<Dear My Friends! ルカの受難 第9話 ルカの重要性>
アペンド達がテル達と戦っている随分前、アフス城の魔導研究室でも、あるイベントが起こっていたのである。
(アフス城・魔導研究棟・魔導研究室)
テルがルカに変身したソニカを連れて、部屋を出てから30分後、アフス帝国の皇帝である『イロハ』、同国の神官『ユキ』、フォーリナー軍政国家の皇帝『アル』が、数名の両国の兵を率いて、アフス城の魔導研究室に乗り込んできたのであった。
ルカ:あ、あなた達は誰ですか!
イロハ:この国とフォーリナーの王、そしてお付きのモノだ。そなたへの用は、もうちょっと先になる。そのイスに座っていてほしい。とりあえず今は、静かにしていれば、危害は加えない
ルカ:・・・・・わかったわ。こちらもこれ以上、面倒なことに巻き込まれるわけにもいかないからね
アル:協力感謝する
ユキ:しかし、この程度の魔導セキュリティ、突破する事など、簡単簡単
アル:うむむ…盗聴器で聴いていたとおり、我が国の兵3人は、本当に消されてしまったようだ…。無念だ
ユキ:…アル皇帝、大丈夫です。ミリアムの魂だけですが、まだ消えてません。このクグツ魔導器である“ミキ”に定着させましょう
ユキはこう言うと、床に魔法陣を描いた後、一緒に来ていた兵が抱えていた“白のコートを着た、アホ毛が目立つ赤色の髪の毛の女性型の魔導器“を魔法陣の中央におろした。そして、ユキはおもむろに杖をかざすと、こう術を唱えた。
ユキ:…彷徨えるミリアムの魂よ! この魔導器に定着し、今一度現世に蘇えり、器を獲よ!!!
すると、魔法陣にあるミキの器の周りに赤色の粒子が渦を巻いて現れ、そしてミキの器に吸い込まれていった。
ミキ:・・・・・・・・うっ・・・・ぐっ・・・・
ガタッ
ミキはゆっくりと起きあがり、目を開けると周りに目線を移動させ、自分の手を眺め、そして、今起こったことをようやく理解した。
ユキ:ミリアムよ、ソナタは、クグツ“ミキ”の器に入り、今一度この世に蘇った。しかしミリアムだった痕跡は、魂だけなので、申し訳ないが、今後は“ミキ”を名乗るがよい
アル:ミリ・・・・いや、ミキよ。よく帰って来てくれた
ミキ:・・・・テルを必ず亡き者にする・・・・
アル:その器は全身武器になっている。そなたの望み、必ず叶えられるだろう
***
イロハ:とりあえずの用件は終わった。さて…
イロハ達の全員の目線が、イスで静観していたルカに向けられた。
ルカ:・・・・・今度は私ですか
ユキ:お待たせしました。次は貴方の用件です
ルカ:さっきから気になっていたけど、なんで“敬語”なんですか? 一国の主二人と右腕が敬語なんて、私は国賓なんですか?
イロハ:それに近いな。しかし、2つの世界で“存在を共にする”二人なのに、なんでこうも“対”になっているのだろうな?
ユキ:全くです。ルカ姫とあなたでは、そもそも月とすっぽん、天と地。これまでの経緯を全て盗聴してきたが、物腰からして根本的に違う
アル:あなたがクリプトン王国の姫だったら、今のこの状況は政治的にも非常に有利だったのに…
ルカ:・・・で、敬語扱いの私は、これからどうなるのかしら? また“受難”が待っているのかしら?
ユキ:あなたの希望である“元の世界に帰りたい”という希望は、いずれにしても我々では、今の段階では叶えられない。しかしテルかクリプトンの連中のどちらかから、完成版魔法陣を奪い取った後は、丁重にそなたを元の世界に返したいと思っている。少なくてもテルの要求よりはずっとマシだと思いますが?
ルカ:・・・こっちの人の話を総合すると、テルもあなた達も、完成版魔法陣を入手したら私たちの世界に兵を送って、支配するつもりなんでしょ?
