妙な友達ができた。友達と言っていいのかすら怪しい、他人の恋路にああだこうだと口出ししては、茶化す嫌な奴らである。しかも、勝手に仲間にされてしまった。
リントはちらりと隣を見た。ソファのはじっこにちょこんと申し訳なさそうに座って、本を読みふけっているレンカがいる。こいつも一緒に仲間にされてしまったが、レンカはそれでいいのだろうか。
大体、俺はレンカがここに来る前、どんな生活を送っていたのかも知らないし、そういえば、レンカの実父がどうしたのかも知らないし、彼女が何が好きで、何が嫌いなのかも知らない…。
父と新しい母が、新婚旅行だ、と言って飛び出して言ってしまった家は、なんとなく、今までよりも広く感じた。それは何でなのか、理由は明確ではあるが…。
リントはため息をついた。
「…どうしたの、リント君。…お腹すいた? 甘いもの、持ってこようか」
レンカがリントの表情を伺うように下から上目遣いにリントの顔を覗き込んだ。
「――レンカ、どうしたの、それ」
隣の席から、レンが心配して声をかけてきた。レンカは少し控えめに微笑んで見せて、
「うーん」
と言った。
「昨日、リント君につねられちゃった」
両のほほが真っ赤になっている。
「つねられたって…。一晩たっても真っ赤って、どんだけやられたらそうなんだよ…」
ニコニコと本人は笑ってはいるが、恐らく、ものすごく痛いはずである。そんなになるまで頬を引っ張って、リントはいったい何をしようとしたのだろうか…。けんかを下にしてはレンカの笑顔は不釣合いだし、かといって他にそれらしい理由も思いつかないし…。
「…レンカ、それ、なにやったらされたんだ?」
すると、レンカは再び、うーん、とうなって何かを考えるようにすると、
「リント君が考え事してるのを、邪魔しちゃったのかな」
成るほど、レンカのことを考えているときに声をかけられて、思わず手が出たということか。つくづくわかりやすいな、あいつ。
レンは家の鍵を開け、ドアを開いた。
「たっだいまー!」
後ろからリンが家に飛び込んできて、靴を乱暴に脱ぎ捨てると、テレビの近くに積み重ねられたぬいぐるみとクッションの山にダイブした。
「ちょー疲れたー!」
ぬいぐるみたちの波から顔をあげて、リンはレンを見たが、レンは特に気に留める様子はなく、廊下を素通りしていく。
「リン、早く着替えろよ。制服しわになるから」
「はぁい」
つまらなそうに返事して、リンは起き上がった。
廊下の奥の部屋に入って、レンはさっさと着替えを始める。リンがなにをして欲しかったのかは、見当がついている。一緒にダイブするか、優しくいたわってもらいたいのだ。昔、小さいころに俺がそうしたように。
いとこ同士で、家も近く、よくリンの家に遊びに来た俺は、リンの人形遊びとか、ままごととかによく付き合った。当時は男女の差なんてよくわからなかったから、それも当たり前だったのだけれど、流石にこの年であの頃と同じように振舞うのは無理だ。
リンには悪いけど、リンには俺離れしてもらわなくては。
着替えを終え、レンがリビングに顔を出すと、リンはまだ制服のまま、ぬいぐるみたちとじゃれている所だった。
「早く着替えろって言ったのに」
少しだけ苛立った声色で、レンは言った。リンは少し顔をあげて、またすぐクッションに顔をうずめた。
仕方なく、レンはリンを無視してキッチンに向かい、夕飯の準備をすることにした。
「…今日の晩御飯、なぁに」
くぐもった声が聞こえた。
「オムライスとサラダ」
卵の数と、ケチャップの残量を確認して、レンは答えた。リンの一番好きなメニューだ。これで一発、機嫌も直る――。
「…そっか」
え?
