acidjazzfreakの投稿作品一覧
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ヨットを操縦しながら、彼は思い出していた。
念願叶ってスペースシップのクルーになった。
近傍の惑星に行って簡単な講習を受けた後は、船に乗って実務をする。
生活の拠点を外星に移すことになる。
彼が故郷を離れる日。
彼女は見送りには来なかった。
来るはずがない、知らせなかったのだから。
別れは、言わなか...A sort of Short Story ~ by 『Light Song』 4/4
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夜空を見上げる男の傍らで、その横顔を見つめる少女。
彼は得意気に、ライセンスが取れたことを話している。
傍らの少女は相槌を打つ一方で、時折寂しそうな表情を見せた。
彼は、彼女のそうした仕草に気づかない。
見える星を指さし、探査船のクルーになったらどの星に行きたいか、という話を続けている。
彼は、故郷...A sort of Short Story ~ by 『Light Song』 3/4
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届け先の電磁嵐がひどいせいで、予定されていた便が欠航になった。
男は、臨時の休みを得ることとなった。
既に搭乗する準備を進めていたので、フリーに使えるヨットを借りだして小惑星へでも遊びに行こうと思い立った。
ヨットの格納庫へ向かう途中、彼はぼんやりと考える。
小惑星へ行ったところで、楽しいことがある...A sort of Short Story ~ by 『Light Song』 2/4
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A sort of Short Story ~ by『Light Song』
船が成層圏に突入する。
軽い振動が伝わってくる。
漆黒の宇宙空間に代わって、ブルーのグラデーションが映し出される。
やがて目の前に真っ白な雲海が見えてくる。
船の後方には深い藍色、周囲は抜けるような青色に満たされる。
気圧...A sort of Short Story ~ by 『Light Song』 1/4
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♭ ♭ ♭
前期の授業をほとんど落とした。
無理もない、一週間まるまる大学に行かない週も珍しくなくなっていた。
このままでは、進級すら危うい。
彼の数少ない友人は、はじめの方こそメールや電話などで、
「ガッコ来いよー」
なんて言ってくれていたのだったが、彼は無視し続けた。
友人たちに会うのが、嫌だっ...A kind of Short Story from 『tautology』 4/4
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♯ ♯ ♯
ある日のこと。
彼はパソコンの周辺機器を買い足そうと、郊外の大型PC専門店へ行った。
平日の昼間は、店も空いている。
目当てのコーナーに向かい、ざっと見渡す。
けれど青年は、いつもの通りにスペックの比較や手持ちの機器との相性などが、すんなりと頭に入らない。
どこか上の空で、思考が自分の...A kind of Short Story from 『tautology』 3/4
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♯ ♯ ♯
「マスター、今日はどんな曲ですか?」
ディスプレイから、コバルトブルーの髪をなびかせた少女が尋ねる。
「今日のはちょっとロックテイストが強いヤツだ。英語もけっこう入ってる、悪いな」
「え゛ー、英語ですかぁ……ひどい、わたしが苦手なこと知ってるクセに!」
少女は、ブラウスの腰に手をあてて...A kind of Short Story from 『tautology』 2/4
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A kind of Short Story ~ from『tautology』
ディスプレイを睨み、マウスをクリックする。
一拍の長さを示すバーが、半拍のバーと休符に入れ替わる。
画面上のボタンをクリックすると、青年のヘッドホンにメロディが流れる。
――うん、これで少し締まった感じになった。あとは…...A kind of Short Story from 『tautology』 1/4