*亜種・崩壊注意*

 いつもより数時間遅く起きると、珍しく早起きのマスターがボイスレコーダー片手にはしゃいでいた。子供っぽくはしゃいでるのが不思議だ。
「なんかいいことあったのか?」
「うん、ボイスレコーダー。枕元に会ったんだ。これで歌い手デビューできるよ。」
「やめとけ、音痴だし。」
「う…でもしたいと思ったことを我慢できないのは性分だ、諦めてくれ。」
 ま、そういう奴だよな。マスターは。その性分のおかげで俺も此処に居られる。

「お前はもうアイスくってんのか。」
 一昨日出来た弟は幸せそうにほっぺをおさえて口を動かす。
「えっとね、これさ、たっきゅうびんのね、さんたくろおすさんからね、もらたんだ。」
「へぇ。まあ宅は委任の名前はどうでもいいけど良かったな。」
 というか誰かこいつの知り合い居たか?プレゼント贈ってくれるような。マスターは好きな人にプレゼントを贈るのがクリスマスだって言ってたけど。

 それにしても昨日より微妙に違う声。アイスさんざん食ってちっとは成長したんだろうか。こいつはそういうKAITOらしい。
 マスターはこの微妙な違いは気付かないんだろうな…鈍いし。

「ね、ね、これね、みょーんってさ、のびるんだよ!みょーん!」
 そう言ってスプーンを持ち上げるとアイスが伸びた。
「トルコアイス?」
 マスターが夏あたり好んで食べていた。カイトマスターに餅だと言われて食っちまったこともあるから正直苦手だ。
「おにいちゃんも、たべる?」
「冗談。俺はアイス嫌いなんだよ。」

 そもそも甘いものが苦手だ。マスターの菓子はビターとかが多いから其処までじゃないけど。
「おにーちゃん、キムチさ、たべれるよね。おとなー」
 でた、●●出来たら大人。こういうのは何処から覚えてくるんだろうな?テレビか?

「ああ、自分も食べられない。親は好きだけどね。」
「マスターはさ、ちっちゃいからさ、しかたない。」
「ちっさ・・・生まれて三日目のお前が言うか。」
 まあ、誕生日も遅いし見た目の年も一番下だよな。そいつからみれば。

「バイトは?」
「休み。先週の休日出勤分振り替え。今年のバイトも後は朝だけだな。」
 本来俺はモノを食わないでも平気な歌う玩具にしか過ぎないが、マスターがそう扱うのを嫌がるので人間みたいに生活してる。
 というわけで食費と自分の小遣いくらいは稼いでいる。

「あ。そうだ。今部活で罰ゲームに編み物をさせられたんだけどいるか?全く、貰う気も無いならやらせるなよ・・・」
 前から思っていたがお前が入っているのは一体何の部活だ。手芸部じゃないだろ?マスター・・・
 賭け事が好きなのにマスターはいつも負けてくるのでクッキーを焼かされたりしている事もあった。要求されるものを見るとカイトマスターの差し金のような気がしてならない。
「これ、クリスマスプレゼント?」
「は、昨日の飯のつもりだったんだが…まあそれでもいいか。」

 毛糸の手編みのマフラーは暖かい。
 帯人と新米、カイトとカイトマスターの分まである。
「多くないか?」
「4連敗した。」
 マスターはゲームに弱いくせに負けで終わるのを嫌がって勝つまで挑戦し続ける節がある。将来パチンコを絶対やっちゃいけないタイプだ。

「で、モノはついでだからチビの分も作った。」
「マフラーよか名前作ってやれよ。」
「名づけが苦手なのは身を持って体験してると思うが?」
 確かに。俺のに5日、帯人に1週間は悩んでた。
 自分を迎えてくれた日までKAITOどころかVOCALOIDすら知らなかったのだ、この人は。
 結局いろいろ調べた結果一番良く似た亜種というもののKAITOの種族名か何かを名前に貰った。

「そういや帯っちゃんは?」
「寒いからココア入れてくれてる。…熱湯こぼしたり、カップ割って怪我しなきゃいいけど。」
 固目が不自由なので距離感をつかめないらしいので包丁と熱湯は使用禁止例が出ていた。
 そのためいつもはカイトと一緒に協力して料理をしていた。

