文字中心に色々投稿したいと思っています。ミクと鏡音多め。
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春待ち
このところすっかり穏やかになってきた気候に、休日だからとつい惰眠を貪っていた僕の部屋にそれは春の嵐みたいに何の断りもなく、こっちの都合なんてお構いなしに舞い込んで来た。
「レン。ねえ、レン…………」
ギシ、とベッドの上に体重が掛かる音。かすかな軋み。
「レン、起きて」
至...春待ち(レンリン)
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子猫とブランケット
夏の終わりに南から接近してきた台風は次第に勢力を増し、自分たちが住んでいる地域にやってきた頃にはかなり大型のものになっていた。
「ミク姉たちは出先で足止めくらって、しばらく帰ってこれそうにないってさ」
レンは電話の受話器を置くと、リビングのイスの上で器用に膝を抱...子猫とブランケット(レンリン)
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ローリィ・ドール
趣のある木造家屋を改築して建てられた小さな和食店で、白い夏服のセーラーに身を包んだ少女と眼鏡をかけた青年が、向かい合わせの席に腰を降ろして、少し遅い昼食を取っていた。兄妹というには少し年が離れているようだったが他にその二人を形容する言葉は見つからず、傍目には少し変わった雰囲...ローリィ・ドール(レンリン)
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イヌと甘噛み
「ねえねえ、こっちのワンピースとパレオのだったらどっちが可愛いと思う?」
自分以外には女性客しかいない水着売り場の四角い箱、もとい試着室の前で居心地が悪そうに腕を組んで待っていた少年は、黄色いワンピース型の水着を身に纏った少女に一度だけ視線をやると、すぐに別の方向に逸ら...イヌと甘噛み
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彼女が髪を伸ばすことに対するいくつかの理由
「のびたよね」
「え?」
「髪の毛。もうずっと伸ばしてるだろ?」
「ああ、うん」
ひとつの机を挟んで向かい合っている少年からそう言われて、少女ははじめてそのことに気付いたかのような素振りで、肩にかけて下に垂らしている髪をひと房だけ手に取った。
以前は耳にか...彼女に対するいくつかの理由
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2.
「…………そうだけど」
僕は少し押され気味になりながら、エレベーターの方向からものすごい勢いでやって来た女の子の質問に答える。
「わぁ、すごいすごい! あっ、私はグミって言うっス。今売り出し中の歌手で……ってそんなことはどうでも良くて!」
「ハァ」
ミク姉よりも明るい黄緑の髪に、奇抜なデザ...【ジーニー】を勝手な解釈で小説化してみた・2
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ジーニー
「君の望みは何なんだ?」
何の断りもなく僕の目の前に現れたそいつは、開口一番にそんなことを抜かした。
「なあ、愛か?」
「名誉か?」
どっちもいらないよ。
何も望みたくなかった。何も考えたくなかった。
望んだものの代償に、失ったものの大きさを悔やむくらいなら、もう僕は二度と...【ジーニー】を勝手な解釈で小説化してみた・1
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注意。ネギトロ(ルカミク)で百合です。大丈夫な方のみどうぞ。
「できたっ」
どこからか針金とペンチを持ってきて、なかなか思うように曲がらないと悪戦苦闘していたミクは、ようやく何かが完成した様子で嬉しそうな声を上げた。
「ルカちゃん、見て」
石膏みたいに白くて細い指の中に閉じ込めていたそれに私が興味...リリィ
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唇に毒を、君には抜けない刺を。
「今回の曲はお姫様と王子様がテーマだから、それに合わせた衣装なんだって」
プロモーション用の衣装についてそう説明を受けたときには、そりゃまた随分と恥ずかしいテーマだなあと呆れるのと同時に、少しの期待を抱いてもいた。すでに用意されている淡いオレンジ色のドレスを着た...唇には毒を、君には抜けない刺を
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タイニー タイニー
「日曜日の午後四時。赤い屋根が目印の喫茶店の前で」
何度も何度もくりかえし呟いた言葉は、今ではあたしの胸を一秒ごとに突き刺す時計の針みたいに鋭く尖っていく。
「あー、もうっ!」
癇癪起こした子供みたいに叫んでベッドにぼすんと顔をうずめると、干したばかりでお日様の匂いがするふかふ...tiny-tiny