いかと尋ねた。
コレがいけなかったようで。
ルカはやたらとセンスが良く、メイコの店をよく理解していたので
彼女の感性を刺激する商品を用意するのは容易だったのだ。
初めて持ってきた商品は『葉』を並べた模様が印象的な
北欧のペアカップ、「ベルサ」で
しかも貴重な年代物だったのでメイコは値段も聞かず買ってしまった。
一日の売り上げを吹き飛ばす金額だったが
いずれは手に入れようとした物だったので
それはそれで納得していたのだが、数日後、また数日後
断りにくい商品を持ってやってくるのだ。
どうやらルカは骨董屋の売り上げが悪い日に
メイコの店に商品を小出しに持ってきているようで
まんまとメイコは餌食になっていた。
メイコは心の中でルカの事を
『ベルサをもった悪魔』と呼んでいた。
しかし、メイコもやられてばかりでは無い。
ルカは先ほどからチラチラと
カウンターの隅に置いてあるケーキドームの中身が
気になってるようで、漂う匂いの誘惑に負けメイコに尋ねた。
「……、ねえ、あれ。何が入ってるの?」
メイコはシメシメと思ったが、おくびにも出さず
「ああ、今日の”おススメ”よ」
「……ふぅん。ケーキ?」
「いえ、”ツナとポテトのキッシュ”だよ」
「ぐふぅ! そ、それは、腹ペコな私には破壊力満点な品ね……」
キッシュなんて頼んだら、飲み物も欲しくなる。
ルカは目の前のコーヒーが空になってるのを悔やんだ。
メイコは止めの一言を放った。
「……黒ビール、冷えてるよ。ツボルグだけど」
暖房の効いた室内でこのコンボは最強だ。
「んが~~~!謀ったな!女っ」
「あははは、まあ、いいじゃない、お互い様でしょ」
結局、ルカはまんまとメイコのおススメ&黒ビールを
胃袋に納め、ツイードのコートから先ほどねじ込んだ
お金をいくらか払い戻す事になった。
玄関先でルカを見送るとすっかり日は沈み
しんしんと降る雪の中、ルカの足跡を残していた。
その足跡はまるでベルサの『葉』のようで
やっぱり彼女は「ベルサを持った悪魔」の様だと
一人でメイコは笑った。
―おしまい―
メイコちゃんカフェ『ベルサを持った悪魔』
メイコちゃんカフェ、第二弾。
骨董屋の店主としてルカさんが登場。
これまでのメイコちゃんカフェシリーズ。
メイコちゃんカフェ『雪ウサギ』
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メイコちゃんカフェ 『優しい苦さ』
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悠樹さんによるスピンオフ作品
こちらも是非お読みください。
メイコちゃんカフェ・別館『カイトくんバー』
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メイコちゃんカフェ・別館『カイトくんバー』②
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ご意見・ご感想
あみっこ
ご意見・ご感想
ルカの骨董品屋、、!ぜひ行ってみたい。
私も北欧雑貨好きなんです。
自分もこの二人とは趣味が合いそう。
会話に混ぜってみたいな、なんて思いました。
2023/06/21 22:05:53