「「マスター、アイスケーキ買って♪♪」」
綺麗にハモった弾んだ声に、私は「はぁ?」と首を傾げた。
「いきなり何言ってんの、KAITOズ。ワンダーランドじゃあるまいし、なんでもない日、ばんざーい♪とか無いですから」
「う。やっぱり理由がないとダメですか?」
「兄誕……いや、その前にクリスマスが来るか。クリスマスまで待ちなさい」
「遠っ! ダメだよそれじゃ間に合わな」
「ゼロっ!」
間に合わない、と言いかけた言葉を、焦った声が遮った。けどねイチ、遅いよ。
「へ? 何に??」
「あぁあぁあ、いや何でもっ!」
「そ、そうそう、何でもっ!!」
疑問符を飛ばしまくる私に、青いの二人が揃ってぶんぶん手を振ってみせる。うーん、見事な挙動不審っぷり。スナオだなキミタチ。
「わかりやすい反応をありがとう。何かあるんだね?」
「なっ、無いです! 無いったら無いですー!!」
いやそんな必死にならんでも……おぉ、涙目。しまった萌える。
「ほんとに、何でもないから! っていうか、ほら……えーと……そうだほら、マスターこないだ誕生日だったのにケーキ無かったじゃない! だからねっ」
うん明らかに今考えたよねそれ。ついでにゼロ、
「そのりくつはおかしい。誕生日ケーキなのに自分で買うとか、淋しい人になっちゃうでしょーよ」
「うっ?! それは……そうかも……」
「あ、そうだじゃあ、お手伝いとかしますからお駄賃ください!」
「小学生か!?」
駄目だわこの子本気で言ったよ今。超名案!みたいな顔してたよ。あーくそ可愛いな、もう!
と、いうわけで。萌えゴコロに負けました。
「じゃあそうだな、定番のマッサージとか頼もうか」
子供の頃を思い出して言ってみる。父の日・母の日とかに作ったなー、かたたたき券。懐かしいわ。
「ま……マッサージ、ですか?」
「うん。最近冷房に晒される所為か、身体ダルいんだよねー。脚もむくむし」
「脚……」
「うん?」
あれ。何かそこはかとなく不穏な空気? てか兄さんズ、何ゆえそんなにガン見してくるのかしら。何故に鼻から血を垂れ流しているのかしら……?
「わかりましたマスター、早速俺がっ」
「何抜け駆けてんのっ?! 僕がやるから!」
「お手伝い~って提案したの俺でしょ!? 俺がやるのっ」
「ダメだよ! 自分だけイイ目みようとかズルイ!!」
「えーっと兄さんズ、イイ目って何。ヘンなトコ触ったらセクハラと見做して罰金という名のアイス抜きの刑だからね、言っとくけど」
「「えっ!」」
ジト目で言ってやると、喧嘩も忘れて声をハモらせる二人。仲良しさんで結構。……なのだけど。
「アイス……我慢したら……?」
「聞こえてるわよゼロ、エロイト禁止」
「俺はマスターにならしてほs」
「危険な発言は自重しなさい、イチ」
いかんこのままでは規制に引っかかるわ。マッサージは取り下げましょう。
「「えぇ~」」
物欲しそうにするんじゃありません。うるうるした瞳で見ても駄目。……す、捨てられた仔犬のよーなカオしても…………
ま、負けそうかも。
そんなこんなで数日後。うきうきと出掛けていったKAITOズは、うっきうきでアイスケーキを買ってきた。
「マスターマスター、はい、座って♪」
「うふふ、いいですか? ケーキ出しますよ~♪」
なんだなんだ、浮かれっぷりが半端ないな。――と、思ってはいた。ら。
「「じゃーんっ♪ マスター、1周年ありがとうー!!」」
「え?」
はいっ♪と差し出されたアイスケーキに乗ったプレートには、KAITOズが歌うように告げたのと同じ言葉が綴られていた。
「マスターが"俺達"で作ったものをネットに上げるようになって、今日が丁度1年目です」
「"僕ら"で色々作ってくれて、1年ずっと続けてくれて、ありがとう」
「「これからも、ずーっと、よろしくね?」」
手放しの笑みを輝かせるイチと、はにかむように微笑んだゼロが、ひとつの音のように唱和して。吃驚しすぎて嬉しすぎて時が止まってしまった私を挟んで、両側から抱き着いた。おまけにちゅっと軽い音を立てて、左右の頬にキスまで付いて。
