姫君達は女帝の執務室に駆け込みましたが、そこに女帝の姿はありませんでした。
女帝を探し城内を探索していると、微かに音が漏れる部屋をみつけました。
「ここは金糸雀(あの子)達がいる部屋…」
部屋から漏れ聞こえるその音は、まるで歌声を絞り出そうとするかのような苦しげな声音。
声は音色を紡ぐことができず、只苦しげな喘ぎが小さく響いていました。
姫君は意を決し、ゆっくりとその部屋の扉を開きました。
薄闇が包む部屋の中には、小さな燭台が仄かな光を灯していました。
部屋の隅、金糸雀の籠の前に探していた女帝の姿がありました。
扉の開く音に気づいた女帝は、三人の方にゆっくりと振り返りました。
女帝は姫君の姿をを認めた後、厳しい顔で一喝しました。
「…この愚か者が!一国の姫が供も付けずに国を抜け出すとはどういうことだ!」
しんと場が静まり返った後に、女帝は少しの間をあけて青の騎士と魔法使いに話しかけました。
「後ろの客人達もよくいらした。妹姫が迷惑をかけたようだね」
女帝はいつもの冷涼な瞳、感情のこもらない声音でそう告げました。
しかし、その顔には王としての威厳はありましたが、いつものような覇気はありません。
「姉様、ご心配おかけしてごめんなさい。私…!」
「言い訳など聞く価値もない。
私は政務に戻る。
お前は客人達の相手でもしているが良い」
女帝はふらつく足取りで扉へと足を進めました。
しかし、青の騎士は女帝の手を掴みその歩みを止めました。
「…貴女はひとりで無理をし過ぎだ」
そう言い、女帝を横抱きに抱えました。
「…っ!」
女帝は抵抗しようと暫く暴れましたが力が出せないのか、諦めて体の力を抜きました。
紫の魔法使いは女帝のもとに歩み寄り、まっすぐに目を見つめ語りかけました。
「姫君の願いは金糸雀を元の姿に戻すことと貴女の病を治すことだが…」
どうやら後者は私には叶えることが出来なさそうだと魔法使いはぽつりと言いました。
女帝は顔色をかえて魔法使いを怒鳴りつけました。
「何を言う、私は病など患ってはいない!」
魔法使いは冷めた瞳で女帝を見据え、子供に言い聞かせるようにゆっくりと言葉を紡ぎます。
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ご意見・ご感想
シーランド
ご意見・ご感想
読ませていただきました!!
とってもおもしろかったです。早く続きが読みたいです。
がんばってください
2010/05/09 19:07:33
ちかお
シーランドさん
初めまして、ちかおと申します。
うたものがたりを読んで頂き、尚且つ感想まで頂きましてありがとうございます!勿体無いお言葉を頂きまして感激しております。
おかげさまでどうにか完結までこぎつけられましたので、最後まで読んで頂けましたら幸いです^^
どうもありがとうございました!
2010/05/12 18:34:48