ある炎天下の日のこと、僕らは歩いていた。

 まだ、とても暑く夏の温度が目に残っていた。

「ねえシンタロー、明日土曜日じゃない? どっかにいかない?」

「構わないでよ、何処かに行ってくれ」

 僕は、あまりにも君が構ってくるから、君の手を払った。

「行かないよ」

 そう言って君は、僕の手をつかみ返した。

「……五月蝿いな」

 振り返ることもなく、僕は歩いていった。







 ――でも、本当の心は?




≪ロスタイムメモリー 2【自己解釈】≫






 伸太郎は買い物を済ませ、またいつものように引き篭っていた。

「……ご主人、そんなんじゃダメですよ?」

 エネが心配するも、伸太郎には届かなかった。

 伸太郎自身は天才である。

 だが。

 そんなものでは、前を向くことなどできないことは、彼には理解できていた。

「……巻き戻ればいいんだ」

 ぽつり、と。

 伸太郎は呟くが、それは彼以外の人間に聞こえることはなかった。

「……なあ、エネ」

「どうしました?」

「もしも、もしもだが、カゲロウが夢を見せてくれるとしたらどうする?」

「どうでしょうね~」

 エネは小さく微笑む。

「……まあ、いい。いいよ。悪かったな、変なこと聴いて」

 そう言って伸太郎は自らのベッドに潜り込んだ。

「ちょ、ちょっとご主人!? まだ昼の二時ですよ!? 寝るには早すぎないですか……!」

 エネの心配は必要もなかった。

 彼はまだ眠っていない。

 彼が考えているのは、ただ一つ。



 ――もしも、自分が死なない世界があるとするなら。



 だが、彼は知っている。

 アヤノという人間は、例え彼が何千年と生きようとももう居ないということを。


つづく。

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ロスタイムメモリー 2【自己解釈】

閲覧数:677

投稿日:2013/03/31 17:52:35

文字数:755文字

カテゴリ:小説

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