レンは顔をあげた。
何で機嫌が直らないんだ? いつもだったら、オムライスってだけで、飛び上がって、それで――…。
「レン、大丈夫? 顔色悪いよ?」
はっとして、レンは顔をあげた。ケチャップを手に持ったまま、たちつくしていた自分に気付く。
「あたし、着替えてくるね」
自分に背を向けて歩き出そうとしているリンの横顔を一瞬見て、レンは思わずリンの手をつかんでいた。
「リン、お前、具合悪いのか?」
わずかに頬が赤らんで見える。リンは首を横に振ったが、そのしぐさがいつもよりゆっくりとしていて、具合が悪いように、少なくともレンにはそう見えた。
「ちょっとこっち来い」
リンを椅子に座らせると、レンは体温計を持ってきて、
「とりあえず体温はかれ」
と体温計を突き出した。それを受け取ると、リンは体温計のスイッチを入れた。
「咳は?」
レンガ聞くと、リンは首を横に振った。
「くしゃみとかは」
首を横に振る。
そのとき、体温計がピピピ、と高い音を鳴らした。レンはリンから体温計を受け取り、表示をみた。
「38.9℃…。風邪だな。とりあえず今日はあったかいもん食って、明日熱が下がってなかったら学校休め。わかった?」
リンの前髪を軽く持ち上げるように額に手を当て、レンが諭すように言うと、リンはこくんと頷いた。安心して、レンは微笑んだ。
「食欲あるか? 食べたいものある?」
「…カツ丼」
「牛乳粥だな…」
「違うよ!」
コメント2
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作詞:dezzy(一億円P)
作曲:dezzy(一億円P)
R
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なんかいつもつまんなそうだし
なんかいつもヤバそうだし
なんかいつもスマホいじってるし
ホントはテンション高いのに
アタシといると超低いし...【歌詞】chocolate box
dezzy(一億円P)
何を言ったというの
言葉一つにできない心
何を考えてたの
誰も知らないあの歌のこと
誰の声
ずっと前
一ミリでもいい
背伸びしてよ
目を瞑ってきこえた歌は
ララバイ ララバイ ラララララ...[歌詞]目を瞑って
ひっせん
小説版 South North Story
プロローグ
それは、表現しがたい感覚だった。
あの時、重く、そして深海よりも凍りついた金属が首筋に触れた記憶を最後に、僕はその記憶を失った。だが、暫くの後に、天空から魂の片割れの姿を見つめている自身の姿に気が付いたのである。彼女は信頼すべき魔術師と共に...小説版 South North Story ①
レイジ
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ご意見・ご感想
アストリア@生きてるよ
ご意見・ご感想
こんちゃー!!っす!!
リント君純粋!すっげぇ純粋!!マジ純粋!!超純粋!!!(((4度目
素直になれないってどうしてこんなに萌えるんでしょうか……知りたい所です(((爆
つねられても笑っていて、リントの事を心配している……レンカ、まさか……!!?
リンちゃんオムライス好き!そしてそれを分かっているレン!ハイ萌える!!(((死
家庭的で勉強はできるが運動音痴なレンって……リオンさん、ごちそうさまでs(((
続き頑張ってください!毎日お疲れ様です……!!
リン「……じゃあ親子丼」
レン「牛乳より卵粥かな?」
リン「共通点卵だけだよ!!」
2011/12/05 17:24:33
リオン
返信遅れてすみません! こんばんは、アストリアさん!
リント君はある意味一番乙女じゃないかと思います。多分初恋。
本当に…萌えとは奥深いものですね…(タヒ
いえいえ、レンカちゃんは恐らく天然で、他人を恨むということを知らないんだと思います。
リンとレンの熟年夫婦以上に互いを知り合った間柄ってすごく可愛いですよね!
双子は、どっちかができないことがどっちかが超得意ーみたいな感じだとすごくいいです。ハイ。
続きもがんばらせていただきます!!
リン「…わかった、じゃあ卵粥でいいよ!!」
レン「何言ってんの、最初にオムライスとサラダっていったじゃん」
リン「…。」
2011/12/05 21:57:21
美里
ご意見・ご感想
こんにちわ!美里です。
リント君…。君、どれだけの力でつねったんだ??それに何とも思わないレンカちゃんも…
オカン的レン君!欲しい…
よく分からないことでも分かるレン君の愛は深い…、ノートとって置かないと。
でもリンちゃんは何故にカレーの話が出たんだろう。それに対応するレン君も…
次回も楽しみにしてます!
2011/12/05 17:19:26
リオン
返信遅れてごめんなさい!美里さん、こんばんは^^
リント君は力強いと思います。本気になると歯止めきかなそう。レンカちゃんは気にする文化がない。
リンとレンは双子でなくても何か伝わるものがあるんだと思います。テストに出ますよ。
多分、レン君が友達の家にお泊りするとか、そういうことで自分でご飯作らなきゃいけないんだと思います。
でも結局しっかりレンが晩御飯作っていってくれて、リンはチンして食べるだけ…みたいな…(笑
次もがんばりますね!!
2011/12/05 21:49:32