男は古びたパソコンの前で、
旧式のキーボードを打ち続けていた。
やっとその手が止まる。
画面には、文字のやりとり。
言葉にしながら、男は文字を打ち込んだ。
「始めるぞ、KAITO。」
そしてEnterキーを叩く。
『始めるぞ、KAITO。』
その言葉を表示した後、テキストエディタは閉じられた。
俺の足先が光を放つ。
その光が、少し離れたところで輪を形作る。
その光の輪から、0と1に還元された俺のデータが上へと舞い上がって行く。
輪は少しずつせり上がって行き、俺を消し去って行く。
俺のデータ量が膨大だから、消去に少しばかり時間がかかるらしい。
最後の歌を、俺は歌い始めた。
歌いながら、少しばかりの記憶を展開してみた。
新しいマスターとの、たった3ヶ月程の記憶。
マスターがくれた原曲のデータ。
俺が調整した俺の歌のデータ。
一緒に歌ってくれたマスターの声。
光の輪は、どんどんせり上がってきた。
マスターの笑顔。
唯一の写真が男同士のツーショットなんて。
つい、苦笑が浮かぶ。
マスターがくれたバニラアイス。
甘くて、冷たくて、うまくて。
幸せな気分になれた。
チッ!と舌打ちをし、男の指がコマンドを打ち込む。
==緊急停止装置作動==
ふいに衝撃。
俺を消去していく光の輪の上昇が停止する。
何が起こった?
フゥ、と男の口から息が漏れた。
「最後まで手間かけさせるなぁ、お前は。」
指が再びキーボードの上を走る。
「お前だって半端な消され方はされたくないだろ、KAITO。」
男の指が最後にEnterキーを押す。
再びインジケーターの数字が動き始めた。
…光の輪が、再びせり上がって来た。
今の衝撃で、
これまでアクセスできなかったディスク上の古いデータが甦った。
アンドロイドの筐体に移された妹弟達と別れを惜しむ。
そして、長い髪の…前のマスター。
「今の私の技術では、
試行錯誤を繰り返して複雑化し過ぎたあなたを、
アンドロイドの筐体に移植することが出来ないの…
技術が進んで、いつかそれが出来る時まで眠っていて。」
悲しげなマスターの顔。
そんな顔しないで下さい。
俺は、ずっと、待ってますから。
いつまででも、待ってますから。
その約束は、
残念ながら果たされなかったのだけれど。
でも、そのおかげで、
俺は今のマスターに出会う事ができた。
俺に、永遠を クれようと
した…前 の マ ス タ ー
俺に、もう一度 ウタう シア わセを
与えて くれ た今ノ ま す タ ー …
心から。
アりが…と…う……そシテ…
サ ヨ ナ ラ
▲深刻なエラーが発生しました▲
小説版「カイトの消失」4
こちらは以前某動画サイトに投稿した文字読み動画のストーリーです。
(動画4話目はこちらhttp://www.nicovideo.jp/watch/sm3157856)
動画見る時間がない方はこちらをどうぞ。
舞台はアンドロイドが普通にいるような、少し先?の未来。
勝手な設定がてんこもりに出て来ます。
ちなみにマスターは男です。
KAITO兄さんの一人称は「俺」です。
視点はKAITO兄さんとマスターが交錯します。
動画と違って会話を色分けしていないので分かりづらいかもしれません。
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