-行動-
いきなり、ズボンのポケットの中にはいったままの携帯電話から甲高い着信音と、バイブレーションをはじめ、レオンはポケットに手を押し込んだ。
白い壁にもたれたまま、携帯電話を片手で開いて通話ボタンを押して、携帯電話を耳元へと持っていった。青い携帯電話はに付けられたストラップはビーズの可愛らしい人形だった。見上げた下弦の月を瞳に映し、レオンは電話の相手へと問いかけた。
「もしもし?」
「レオンですか?」
「ローラ?あれ、ミリアムの携帯じゃ?」
「大変なのです。早く来てください―――」
「何があったんだ?何でミリアムが電話してこないんだ」
「兎に角、早く来てくださいっ」
その口調は酷くあせっているらしく、いつものローラの落ち着いた様子からは想像もできないほどに、怯えているような恐れているような、そんな風なのだ。
「あ、ああ」
とりあえず承諾して、携帯電話の通信をきった。電話で、何が大変なのかを言ってくれなかったが、それだけ大変ということなのだろうか。急いでも、そうそう早くつける距離じゃない。みりあむがこれだけ早くつけるほうが不思議なくらいなのだ。
しかなく携帯の待ち受けに映ったミリアムとローラの写真をみないようにして、携帯電話を閉じた。もう一度下弦の月を見上げ、レオンは壁にもたれた背中をゆっくりと離すと、すっとカイトのほうへ近寄り、軽く状況を説明した。
それを聞いたカイトも、頷いていくことを許した。すると、レオンがカイトの手をつかんでいった。
「頼みがある。…一緒に来てくれないか」
さっきまでのへらへらした顔とは違う人格であるように、レオンは真剣な表情でそう言ってきたのだ。それを見たカイトは、ゆっくりと頷いた。
「レンのことはルカちゃんに任せて、リンとリンちゃんもきて。二人でいるのは危ない」
「でも…」
「大丈夫。ルカちゃんは昔からずっと強い人だからね」
そう言って、カイトは呪文を唱え始めた。それを見ていたランの瞳には、不安げな色が浮かんでいた。
「どうしたらいいの…っ!?」
兎に角、カイトたちに知らせなければいけない。それなのに、この部屋と来たら、窓に面倒な鍵をかけてあせっている状態では、うまくはずせないようにできている!こんなときに!とルカは心の中で大声を出すと、やっとの思いで窓の鍵を開き、顔を出した。位置としてはちょうど玄関の上にあたる場所だから、ここからならカイトたちに声が届く、ハズだった。
「あ、あれ?カイトさん?」
その場にカイトの姿はなかった。
「―――っしかたない…っ」
そう呟くと、ルカはレンの体を持ち上げて部屋を飛び出た。
そろそろ、陽が昇って朝が来る。
この身を洗うように美しい光が降り注いで、人々はその光を神として崇め、その光を神聖なものとして扱う。そうして、陽の光が届かない夜は、人々が最も恐れる時間。満月であろうと陽の光を求め、人々は闇から逃れようとかなわぬ願いを掲げ、時の中で無駄な抵抗をする。どれだけ抵抗しても夜は来るし、どれだけ夜が永く感じてもいずれは日が昇り、人々がまた陽を神と崇める時間がやってくる。
それが、酷く面倒で。
「――やっぱり、嫌な感じがするわね。…皆に何かなければいいのだけど」
そう呟いてメイコはスタンドライトの明かりを消した。
光を失った部屋の中で、メイコはため息をついた。キレイな月が、部屋の中へとわずかな光を落とす。月光の中で光る栗毛は鮮やかだった。
兎に角、病院に連れて行ったほうがいいだろう。この辺りに知っている病院は一つしかないが、その病院がレンを診察した医師のいる病院ならいいのだが、そう思いながらルカは走っていた。その腕の中にはレンが、小さく納まっていた。
辿り着いた病院の受付であらかたの説明をし、近くにそれと同じような症状の患者を診察したという医師を指名しておいた。
とりあえずはこれで一安心、といったところだろうか。今は呼吸も落ち着いて眠っているが、今度はいつ血を吐くかもわからない。気を抜いて入られない、ということだろう。
しばらくして名前を呼ばれ、医師の元へと進む。
医師の診察のためにルカは席をはずしたが、部屋のドアに背中をつけて、ずっとレンを待っていた。
…期待を、していたのかもしれない。ドアを開いて、演技だって、なんていって笑ってくることを。そうして、館へ戻ると、皆が待っているのだ。皆が―――。
『オマエニ人ヲ思ウ資格ナンテナイ』
「―――っ!…夢…」
少しの間眠っていたらしい。
今でも夢に見る。酷く悪趣味で、つらい記憶をよみがえらせる、黒い夢だ。あの頃の記憶をえぐるように思い出す、この夢は彼女への戒めのようにすら思えてきて、ルカは身震いをした。
すると丁度よく医師が部屋から出てきた。
「ど、どうなんです?」
「確かに私が診ましたね。…腎臓を悪くしている。早く移植手術をしたほうがいい。…今ならドナーがある」
「なら…なら、お願いします!」
「ですが、手術費は馬鹿になりませんよ」
「お金なら、大丈夫です。ですから!」
そういってルカは手術を催促した。
「ミリアム…っ」
「…あら…?」
そっとミリアムは目を覚ました。
辺りは殺風景で見覚えのある家の一室だった。
鏡の悪魔Ⅲ 24
こんばんは、リオンです。
人ってがんばればできるモンですね。いつもより短時間でここまでかけました。私エライっ
今日の要約いってみましょう。
「ルカは立ったまま眠れる」
だって。だって何だかだってだってなんだもん。
はい、ごめんなさい。だって、そうですよね。書いている途中であれっ?とおもいましたもん。
今日はエンタの○様やってないんですって。母が言ってました。
もう死のう。消えよう。皆さん、バッハッハーイ。
いや、ちょ…。最近の旬なものを取り込もうと思ったんです。ごめんなさい。
今日はもう寝ます。エンタやんないし。
また明日…。
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