~二番目~
「ふぁ~。よく寝た。」
マフラーをつけた青い髪の男が言います。
「つい寝てしまったな。さて、続きを…!こ、ここは!」
男はあたりを見わたす。
そこは男が見たことのないぐらい豪華な部屋だったからなのだ。
「ど、どうして…僕は書斎にいたはずなのに…?」
「あっ!やっと起きてくれたんだ!アリスさん。」
ドアのところには小さな少女が立っていた。
「え、ア、アリス?人違いじゃないかな?僕はカイトって言うんだ。君は?」
「私はユキ。アリ…じゃなくてえーと、カイトさんは、この国の伝説のアリスなんだよ!」
「…。やっぱり人違いだよ。僕はアリスじゃないからね。…アイスなら大好きだけど…。それに、作りかけの曲もあるし。あと、この国ってどこの国だい?」
「ここは、不思議の国。アリスがいないとこの国は消えちゃうからアリスになって。」
「不思議の国…、アリス…!ユキちゃんは、僕をからかって言いるのかい?僕は男だしもしここが本当に不思議の国ならアリスは男の僕じゃなくて女の子じゃないといけないんじゃないかな?」
「アリスに…なってくれないの?」
ユキは目に涙をのせて言う。
今にも「アリスにならない」なんて言うと泣き出しそうだ。
それも、強烈大きな声で。
「あ…うぅ。わ、わかったよ。アリスになってあげるよ。」
このとき、こう思った。
(どうせ、この子の遊びかなんかだろう。なら、この子が気が済むまで遊んであげるのも悪くないかな?作曲は今日は休みにしよう…。それにしても、この子、可愛いなぁ。)
思っていたことが顔に出てきていたらしくユキは後ずさりをする。
「あ、でも、僕は何をしたらいいんだい?」
「カイトさんの好きにしていいよ。例えば作曲とか。」
カイトは目を、丸くした。
「この国ではカイトさんは有名作曲家であり人気歌手なんだよ!」
カイトは額に汗を流す。
「や、やったぁ~。そ、それはうれしいな。」
「うれしくないの?カイトさんの国ではカイトさんの曲なんて誰も聞いてくれないのに?」
「なっ!」
「でもこの国なら、カイトさんの曲を、声を誰もが聞いてくれるんだよ!ほら、外からカイトさんの事を呼ぶ声が聞こえるでしょう?」
少し前から外で何かを言っているのに気づいていないなんていうとうそになってしまうが、
まさかカイト自身も自分を呼んでいるとは思はなかったようだ。
「ほら、外に出てあげて。」
ユキはカイトを外に連れ出す。
外に出たカイトは驚いた。
「カイトー!」
「カイトだ!」
「カイトさん!歌って!」
「カイト、カイト、カイト、カイト、カイト、カイト、カイト、カイト、カイト、カイト…」
カイトの目の前に千人を超える人だかりができていたのだ。
「一曲、歌ってあげて。」
「う、うん。これって夢?それとも…現実?」
カイトはユキに聞くがユキには聞こえてないようだ。
カイトは歌いだした。
自分の中で最高傑作の歌を…。
カイトが歌いだすと、千人を超える人だかりも静かになった。
カイトが一曲歌い終わると人だかりは
「アンコール、アンコール、アンコール、アンコール、アンコール、アンコール……」
カイトは驚いていた。それと同時に喜んでいた。
(人々が、僕の曲を聞いてくれる。なら、もっと歌おう。もっと曲を作ろう!)