イロハ:賢明な貴方にうそを言っても仕方ない。その通りだ
アル:貴方の希望があれば、国の重要幹部扱いで、我々側の存在として、元の世界に戻る事もできる
ルカ:でも、その完成版魔法陣を手に入れるために、私を人質にするわけだから、丁重なのか失礼なのか、よくわからない扱いね。いずれにしても、私の受難は続くわけだ
ユキ:ちょっと違う。我々は、“テルかクリプトンの連中から手に入れる”と言ったのです。貴方を使った“人質取引”で入手するつもりは、最初からありません。貴方を向こう側に渡すなど、もったいないですからね
イロハ:反逆していたテルなら抹殺して奪う。貴方を取り返しに来るであろう“クリプトン王国の連中”なら返り討ちにして、完成版魔法陣を奪い取る
アル:先ほどの会話から察するに、貴方のご友人も一緒に来る可能性はある。その方は安全に招き入れ、貴方と一緒に元の世界に帰そうと思っている
ユキ:いずれにしても、貴方へは国賓室で待っている事を、指示、させて頂きます。勿論丁重な対応をさせて頂きますよ
ルカは珍しく、少し“困惑”した表情になっていました。この前にいる“ファンタジーな人たち”は、悪人なのか、普通の人なのか。野望剥き出しのテルよりは、少なくても物腰が丁寧なのだが、魔法陣入手後の内容はテルと同じく悪である。この人達が丁寧に接してくれているのは、ルカに対してだけである。勿論、この人達側に付くつもりなど、最初から無い。とりあえず、“今は静観している”方がいいと判断した。
ルカ:わかりました。しかしミクへの対応は、絶対約束して下さい。彼女はこの受難には、何ら関係ないんですから
ユキ:ご友人様ですね。わかりました。約束しましょう。これまでの調べで顔は存じておりますから
そこへ別室で調べていた調査兵が駆け込んできたのでした。
調査兵:先ほどテルとコンタクトを取った異国の剣士に、我々の盗聴を発見され、魔導盗聴器を破壊されました!
イロハ:で、どこまでデータを取れたのだ?
調査兵:接触したクリプトン王国の魔導師“アペンド”は、本当に本物の完成版魔法陣を封じた杖を持ってます!
イロハ:うむ。他には?
調査兵:テルは負けてクリプトン王国側についたようです。装置を破壊されたので、その後どうするかの会議内容はわかりませんでした
ユキ:まぁどうせ、こっちに向かっているのだろう。それでミクとかいう人物はいたのか?
調査兵:はい。戦闘に加わっていました
ルカ:!
アル:どういう小細工を使ってくるかはわからんが、こっちに来る事だけは間違いないだろう
イロハ:ルカさんとの約束もある。魔導レーダーで観測を続け、ここに近づいたらライトアップして、まずは交渉の場という名目で向こうの現状を把握する事にしよう
ユキ:解り次第、ミキを向かわせましょう
イロハ:では、ルカさん、我々に同行して頂けますね?
ルカ:…はい(アペンドさん達、気を付けて!)
こうして、ルカは国賓室に案内され、アフス帝国とフォーリナー軍政国家の両陣営も、戦闘への準備やライトアップの準備などに取りかかったのでした。
***
(アフス城・魔導研究棟前)
クリプトン王国の一行と、ルカ姫に変身したソニカと、テルは、最初に魔導研究棟からピーアプローの丘まで向かうのに使っていたテルのステルス魔法を使って、帝国の裏口からこっそり侵入し、魔導研究棟の前でステルス魔法を解除しました。
テル:ここからは実体の状態で操作しないと扉が開かないので、ステルス魔法は解除しました。どうせ帝国側の連中には、魔導レーダーでわかってしまいますが、せめて視認されないように、影に隠れていて下さい
アペンド:わかった
しかし、テルの判断はまだまだ甘かった。
バッ! バッ!
テル達は、見張りの複数のスポットライトによって、見事にライトアップされてしまったのだった! そして城門が全て閉まり、一段と高くなっている城壁の通路上に、皇帝イロハ、神官ユキ、アル皇帝、そして数名の兵士達が陣取り、完全に城内に閉じこめられてしまった形になった。
イロハ:テルよ、お前の言葉通り、我々はお前らを魔導レーダーで追跡している故、ステルスは無駄だ
テル:こうなることは十中八九解っていた。何かあったときに、棟内にいるよりここの方が、色々便利だと思っただけだ
ユキ:ほぉ。だが、『逃げ込める場所』を確保しなかったことだけは、こいつを見たら後悔するのではないか?
ガガガガ ガシャーーーン!
兵器保管庫の入り口が開き、中からミキがゆっくりと歩いてきた。
ルカ姫に変身しているソニカ:(!)
