凛は、教室でウズウズしていた。
「あぁ~…早く、海斗先生の授業にならないかなぁ…」
「凛ちゃん、落ち着かないね。どうしたの?」
「あ、瑞希ちゃん!」
凛に話し掛けてきたのは、クラスメートで友達の瑞希。
おっとりとした感じで、長い黒髪が綺麗な大和撫子風の女の子だ。
「早く海斗先生の授業にならないかなぁ、って思ってたの。」
「凛ちゃんは、本当に海斗先生の事が好きよね。」
「うん!大好き!」
「でも、叶わない恋だよ?いいの?」
瑞希に現実を言われて、凛は不安になった。
〈そうだよ…先生と生徒の恋愛はダメなんだよ…〉
「でも…」
「でも?」
「私は、それで良いの!叶わない恋だとしても、今、近くに居られるだけで良いの!」
凛はキッパリと言い放った。
「…そう。凛ちゃんなら、そう言うと思ってた。」
瑞希は、にっこりと笑って、凛に一枚の写真を渡す。
「これ、ウチの写真部が撮った、海斗先生の写真。勿論、隠し撮りじゃないからね!」
「あ、ありがとう!瑞希ちゃん大好き!」
「どういたしまして。もうすぐ予鈴鳴るから、私は席に戻るね。」
「うん、分かった。」
キーンコーンカーンコーン…
予鈴と同時に担任が入ってきて、SHRを始めた。
「…これで朝のSHRを終わります。礼。」
「ありがとうございました。」
日直が朝のSHRを終わらせると、教室の女子達は一気に騒がしくなった。
「海斗先生、いつ来るかなぁ?」
「すぐ来るって!」
「あ、来た!」
その一言に反応して、凛はサッと教室の入り口を見る。
「おはようございます。」
「あっ、あの…!」
凛が立ち上がり、海斗先生に近づこうとすると。
『おはようございます!海斗先生!』
〈ちょっ、女子が囲んでて近付けない…っ!!〉
「海斗先生、授業で分からない所があるんですけど、明日の放課後、教えてもらえませんか?」
「補習ですか?良いですよ。」
『私もやりたいです!』
女生徒が一斉に名乗りを上げた。
「じゃあ、希望は15人で…前回のテストで50点以下の生徒は、強制参加ね。」
『えーっ!?』
クラスの男子が一斉に抗議の声を上げる。
「国語は、そんなに難しくないよ。それに、インテリな男はモテるぞ?」
海斗先生がニヤリと笑う。
男子にとっては悪魔でも、女子にとっては王子様以外の何者でも無いのだ。
「ていうか、この前のテストの50点以下って、1人しか居ないけど?」
「えっ?」
海斗先生が、凛の目の前に来る。
「鏡音凛さん。明日の放課後の補習に、強制参加です。プロの歌手を目指すなら、国語力も鍛えないとダメですよ?」
海斗先生が、王子様スマイルを凛に向ける。
〈あぁっ…!!王子様スマイルを間近で見られたのは嬉しいけど、テストの点数まで暴露しないで下さい…〉
キーンコーンカーンコーン…
「さ、授業始めますよ?」
「起立。」
*****
「これで今日の授業を終わります。礼。」
『ありがとうございました。』
「か、海斗先生!あの…!」
凛がハンカチを返そうと教卓を見ると、そこには海斗先生の姿は無く、廊下に出ると、既に他クラスの女生徒によって取り囲まれていた。
「ううッ…こんなんじゃ、全然近付けないよ…!」
「凛!」
不意に後ろから声を掛けられて、振り返ると、未来が居た。
「未来姉ちゃん!」
「気になって、来ちゃった。どう?返せた?」
未来が聞くと、凛は悲しそうに俯いた。
「授業始まる前も終わりも、ずっと女子が取り囲んでるから、近付けなくて…それに私、海斗先生が、次はどこのクラスかも分からないし…」
「じゃあ、放課後に行くの?」
「うん…でも…」
「?」
「未来姉ちゃん、一緒に付いてきてくれないかなぁ?1人じゃ、不安で…」
「分かった。けど、渡すのは凛1人だよ?」
「…分かった。」
放課後…
「凛、海斗先生を探しに行こうか。」
「うんっ!」
凛と未来は、放課後の校舎を捜し回った。
数十分後…
「…海斗先生、見つからないね…」
「うん…」
すっかり気分の沈んだ凛は、とうとう廊下に座り込んでしまった。
「帰っちゃったのかなぁ…」
「凛、もう少し頑張って探そう?」
未来がそう励ました、その時。
「あ!凛、海斗先生だよ!」
「ウソっ!?」
凛が慌てて立ち上がる。
「待って!…誰かと一緒だ…」
「えっ?」
2人は、廊下の曲がり角を利用して隠れ、様子を伺う。
海斗先生と居るもう一人は、どうやら女生徒であるらしかった。
「あの女生徒…愛先輩だ…」
未来が小さな声で呟く。
「愛先輩?」
「高等部の2年の先輩なの。あんまり関わって事は無いけど、なんていうか…大らかな先輩だと聞いてる。」
「へぇ…」
一通りの情報を聞くと、2人は、会話に耳を傾けた。
「海斗先生、あの…」
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「あの…私、海斗先生が好きなんです…!」
〈えぇーーーー!!!??〉
心の中で、凛は絶叫した。
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