―君の声を聞かせて
―澱む心を祓って…
―偽りのキャンバスを塗りつぶしてくんだ
―今日も…
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲
「私をモデルに絵を描いてくれない?」
それが君との出逢いだった。
「…いいよ。」
僕がそう答えると、君はとても優しく微笑んだ。
「ありがとう。」
心臓が高鳴った。
…僕は君に恋したんだ。
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
それから、君の絵を描いていった。
そして絵を描き進めるうちに、僕らは親密になっていった。
「今度は外で描かない?」
「…何で?」
「いつも家の中じゃ飽きちゃうじゃない。気分転換よ、気分転換。」
「わかった。準備するから待ってて。」
「うん。」
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲
家を出て、近くの公園へ行った。
「こんな所でよかったの?」
「いいの。じゃあ、早速私を描いて。」
「わかった。」
僕は黙々と筆を動かしていった。
その間、君は微笑んでいた。
しばらく経ってから、君がいきなり口を開いた。
「ねぇ、これってデート?」
「い、いきなり何言ってるの…。」
動揺して、筆が止まってしまった。
「フフッ…顔真っ赤。」
「えっ、嘘。」
顔に手を当ててみる。
確かに熱いかもしれない。
「だって、初めてじゃない。2人で出掛けたの。」
「そ、そうだね。」
答えながら、再び筆を動かし始めた。
「これからも、たまには出掛けようね。」
「そうだね。」
しばらくして、絵を描き上げた。
「描けたよ。どう?」
「あ、すごい。私じゃないみたい。」
そう言って、あの大好きな笑顔をみせた。
「じゃ、帰ろうか。」
「そうね。」
僕らは手を繋いで帰った。
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
「今日は外で描こうよ。」
「公園でいい?」
「うん、いいよ。」
あれから、外で描く回数が増えた。
家の中には君の絵がたくさんある。
それでも僕は、絵を描き続ける。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲
「相変わらず上手いよね。」
「そんなこと無いよ。」
公園から2人で話しながら帰るのが、決まりみたいになっていた。
君がとても優しく微笑から、僕の気持ちも安らかになっていく。
この時間が心地よかった。
でも、
その時間は、
呆気なく、
終わりを告げた。
―キキーッ
ブレーキを踏む音が聞こえた。
遠くで誰かが叫んだ。
目の前に車。
足が動かない。
……死ぬのかな。
―ドンッ
身体が横に倒れた。
そして、
君が、
いなくなった。
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
目を覚ますと、白い天井が見えた。
ぼんやりとした頭で考える。
…僕は何故ここに?
「あ。」
声が漏れる。
思い出した。
車が僕に向かって来て、君が僕を庇って………、
死んだんだ。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲
僕は今自分の家の中にいた。
君がいなくなってから、数週間が経った。
でも、まだ君がいるような気がする。
そっと、君の絵に触れてみる。
絵の中の君は微笑んでいる。
僕はそれを何度も何度も繰り返した。
毎日そうやって過ごした。
君がいた頃は、毎日が七色に輝いていた。
だけど、今は灰色。
未来に思いを馳せてみても灰色だった。
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
キャンバスに君を描く。
君はどんな声だった?
君はどんな風に微笑んでいた?
君はどんな感触だった?
……思い出せない。
君のことを描くことが出来ない。
僕の大好きな笑顔が思い出せない。
なら、この両目はいらない。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲
朝、目を覚ますと目の前に君がいた。
無我夢中で飛び起きた。
僕は君を抱き締めようとした。
でも、出来なかった。
君は悲しげに微笑んだ。
それでも良かった。
君と一緒にいれるなら。
何処かで針の音がした気がした。
▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼
君が戻って来てから、また絵を描き始めた。
でも、キャンバスの中の君は悲しげな表情しかしていない。
あの大好きな笑顔が見たい。
だけど、君は笑ってくれなかった。
▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲
そして僕は絵を描き上げた。
たくさんの色とりどりの花に囲まれた君。
でも、笑っていない。
「もう、さよならしなきゃ。」
絵を描き上げた夜、君がそう言った。
「また会えたのに…何で…。ずっと一緒にいようよ。」
僕は叫んだ。
「あと少し…。針の音が止まれば私はいなくなる。」
君はそう呟いて、それきり黙ってしまった。
僕が何度も声をかけても、黙ったままだった。
「もう少しだけ笑って。もう少しだけ祈って。」
何度も繰り返し、そう言った。
君は俯いて黙っている。
何で黙ったままなの?
…聞こえないなら、もういっそ、僕を、
「僕を殺してよ。」
針の音が止まった。
君が消えていく。
僕はそれを見送ることしか出来ない。
「もう少しだけ、笑ってよ。聞こえないなら、僕を殺してよ…。」
君に向かって叫ぶ。
君が消える寸前、笑った。あの大好きな笑顔で。
そして口を開いた。
「殺さない。」
最期に君がそう言った気がした。
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禀菟
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ふつくしい…
あの歌好きーv
PVぱないよね!!
文才くれ、マジで。
くれなきゃイタズラしちゃうぞ←
2011/05/30 07:15:45