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確かにそうだ未来も親父も少女になった、ありえないことが起こっているのはわかってる、テレビもまともに放送されてなかったし携帯電話だって繋がらないし町の様子もなんか変だし、この世界で何かが起こっているのは疑いようのない事実だ、でも。
「だからありえないって言ってるんですよ!」
手に持った携帯電話を見なが...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(23)
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言われたままその動画を見続ける。
今はネットに繋がらないからこの動画は保存したものだろう、とてもスムーズに動いている。
…そしてそれは本当に何の前触れもなく起こった。
何が起こったか理解ができなくてしばらく無言のままそれを眺め続ける。
女性ニュースキャスターが突然よろけた。
膝をついたのか、司会台に...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(22)
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「晶さんネット見れます? こっちは全く繋がらないです」
「無理だね」
「混雑してるんですかね」
「どうだろう…とりあえずテレビも電話もインターネットもダメになった、というわけでまるで孤島にいるみたいだね」
孤島。
陸地や他の島から遠く離れて1つだけそこにある島。
確かにそうかもしれないと思った。
い...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(21)
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晶さんとは一度だけ音楽の話を軽くしたことがある。
その時に彼女が持っている携帯音楽プレイヤーに入っていた曲を1つだけ聴かせてもらった。
それは洋楽だった、キャッチーな軽いリズムのロックで、でもどこか寂しげなピアノのメロディがとても印象的な曲だった。
聴くのは洋楽ばかり、あの時に晶さんはそう言っていた...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(20)
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「突然、人が少女になった。それは知ってるよ悟くん。とりあえずお店に行こっか」
彼女はそう言いながらこちらの言葉を待たずに背を向けて歩きだした。
晶さんは話を飛ばすことが多い、それまでの話の流れとは違うことをいきなり言い出したりする。
こちらの話した内容に受け答えをしないこともよくある。
でも人の話を...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(19)
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「晶さん、今とても異常なことが起こってるって知ってますか?」
曲が終わったところで俺は話し出していた。
こらえきれずに溢れ出たように。
彼女と少しだけ距離が離れていたので大きめの声を出して。
その言葉に反応するように彼女は視線を空からこちらに戻すと、目を見つめてくる。
先ほどと変わらず無表情のままで...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(18)
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「あ、あの、えーと」
会話がそのまま終わりそうだったので無理矢理につなげようとしたが、言葉を上手く組み立てられない。
言いよどむこちらを、彼女は先ほどと変わらぬ表情で見ている。
その時、空から声が伝わってきた。
歌だ、それも聴いたことがある。
防災行政無線放送などで使われる屋外スピーカから流れている...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(17)
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黒色の半袖Tシャツとパンツに着替える、勤務先の制服である七分袖で甚平風の紺色シャツとバンダナキャップに合わせる感じで。
仕事に行くときはいつもこんなような服装をしている。
部屋を出てアパートの階段を下りたところで足が止まった。
階段は、道路に面した玄関がある表側から裏の駐車場側に向かって下りていく形...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(16)
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201*年7月25日午前9時。
未来は少し前に職場へと向かった。
話し合ってその答えを出した、理由は色々とあるけれど決め手になったのは未来の強い希望だった。
少女になってしまったのは親父や未来だけじゃない…もしものことを考えて、3人がばらばらになる前に合い言葉をきめておいた。
山と問われたら...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(15)
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『これはとてもマズイよ』
未来の言ったその言葉と指紋という単語から、ふと、俺はあることを連想していた。
容姿も指紋も同じならDNAなんかも同じ可能性がある、もしそうなら、犯罪が行われてもその場で捕まえない限りは誰がそれをやったのかわからなくなる。
あと極端なことを言えば、状況によっては誰かと入れ替わ...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(14)
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ノートに指紋を押印する。
未来のその唐突な行動がなにを意味するのかすぐには理解できなかった。
ぽかんとするこちらを気にせずに未来は言葉を続ける。
「えーと、御父さんもここに拇印を」
ちゃぶ台を囲むようにして3人が集まると、親父からみて正面になるように未来はノートの向きを変えて、押された指紋のすぐ隣を...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(13)
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その少女達は時折、辺りを窺うようなそぶりをみせながら、ゆっくりと道を歩いていく。
そんな2人を目で追っていると、アパートの近くまできていたそのうちの1人が不意にこちらの方を見上げた。
一瞬、顔をそらしたくなったが、身体が固まってしまったかのようにただそれをずっと見ていることしかできなかった。
その少...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(12)
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俺も少女になってしまうのだろうか? そういうことも浮かんではきたが、考えてもどうしようもないと思った。
あごに手をあてると、今朝はまだ剃っていない生えかけの髭の感触が指の腹に伝わってくる。
ふと、朝食を食べる前に起こった出来事を思い出していた。
未来に平手で頬を打たれたことだ。
原因は、俺の部屋に少...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(11)
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メッセージを投稿できる場所はどこも、これと似た内容の発言が多く書き込まれていた。
そして今も増え続けている。
音楽の情報を交換する掲示板でも、映画のレビューを投稿するような場所でも。
さらに異様なのは、それらの言葉を受け入れている人が多数、存在している点だった。
その現実では考えられない出来事に対し...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(10)
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201*7月25日午前7時40分。
未来と親父と俺、3人でちゃぶ台を囲みながら朝食をとる。
冷めたトーストを食べながら、氷が溶けて薄くなってしまったコーヒーを口に入れる。
未来は今はただ無表情のままトーストをかじり黙々と口だけを動かしている。
親父は早々に食べ終えると、ニコニコとした笑顔を作...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(9)
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幼い頃から色々と習い事をしているみたいだが中でも杖術が好きらしく、今でも晴れている日は外で、出勤前に1人で稽古っぽいことをしている。
大学入学時、一人暮らしする時にか弱き乙女だから知り合いが近くにいると安心できるという理由で隣に住むことになったが、多分、俺より圧倒的に強い。
俺や未来は、今は実家のあ...【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(8)