*
8月15日。
午後12時半くらい。
正に「真夏日」。天気は最高。
アスファルトの上で、陽炎が揺れる。
特にすることも無いし、暑いし。
車道のそばの日陰に座り込んで、暑さを免れようとしていた。
僕は君とくだらないことを駄弁ってた。
君はずっと猫を触ってて、猫も気持ちよさそうにゴロゴロのどを鳴らしている。
「でもまぁ、夏は嫌いかな」
別に、日本の四季を否定したわけではないと思う。
夏が好き、と言うほうがこのご時世どうかしてると思うし。
でも僕には、それがすごくふてぶてしく思えた。
そう、君に撫でられてる猫みたいに。
「あっ?」
ふてぶてしい猫は撫でてもらった恩もさっぱり忘れて車道に飛び出した。
君はわざわざそれを追う。
馬鹿だな、大丈夫だよ。
猫はとっても素早いんだから。
信号だって青…
違う。赤だ!
キィィィィィィィィ…
君を見ていた筈の僕の視界は、大型トラックに遮られた。
君を引きずって鳴き叫ぶ、トラック。
嘘だ。君が死ぬなんて、絶対に嘘だ。
地面で揺れてる陽炎が、「嘘じゃないぞ」って嗤ってる。
当然、周りは大騒ぎのはず。
でも僕には、君の血飛沫の色、君の香りしか感じられない。
紛れも無く、死の香り。
僕を取り囲むそれに、むせ返る。
蝉の音しか聞こえない。
僕の夏は、水色から赤色に変わって、
眩む、眩む。
*
目覚まし時計が鳴っている。
僕は飛び起きた。
時計は12時過ぎを指す。
外が暗いから、多分真夜中。
日めくりカレンダーは8月14日のままだから、今は8月15日になったばかりということになる。
君が死んだのは、8月15日の午後12時半くらい。
さっきのは何だったんだろう。
予知夢というのを聞いたことがある。
今日起こることの、予知なのかもしれない。
それにしても、あんなリアルな夢があるだろうか?
僕は確かに君に触れたし、血飛沫も、君の香りも。
混じって死の香りになったのも、全部覚えている。
僕はそれを「奇妙な夢」とだけ捉えて、眠った。
*
そしてまた、12時半。
僕は夢の事なんかすっかり忘れていたけれど、君と猫を見ていたら思い出した。
夢と全く同じ、今。
「今日はもう、帰ろうか」
少し不思議で、馬鹿馬鹿しいとは思うけど、やっぱり気になるから。
君は首をかしげながらも、僕の差し出した手を取った。
あの時赤に変わった信号機は、ちゃんと青だ。
トラックもいない。
猫は僕の腕に固定されて動けない。
ほら、ちゃんと渡れただろう?
周りの人々が、口をあけて空を仰いでいる。
変な光景だな、と僕も空を仰ぐと、
「キャァァァァァァァァァァ…」
落下してきた鉄柱が、君を貫いて突き刺さる。
耳を劈くような悲鳴。
どっかで鳴ってる風鈴。
非現実的なそれと、日常的なそれが木々の間で空回りして、気持ち悪い。
さっきのが死の香りなら、これが死の音?