うん、もうだめ。
一気に上がった自分の熱にのぼせて、私の身体はぐらりと傾いだ。
「「わぁっ、マスター!?」」
ステレオで驚きの声を上げ、慌てて支えてくれる二人を見上げて、遠のく意識の中で私は何とか口を開く。
「ありがと。ふたりとも、だいすき」
――余談だけれど。
言い終えるなりきゅうっとダウンした私を挟み、我が家の青いのは熾烈なバトルを繰り広げた……らしい。
「大変だっ、マスター運ばないと! ゼロ、ドア開けて」
「またイチはそーやって自分だけオイシイ思いを……! やだよ僕が運ぶからイチが開けなよっ」
「ちっ気付かれた……ゼロの細腕じゃ無理だよ、マスター落としちゃったらどうするの?」
「落とさないよってか同じでしょ腕とか! 絶対譲らないからねっ」
「こっちの台詞! 夢のお姫様抱っこ、するのは俺っ!」
「僕だってば!!」
ぎゃいぎゃいと言い争う声が飛び交い、ほどなくして私は意識を取り戻す。
「……う……? 何やってんの、二人して……」
「「あぁっ!?」」
「マスター、起きたらダメですよぅっ」
「そうだよマスター、まだ倒れててっ」
「え、酷。うあ、アイスケーキ出しっぱじゃないっ! 溶けるよ!」
「「あぁっ!!」」
その後も、私は二人に挟まれて。
「マスター、はい、あーんしてください?」
「こっちもだよ、マスター。でねっ、僕にも食べさせて? あーん」
「あっゼロ卑怯っ! マスター、俺も俺もっ! あーん」
えーと……何かしらこれパラダイス? 私死ぬの? とか、思ったり思わなかったりしつつ。それはそれとして普通に食べないとアイス溶けるな……とかも思ったり思わなかったりしつつ。アイスケーキより遥かに甘い幸福を噛み締める私なのでした。うふふふふ、ちょーしあわせ☆
the 1st
マスター、そこ代われ。
本日、ピアプロ投稿開始から1年となりました。
本当は登録1周年で何か……と思ったんですが、その時にはもう過ぎてたという←
しかし登録から投稿開始まで日があった為(最初はROM専のつもりだったので)、それなら、と今日を記念日にし、それに因んだ話を書いてみました。
1周年記念という事で、最初に投下した『竜煩い』の小説化とかも考えたんですが、夏に負けて最低ラインのコンディションでは無理と断念。
サクっとSSにしよう、と決めてからも二転三転して、最終的に別口で最近ぼんやり書きたくなっていた『基本は二人で一対、でもマスターは取り合うゼロイチ』をミックスしてこうなりました。
大事な事なので繰り返す、マスター、そこk(ry
こんな好き勝手書いてる私ですが、こうして1周年を迎えられたのはブクマやコメントで『読んでくれている人がいる』と伝えてくださった方々のおかげです。
皆様、本当にありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いします!
* * * * *
7/15追記
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わぁ、このテのタグ付けてもらうの初めてだ! ありがとうございますヽ(*´∀`)ノ
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だったら、壊してしまえばいい。
『すっとキ...【VanaN'Ice】背徳の記憶~The Lost Memory~ 1【自己解釈】
ゆるりー
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ご意見・ご感想
日枝学
ご意見・ご感想
あばばばばばばば(※コメント欄でいきなり何を書いているというのか
ということで、読ませていただきました! カイトおおおおおおおおおおおマスターあああああああああああああ!!