テル:(ソニカ! 言葉を出すな! 悟られる!)
ミキ:(ギロッ!)
ミキは怒りの形相でテルを睨み付けた。
Dear My Friends! ルカの受難 第9話 ルカの重要性
☆オリジナル作品第15弾である、「Dear My Friends! ルカの受難」の第9話です。
☆一ヶ月超、色々身辺がゴタゴタしていて、更新が出来ず、申し訳なかったです。更新ペースは遅いですが、続きを書いていこうと思います。
☆今回は、テル達が戦闘していた頃のルカさんの身辺、そしてテル達が帰ってきた後の話です。
☆さてはて、なにやら変な展開になってまいりました…
*****
hata_hata様が、第1作目のきのこ研究所のイメージイラストを描いて下さいました!。まことに有り難う御座います!。
『「却下します!」』:http://piapro.jp/content/oqe6g94mutfez8ct
☆hata_hata様が、第2作目のきのこ商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『causality』:http://piapro.jp/content/c0ylmw2ir06mbhc5
☆nonta様も、同じく商店街のイメージイラストを描いて下さいました!。本当に有り難う御座います!。
『ようこそ!、きのこ駅前商店街へ!』:http://piapro.jp/content/dmwg3okh7vq1j8i1
☆あず×ゆず様が、第8作目の部室棟の死神案内娘“テト”を描いて下さいました!。本当に有り難うございます!。
『おいでませ!木之子大学・部室棟へ♪』:http://piapro.jp/content/rsmdr1c3rflgw7hf
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Re:sui
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オレアリア
ご意見・ご感想
enarinさん今晩は!
先日はメッセージありがとうございました!遅くなりましたが早速拝読させて頂きました。
ルカの重要性も分かってきたところで、いよいよ対立国の一塊の魔導師同士の争いでは無くなってきましたね…!
そしてアフス・フォーリナーの両皇帝に加えて、その精錬された部下達にテルへの復讐に燃えるミリアムも復活して状況は最悪、さあアペンド達はこの強大な相手に果たしてどう対抗するのか、この緊迫した流れがとてもワクワクです!
何気にですが、状況が変わってしまった為とはいえ、テルがアペンド達の仲間になったのが嬉しいですw
もっとも慎重で残忍な性格もあった所為でミリアムの怒りを買う結果になってしまいましたが、帝国陣からも一目置かれていた魔導師、テルとミリアムのバトルの行方も非常に楽しみです!
お忙しい中だと思いますが、次回の10話の更新も待ってます!
今回も勿論ブックマーク頂きます!
2011/11/28 21:33:42
enarin
オセロット様、今晩は!
> 早速拝読させて頂きました
有り難うございます! 貴方のコメントを頂いた時、心に花が咲いた(某プリ○ュア)ように嬉しくなりました!
> 一塊の魔導師同士の争いでは無くなってきましたね…!
はい。完成版魔法陣とルカさんの重要性は、国家を揺るがすシロモノだったのですね。これからアペンド達に向かってくるのは、個人ではなく”国家”なのですよ?♪
> テルへの復讐に燃えるミリアム
3名中、ミリアムだけしか魂の定着が出来ませんでしたが、フォーリナーとアフスの両国が作った全身武器のミキを使って、これからミリアムの復讐+弔い合戦が始まります。テル危うし
> この緊迫した流れがとてもワクワクです!
今回は昔のバトルスタイルを持ってきました。随分前のシリーズとかは、こういう感じで進んでいたんです?
> テルがアペンド達の仲間になったのが嬉しいですw
これはテルがアペンド達に負けた事もあるのですが、テルがアフスに戻る理由が無くなった事にも寄ります。何せ自分の研究を国家が密かに利用していたのですからね
> テルとミリアムのバトルの行方も非常に楽しみです!
テルvsミリアム(ミキ)は大将戦。もうちっと先になりますが、直接対決になります。今回はリンちゃんとオリバー君は、回復専門ということで、ミクは理由付きで戦えないので、対戦には含まれません。
> お忙しい中だと思いますが、次回の10話の更新も待ってます! 今回も勿論ブックマーク頂きます!
有り難うございます?!(嬉し泣き) 今回はゴタゴタで更新が一ヶ月超も先になってしまって申し訳なかったです。対戦バトルに入ったので、これから頑張ります! いつもコメントとブクマ、本当に感謝しております!!
このたびのご閲読、コメント、本当に有り難うございます!
2011/11/28 21:53:07