ここはどこだろう…?周りは霧のようなもので覆われていて、はっきりしない。

昇る~昇る~…

どこかから聞こえてくる歌に合わせて、この空間の壁についている半円状の円盤の上を針が滑っていく…
何かが…確実に近づいて来る…?でも、どこからだろう?

昇る~…

うん?もしかして…

チーン

下だ!!
気づいたときには私はエレヴェーターの中に立っていった。天井を突き破ったのだろうか?でも、エレヴェーターの天井には穴どころか傷さえもない…
この狭い空間の中には私とエレベーターガールの二人だけ。そのエレベーターガールは私に気づいていないのか、前を向いたまま一言、

「上へまいります。」
私はよくわからないこの状況を解明しようと精一杯頭を絞ったが、なんだか頭がだるくて考えることが出来ない。ふと、辺りを見てみるとイマイチはっきりしなかった周りが、いつの間にか明瞭になっていた。それを見た私はギョッとした。このエレヴェーターはなんと空中を上へ上へと昇っていたのだ。しかもその空間には世界各国の痛々しい紛争の様子やその結末が映し出されていた。人種差別の前に裂かれた二人、手足を失った少女…それに、私はさっきから延々と上に上っている。なぜこんなに昇っっているんだろう?
だめだ、頭がだるくて考えられない。こういうときに、人は最も簡単な方法で答えを知ろうとする。

「なぜ私は昇っているのですか?」
しかし、エレベーターガールいわく…

『あなたの生き様と大差は無いでしょう』
だめだ、よくわからない…私は顔をしかめたが、エレベーターガールはまた前を向いてしまった。

チーン

その時ベルが鳴りエレヴェーターが停止し、エレベーターガールの脇の扉と思われる場所が開いた。
そこには不思議なことに地面があり、荒れた大地が広がっていた。私がようやく止まったエレヴェータから降りようとしたときに爆音が響いて私は後ろに飛び退いた。そして目の前を銃を手に走っていく大人達、響く怒声。外国語なのか意味はわからないが、とても危ない状況のようだ…そんな中私は何人もの少年少女の姿を見た。皆銃を手に、大人さながらに戦っている。しかし、一人また一人と倒れていく。その日エレヴェーターが動くことはなく、エレベータガールも何も言わなかった。でも私は、二度とエレヴェーターから出ようとはしなかった。
夕暮れ時になり、戦闘はとりあえずひと段落したようだ。日は沈んだがエレヴェーターは一向に動く気配がない。私は何度か眠ろうとしたが、なぜか全く眠くない。仕方が無いので目を開けていると、エレヴェーターの脇にある小さめの岩の上に一人の少年がやってきた。月明かりの中で手紙を読んでいるようだ。足元では月光草がそよそよと揺れている。少年の頬を涙が伝い、手紙をたたむと空に向かって彼は話し出した。

「お母さん僕はまだ元気にしてるよ。お母さんも体を大切に、今夜の月は何故か目にしみます。
明日僕達は『そうこうげき』をかけるそうです。よく分からないけど、みんな死んでしまうらしいのです。でも、僕はみんなで夢を見たいです。みんなで手を繋いで、歌を…」
そこまで、言うと歌を歌いだした…
私は、しばらくその歌に聞き入っていた…
夜は静かに更けて行った…

翌朝…
あの少年が言っていた通りだった。昨日よりも激しい戦いがエレヴェーターの前で行われていた。おびただしい死体…放たれる銃弾…響く悲鳴…
私はその中にあの少年を見つけた。とりあえず、まだ死んでいない。私はその時どこかほっとしてしまった。しかしほっとしたのもつかの間、次の瞬間彼に向かい投げられる手榴弾…見開かれる瞳!

「危ない…」
思わずそう叫んだ私は、そのままエレヴェーターから駆け出そうとした。しかしその声はあの子には届かず、私がエレヴェーターの外に出ることもなかった。なぜなら…

「上へまいります…」
エレベータガールのその一言で扉が閉まり、エレヴェーターはここにはもう何の未練もないと言わんばかりに上へと進みだしたのだ。
私は、扉を殴りつけた。今までイマイチ覚醒していなかった頭がはっきりと目覚めた。あの子は、お母さんに二度と会えなくなってしまう…絶対にそんなことさせない!あの歌を歌っていたあの子が…

「なぜここから出られないのですか?」
僕は荒っぽい気持ちを出来るだけ押さえて、一連の紛争を見ても微動だにしない彼女に聞いた。
エレベーターガールいわく…

『人の人生など得てしてそんな物なのです』
それを聞いて、僕は殴るのをやめた?なぜだかとても虚しくなって来た。自分がとても無力に感じたのだろうか?
周りにはまた様々な映像が映っていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

終末史episode3―新世紀①―

囚人Pさんの楽曲、新世紀(http://piapro.jp/t/_XAE)(http://www.nicovideo.jp/watch/sm6723010
)の二次創作小説です。自己解釈全快注意!
原作とは違い第一章がepisode3となります。レン視点。

続きはこちらです(http://piapro.jp/t/yNv0

閲覧数:290

投稿日:2011/03/02 00:47:53

文字数:1,929文字

カテゴリ:小説

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