いやあとても(精神的な)攻撃力の高いカイトですね。何という心を撃ちぬかれる作品……!
一周年、おめでとうございます! 一年間で投稿作品数がおよそ100! 早目のペースを一年間続けられたのは凄いですね。一作品を書くのが早いのか、強烈な時間をかけているのか、ともかく凄いと思います。一年間お疲れさまでした!
2011/07/16 03:16:44
藍流
ありがとうございます!
今回は読み手さん度外視で完全に自分のためだけに書いたので(オイ)共に萌えていただけて嬉しいですヽ(*´∀`)ノ
投稿数、そんなに書いたっけ?と見てきたらこれで92個目だったのですね。
コラボ宛はカウントされてないから、もう一つ二つ書いておけば100オーバーだったのかもw
最初は萌えのイキオイが大変なことになってて、1日に2個投稿とかしてたからな?ww
最近はめっきりペースダウンしてしまいましたが、焦らず気ままに投下していきたいと思います。
今後ともよろしくしていただけると幸いです(*゜ー゜*)
2011/07/16 11:16:36
時給310円
ご意見・ご感想
一周年なんですね、おめでとうございます!
自分がいつピアプロで活動開始したかなんて、僕はもう覚えてないですねー……記念日のない俺です(w
え~と、で、読ませて頂きました。
感想……そうですね、感想……い、いつも通りの藍流さん通常運行で安心しました!
じゃ、ダメですかね?w いや正直、男にコレの感想書けとか、それなんて羞恥プレイ…… orz
2011/07/15 21:13:05
藍流
お世話になってる皆様のおかげで1周年です! ありがとうございます?!!
開始日、きっちり覚えてたわけじゃないんですけどねw
確か登録6月頃じゃなかったっけ??と思って確認したら数日過ぎてて(笑)、じゃあ初投稿は?とチェックしたのですw
男の人にはキツイ話でしたでしょうか?? 恥じらいのツボがよくわからないw
これが「いつも通り」って、時給さん内の私イメージはどうなってしまってるんでしょう……。
……いや、でもそうか。いつも通りかなww
そろそろがっつりプロット組んだ話も書きたいかなぁと思いつつ、多分きっと思いつくままに書き散らしていきますが(← 今後ともよろしくお願いします!
時給さんの次回作もwktkお待ちしてますよ?!
2011/07/15 23:05:07
sunny_m
ご意見・ご感想
マスターさん、あの、マッサージしたげるのでそこ代わってください!w
とか全力で思ったsunny_mです
読んでいるこっちもパラダイスですよ。というか、そこ代わってください!
とまあ、本音が駄々漏れになってしまうほどの破壊力でした。
(あれ、本音が駄々漏れなのはいつもの事!?)
ホント、藍流さんの書くカイトさんたちは可愛くて、可愛くてたまりません!!
お手伝いするからお駄賃ください!ではきらきら目を輝かせたカイトさんたちが見えたよ!
だからそこ代わってください!!(まだ言うか)
なんにしろ、一周年記念、おめでとうございます!
そして素敵で可愛いお話をありがとうございました~☆
2011/07/15 18:48:30
藍流
伝わりましたか、この兄さんズの愛らしさが!←
「小学生か!?」なイチ、さぞドヤ顔だったのでしょうw
マスターを取り合って仲良く喧嘩したり、基本可愛い(子供っぽい)くせに時々煩悩全開だったり(w 今回のゼロイチには個人的な萌えをこれでもかと詰め込んでみました☆
何度でも言おう、マスタ(ry
おかげさまで1周年を迎えることができました。
幸福なことに、書きたい話のストックはまだまだ待機列を作っていますw
今後ともどうぞよろしく! 今回もありがとうございました?!!
2011/07/15 22:57:24