「ごめんね」

…この世界に[両思い]なんて言うのは存在するのだろうか。
少なくとも…今の私じゃ駄目だろう。
気の弱いおどおどした奴で。
それでいて傷が付きやすいワレモノで泣き虫。
こんな生物はどこの動物園や水族館や科学館でも受け入れてくれない。

( なら受け入れなければ良いじゃない )
( 所詮いつまでもくよくよしてたって何も起こらないに決まってる )

…そうか。
突然聞こえる心の声に納得してしまう自分。
別にどの声に納得したかと聞かれれば分からないけれど。
そうして心の声はますます意見を主張させる。

( まあもう終わった事。これから先に関わる事じゃないでしょ )
( 君は悪くないんだよ。悪いのは神様なの。君にこんな運命負わせて )
( 第一誰なの彼って?全く記憶に無いじゃないの。他の声だって私は知らない。初めてよこんなの )
( まあ気にしなければ良いって。こうして相談して楽になっただろ? )
( 恋してた頃の自分が可愛いとか思ってたりするの?w )
( ずっとずっと側にいてあげる。だって私は私だもの。離れる事も無いでしょう? )
( 皆ここで暮らせば良い。夢にだって…きっと出て来てあげるよ )

自問自答はこんなにも楽しく安心出来る行為?
その人格の快感が,愛しき人のいない私を埋め尽くす。
…そうだ。こうしていれば誰も他人を傷つけることは無い。だから自分が傷つく事も無くなる。
何て楽な手段を思いついたんだろう。私は。

*

( 思い切ってコクれよ! )
( またフラれたって新しい恋探せば良いじゃない )
( 私達が生まれた時もそうだったからね )
( 私は美しいの。素敵な顔してるの。絶対大丈夫 )

肩が重くなった?
でもそんなの,傷を負うより断然良い。
薬を使った副作用と同類だろう。
でもその分気持ちがいっぱい伝わるなら。

もう1度,のチャンスがあるかもしれない…

( 最近可愛くなったねって言われてた )
( しかもフラれてからだよ? )
( 惚れ直したに決まってるジャン! )
( でもまた振られちゃうかも… )
( その時はその時なの。それがサダメとして受け止めなさいよ )

日が沈みかけた頃。
10人分の気持ちがこもった声は相手に伝わるだろうか?

「好きっ…なんですっ。無理って言われたって。好きになっちゃったんですっ…」

*

黒猫鳴く頃,私はまた,泣いていた。
人々の寝息に混じって,泣いていた。

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十面相 前編

GUMIたんの十面相小説にしてみたり…
いやはや申し訳ないwww

閲覧数:254

投稿日:2011/03/21 21:11:31

文字数:1,031文字

カテゴリ:小説

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