「珍しいな、熱湯許可出すのは。」
「いや、はめられた。無理して裏声使ってカイトの声使ったんだよ。」
 布団の中で丸まって寝てるから声だけならわからない。完全に確信犯だ。
「で、何でマスターはもう起きてんだ?」
 いつもならもう1時間は寝ていると思うが。
「夢見の悪いチビにはたき起こされまして。」
「ん?」

 本人はアイスを格闘して幸せそうだがマスターは目が眠そうだ。
「二度寝したらどうだ?」
「其処のバカイトが許してくれないから。」
「おきてさ、うたってね、くれないとね、や。」
 人に歌わせるばっかだよな、こいつは。

「お風呂とか声が響くとこじゃ歌うけどね。」
 それならば。
「マイクをエコーにすれば勝手に歌っててくれるんじゃないか?そいつにも一様付いてるんだし。」
「いや、どうやるし。」
 一様KAITOだし、俺のと同じでいい・・・のか?

 見せてもらっても小さすぎて構造がさっぱりだ。
 自分のを見せるとおんなじだと騒いでいたのでソレをお手本にエコーのやり方を教えた。
「あいうえお!お!お!お!お、お、お、お…」
 成功だ。早速喜んでいろいろ歌いだす。
 …意味はわかってないのだろうけどマスターはKAITOの曲全般が好きなのでノーマルからアブノーマル、ヤンデレまで飽きることなく歌っている。

「歌詞の意味聞かれても答えないほうがよさそうだな。』
「ぜひそうしてくれ。夜中のテンションで寝起きも手伝って変な曲まで歌ったらしい。」
 ただ意味も解らず音の流れを楽しんで遊んでいるだけなので深い意味は無いのだろうが…歌がそこそこうまいので偶に意味が解ってるんじゃないかとひやひやする。

「ココア、入れてきました。」
 多分牛乳をレンジで温めずになべで暖めて粉を入れる料理本のとおりの作り方をしたのだろう。開いたドアの向うでなべに残ったココアを貰うカイトマスターが見えた。

「ぼくものむ!」
「はいはい。」
 トレーのうえにカップは3つ。2つはコーヒーだ。俺の分もあるらしい。
「はい。」
「ありがと。」
「さんきゅ。」

 マスターがスプーンで覚ましたココアを新人の口に入れてやる。
 自分で飲ませてこぼしたら大惨事だもんな。マスターが猫舌だからそんなに温度は高くないだろうけど。
「ますたー、おいしいね。」
「うん。そうだね。」
 仏頂面の帯人の顔が何処と無く嬉しそうに見えた。

「ますたー、おなかすいた!あいすー!」
「はいはい。」
「あのね、きのうのさ、けーきのがいい!」
「あー・・・ガトーショコラもうない。」
 膨れてすねるが無いもんは仕方ない。
 昨日結構食ってたろお前も・・・

「二月にはまた作らされるから。カイトマスターに。ソレまで待ってろ。」
 そういえば俺たちが来たときも作っていた。2月14日。お世話になった人や好きな人へチョコレートを送るひだという。

「いま、にがつだよ?」
「残念、十二月だ。作らされるのは二が付く月に1回だけな。」
「つぎのにがつてさ、あした?」
「残念。2ヵ月後・・・・60日以内だな。」
 1ヶ月が解らないので言い直すものの、計算が面倒だったらしい。こういう計算は帯人のほうが速い
「えっと今日が26で6+西向く士で31+14で、51日。」

「ごじゅういっかいねたらさ、けーき?」
「お昼寝と二度寝は入れないで、ね。」
「ごじゅういちってさ、なに?あしたのあした?」
 どうやらまだまだ教えたほうがいいこともたくさんあるようだ。

 帯人がポツリポツリと説明するのを真剣に聞く後姿を見て1つ気付く。
(葉っぱ、成長してねぇ・・・?)
 1枚だった葉はいつの間にか双葉になっていた。

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「亜種注意」手のひらサイズの彼 その⑦「KAITOの種」

http://piapro.jp/content/?id=aa6z5yee9omge6m2&piapro=f87dbd4232bb0160e0ecdc6345bbf786&guid=onにて。
ジェンダーが1つ増えると葉が1枚生えてくるようです。
話方がだんだん区切らなくなってきてるからもう1枚増える日も近い・・・?
帯人・ちび目線はやったのであー君目線にしてみました。

12月26日
おお!?種タグ付いてる!?
自分でつけるのはずかしくてやんなかったんだけどなんか嬉しいなwww

閲覧数:155

投稿日:2009/12/26 13:32:46

文字数:3,209文字

カテゴリ:小説

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