ガチャ…
「ただいま…」
私はボソッとつぶやくように言った。
「アラ、オカエリ、リン。」
また聞こえる、母さんの無機質な声…
母さんと父さんは、三ヶ月前にすでにアンドロイドになっていた。それ以来なんだか二人の声が遠くから聞こえてくる気がする。
「リンハ、アシタダッタカナ?」
「ソウヨ、トウサン。」
「コレデヤットアンシンデキルナ。」
「エエ。」
最近二人は、私がアンドロイドになる前に死んでしまうことを一番恐れていた。アンドロイドになってしまえば、永遠に生き続けることが出来る。だから、それまでに私が事故にあわないかとても心配していた。
「リン、ゴハンデキテルワヨ。」
机の上には私1人分だけのご飯。
「いらない!」
「チョット、リン!!」
私は、母さんを無視して自分の部屋へと駆け上がった。
「イタタ…」
ベットに腰掛け、今日くじいてしまった脚に湿布を貼る。
レンならこの気持ち分かってくれるかなって思ったんだけど…
「ううん。」
私は首を横に振る。レンが正しいんだ。私は横になり寝ようとする。しかし、脚がうずいて眠れない。
生身の身体は不便!
でも、私には本当に痛いのが脚なのか、胸なのか分からなかった。
翌朝、私は軽く朝食を済ませて(最期の食事なのにね…)アンドロイド化を行っている工場に向かった。
バスを降りるとそこでレンが待っていてくれた。
「…おはよう。」
「…おはよう。いよいよだね。」
「ああ。…じゃあ、行こうか。」
「うん。」
工場に入ると受付があり、アンドロイドが名簿を片手に奥の機会に入る人を案内していた。
「オナマエハ?」
「レンです。こっちはリン。」
レンが私の分も受付をする。
「レンサンにリンサンデスネ?リョウカイシマシタ。コチラニドウゾ。」
アンドロイドは私を、小さなドームの被さった椅子のようなものの中へと連れて行った。ドームの中には映像が廻っていた。
彼は、私の向かいに同じように座らされていた。
「カオノタイプをセンタクシテクダサイ。」
顔のタイプかぁ…私はちらとレンを見る。もしレンもどこか遠くに行ってしまったら…
「あの…」
「ハイ?」
「私と彼の顔のタイプ同じにしてください。」
「レンサントオナジタイプデスネ?カシコマリマシタ。」
私の目の前にタイプCという文字が浮かんだ。
「デハツギニ、アンドロイドノカラダ二ヒキツグキオクヲセンタクシテクダサイ。」
アンドロイドの声が響いた後、ドームの中に渦巻いている映像が私の見覚えのあるものに変わった。
「コノナカカラ、ヒキツギタイキオク二タッチシテクダサイ。」
引き継ぎたい記憶かぁ…
レンを見ると、彼は既に記憶を選び終わっていて手を膝に置いていた。私は今までの人生を想い帰した。その中の楽しい記憶だけを選んでいく。遠くに感じる両親の姿や昨日の彼との喧嘩は、選ばなかった。私は、ここで生まれ変わる。
「ソレデハ、ミナサンノアンドロイドカヲカイシイタシマス。サイゴニナニカイイノコスコトハ?」
「特にありません。」
彼が、そう答え、ドームが廻り機械が動き始める。
「リンサンハ?」
「1つだけ…
手術が終わっても私たち愛し合えるよね・・・?」
私の言葉が聞こえたのか、彼の目が動く機械の中で見開かれたのが見えた。
「あぁ、永遠の愛を誓うy・・・」
そして私の機械も動き出して、まもなく私は意識を失った。
終末史episode1―理想郷②―
自己解釈の終末史。囚人Pさんの理想郷(http://piapro.jp/t/3Won)を小説にさせて頂きました。レン視点。
続きはこちらhttp://piapro.jp/t/QRs8
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