『暖かく優しい春を呼ぶ花の女王
激しく情熱的な夏を呼ぶ炎の女王
冬に恋する冷めた風秋を呼ぶ風の王
そしてすべてを凍えさせる冬を呼ぶ氷の女王
大いなる力を持つ四人の精霊がいました
そう、配下の精霊を束ねる精霊の長と呼ばれる存在です
彼らのチカラを織り込んだ歌
それが異なる季節を呼びすべての生き物たちに恵みをもたらす四季を生み出すのです』
僕らの世界には彼らにまつわる伝承やおとぎ話が多数残っている。
けれど君と初めて出逢ったあの雪の日。
その後も氷の女王…精霊の長が実在するなんて思ってもいやしなかったのだけど…。
──これは僕が愛しい君と出逢ってからのとても大切な思い出の話
【小説】氷の女王【第一幕】1
雪の女王が住むと言われている年中雪が消えることのない山。
その裾野に広がる小さな街。
そこが今の僕の居場所だ。
冬が長く春が短い。
ここ数年は特にそうらしい。
氷の女王のお膝元だからだとか世界的な影響だとかいろいろ囁かれているけど僕はよく知らないし興味もない。
この街に来たのは異変が始まった頃の四年前だしそれより大事なことも知りたいこともたくさんあるんだから。
例えば…
「レン」
「姉さん!」
ふわりと僕の頭を撫でた桃色の髪のこのヒト。
彼女はこの街に一つしかない私塾の先生だ。
そして親戚を頼って各地を転々としていた僕がこの街でも放り出された時引き取ってくれた優しくて憧れで大好きな『義姉さん』だ。
こうして温かい手に触れられていると安心してつい顔がゆるんでしまう。
初めて手を差し伸べてくれたこの人の役に立ちたい。
だから今は他の事なんて…。
「あー!レンってばまた先生相手にデレデレしてる!」
「…っ!なっ…リン!デレデレなんて!」
後ろからひょっこり現れた同世代で一番仲のいい少女に反射的に言い返すと姉さんにまで笑われた。
「う…姉さんまで」
「ふふ、ごめんなさい。けれどその様子ならもう平気そうね」
「え?」
「え、じゃないよ!みんな心配したんだからね!冬の山に入って遭難しかけるなんてレンってば本当バカ!」
きつい言葉とは裏腹に泣きそうな顔をするリンに何も言えなくなる。
「…ごめん」
「…もういいよ。でもどうして山になんて?」
「いや、ちょっと…」
『レン?』
視線を彷徨わせ言葉を濁した僕を二人して名前を呼び覗き込む。
近距離からの視線にたじろぐなって方が無理だ。
早々に諦めて言葉を紡ぐ。
「姉さんの前の授業で冬にしか見つからない珍しい薬草の話聞いたから…実物見てみたくてさ」
呆れたようなため息と苦笑。
どっちがどっちのものかなんてすぐに分かる。
「バカだとは思ってたけど本当あんたって…」
「平気だったんだしいいだろ!あの子のおかげだけどさ…」
「あの子?」
「え?…ああ話してなかったっけ。薬草を探してる途中冷たくてけどすごく綺麗な歌声を聞いたんだ。その声に誘われて歩いているうちに道に迷って…次に気づいたときには麓の小屋で女の子に介抱されてたんだ」
「気づいたらって…その子誰なの?」
「知らないよ。見たことない子だったから」
「知らない?」
「それっておかしいよ。うちの街みんな顔見知りみたいな小さい街なんだよ?それなのに知らない子って」
そういえばそうだ。
ここに来て四年しか経っていない僕でさえ知らない人なんていない。
あんなきれいで印象的な女の子忘れられる筈もない。
どうして疑問に思わなかった?
「レン」
「あ…」
思考を遮るようないつもとは少し違う有無を言わせない声音に顔を上げると優しく笑んだ姉さんと目が合った。
「姉…さん?」
戸惑ったのがバレたのかまた頭を撫でられた。
「今日はもう帰りましょうか。まだ本調子じゃないんでしょう?温かいスープを作ってあげるわ」
「…うん」
歩き出した僕たちを追いかけるように響いたリンの声。
「歌が聞こえたって…ねぇ、レンを助けてくれたその人って氷の女王だったりして」
その言葉と少し違った姉さんの声…。
それが何故かいつまでも僕の心の隅に引っかかっていた。
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