「ちゃんと、遊びじゃなくてアリスになってくれる?」
「あぁ、なってやるよ!この世界のアリスになぁ!」
ユキはにこりと笑うと
「ありがと!また来るね、カイトさん。」
と人ごみの中に消えていってしまった。
その後、カイトは歌い続けた。
人々はその声を聞き続けた。
カイトの声はこの国を包み込み、この世界を包み込んだ。
どこへ行っても、カイトの名を知らぬ者はいなくなった。
そんなある日、カイトはコンサートを開いていた。
バラの咲いている公園で…。
「さぁ、僕のために歌ってくれる子はいないかい?自分で作った曲でもいいよ!」
カイトは人々に聞いた。
その中で、誰一人と歌ってくれる人はいなかった。
理由は簡単。
人々はこう思っていたのだ
(カイトの歌にかなうわけがない。)
(自分の下手な歌をカイトに聞かせたくない。)
(自分なんかが歌ったら罰が当たるかもしれない。)
人々がこう思う中、一人の少女が手を上げた。
「あ、君、ステージに上がってきてくれるかい?」
少女はステージに上がってくる。その少女はカイトが見たことのある子だった。
「歌ってもいいの?」
「うん、どうぞ。」
「じゃぁ、歌うね。―二番目アリス―。」
少女は歌いだした。カイトの声で…。
「二番目アリスはおとなしく、歌を歌って不思議の国。いろんな音を溢れさせて、狂った世界を生み出した。そんなアリスは薔薇の花。いかれた男に撃ち殺されて。真っ赤な花を一輪咲かせ、皆に愛でられ枯れてゆく。」
「…。」
会場は静かになっていた。
人々はカイトの返事を待っている。
「…その歌詞、とってもいいね。」
「そ、う?」
少女は不思議そうに聞く。
カイトは誰の声で歌っているのかがわからなかったようだ。
「でも、それは誰のことを歌っているのかな?」
「ふふふ、誰だと思う?」
「さぁ、僕にはわからないさ。だけど、ひとつ、変えたいところがあったね。真っ赤な薔薇よりも真っ赤な血のほうがいいような気がするよ。あぁ、その歌と一緒に血も見れたらいいかな?…、そうだ!僕の血と一緒に歌ってよ!」
こう言うカイトの目は、周りの景色などまったく見えてないような、そんな目です。
カイトはどこからか銃を取り出し、自分の頭にあて引き金を引いた。
銃声とともに倒れるカイト。血しぶきが、近くにあった白薔薇を赤く染めてゆく。
正気に戻ったカイトは思う。
(そういえばあの子の歌声は声は僕の声だった…)
倒れながら、重いまぶたを必死に開けて少女を見る。
「最後にいいことを教えてあげる。カイトさんは誰の事を歌っているのかって聞いたよね?誰かというと、カイトさん、あなたですよ。」
少女は背を向けると
「バイバイ、二番目アリス。」
少女は人ごみの中へ歩いてゆく。
(そうだ!あの子は僕をここへ連れてきた…。そういえば、どうしてこの人々は、僕が死に掛けているのに誰一人と、顔色を変えてないんだ?)
突然、この人々は歌いだした。しかも、その曲は――二番目アリス――。
その後も、たくさんの歌を歌う。しかし、その後の曲はすべてカイトの作た曲ばかり。
(この国…いや、この世界と、あの子は……何者………なんだ?)
「先生~。」
小さな夢が走ってきます。
「どうしたのかな?」
「やってみたけど…あの人、死んじゃった。」
「いいんですよ。あの人は十分自分の中に迷い込ませれましたから。」
「そうなのかな?」
大きな夢はうなずくと、
「じゃぁ、次のアリスを探しにいってくるね!」
と、小さな夢は走ってゆく。
小さな夢の姿が見えなくなると
「…かわいいものですね。まさかこの僕が先生なんて呼ばれるとは…。なんというか、今までの夢とはまったく違う…。」
大きな夢が微笑んでいると、
「キヨテル。」
「っリ、リリィさん!」
「どう?今度の夢はとってもおいしく育ちそう?」
「えっ…あ…はい……。」
大きな夢は顔を曇らせた。
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ご意見・ご感想
d4043
ご意見・ご感想
大晦日にお疲れ様です。
歌の方もそうですが、小説にしてもやはり相当にハードな内容になってしまいますね。
それにしても人柱アリスは根強い人気がありますね。
2010/12/31 21:02:19
あき
読んでくれてありがとうございます!!
いろいろと字間違いを発見したんで一応直したんですが本当にすみません。
また、人柱3の続きを書いているんで楽しみにしていてください。
2011/01/08 11:19:15