さっきと同じ陽炎が、「夢じゃないぞ」って嗤ってる。
夢じゃないなら、さっきのと、これは一体何なんだ。
真横の君は、笑っているような気がした。
また、眩む、眩む。
*
夢じゃないならこれは一体何なんだ。
僕は何度も未来を見た。
全部陽炎が嗤って君を奪い去った。
夢じゃなくて、嘘でもないのなら、これは現実だ。
僕が願えば、何度でも君は僕の前に現れて、何度でも僕の前で死んでいく。
僕の、実に良くある不思議な力で。
繰り返して、繰り返して、全部奪われた。
同じことの繰り返し。
繰り返しをやめる方法は一つだけだ。
*
猫が、逃げた。
君が、追った。
僕が、押しのけた。
僕が、君の身代わりになった。
僕の血飛沫が君の瞳と言うことを聞かない身体に乱反射した。
ああ、良かった。
何度も嗤って、全部奪った陽炎は、文句ありげ。
「ざまぁみろよ」
笑ったら、何度も経験した、何十年間繰り返し続けた、実によくある夏の日のことが終わった。
*
8月15日。
午後12時半くらい。
正に「真夏日」。天気は最高。
アスファルトの上で、陽炎が揺れる。
特にすることも無いし、暑いし。
車道のそばの日陰に座り込んで、暑さを免れようとしていた。
私は君とくだらないことを駄弁ってた。
私はずっと猫を触ってて、猫も気持ちよさそうにゴロゴロのどを鳴らしている。
「でもまぁ、夏は嫌いかな」
私はちょっと偉そうにそう言った。
私が撫でてるこの猫みたいに。
「あっ?」
ふてぶてしい猫は撫でてもらった恩もさっぱり忘れて車道に飛び出した。
私はわざわざそれを追う。
轢かれたら大変。
君は心配そうに見つめてる。
大丈夫だよ、信号だって青だもん。
赤に変わった信号機、車道に飛び出す君。
キィィィィィィィィ…
君を見ていた筈の私の視界は、大型トラックに遮られた。
君を引きずって鳴き叫ぶ、トラック。
嘘みたい。君が死ぬなんて、絶対、嘘だ。
地面で揺れてる陽炎が、「嘘じゃないぞ」って嗤ってる。
当然、周りは大騒ぎのはず。
でも私には、君の血飛沫の色、君の香りしか感じられない。
紛れも無く、死の香り。
私を取り囲むそれに、むせ返る。
蝉の音しか聞こえない。
私の夏は、水色から赤色に変わって。
君は、最後に何故か笑ってて。
眩む、眩む。
*
8月14日の午前12時。
また駄目だった。
私はひとり、ベッドの上で猫を抱きしめた。
繰り返して何十年、どう転がっても君は死んでしまう。
全部陽炎が嗤って奪い去った。
私が願えば、何度でも君は私の目の前に現れて、何度でも私の目の前で死んでいく。
実に良くある、不思議な力。
ずっと、同じことの繰り返し。
この繰り返しをやめる方法は、一つだけ。
夏のよくある話に、私がピリオドを打とう。
私が、君の身代わりになろう。
It returns to the beginning…
【カゲロウデイズ】陽炎の向こうに【自己解釈】
最後の英語の意味は、「冒頭に戻る」です。
8月15日を繰り返し続ける、少年と少女のお話。
どうやら彼らは時間を巻き戻す能力があるみたいですね
何日か前からからくりと並立して書いてました。
からくりももう少しで最終回です。
からくり遅ぇよ、と思っているかもしれないけど!
世の中には焦らしというテクがあるのを忘れちゃいけない(ドヤッ(←何様
遅くなってるのは文化祭の脚本も作らなきゃいけないからです…
いや、出来てるんですけどね?
キャストのみんなの出来によって手直ししなきゃ…
そのキャストも並立してやってるし…
ああ、解釈難しかった…
裏表と同じくらい難しかった…
無限ループが止まらない本家様
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15751190
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ご意見・ご感想
るのら
ご意見・ご感想
初コメです☆((こんな私がコメしてもいいんですか^p^
ギャース神だああああ
この小説を読んでから本家に行きました。
瀕死で戻ってきましたよー^p^
2011/10/31 19:54:23
楪 侑子@復活!
ありがとうございます!
むしろ大歓迎ですよ!?
本家様はやっぱり神ですね!
素敵な曲に出会う架け橋となったことを誇りに思います。
2011/11/09 16:12:13
莉子
ご意見・ご感想
お久しぶりです。莉子です。
侑子さんは相変わらず解釈がお上手ですね!
その才能、うらやましい限りです…
最後の「冒頭に戻る」の所が無限ループ感を出していて凄いと思います!
ブクマいただきますね!
2011/10/22 22:37:46
楪 侑子@復活!
紅華ちゃん やっぱ?めっちゃいい曲やよね?
そんなすばらしい曲に侑子のksks解釈でよかったのかな?
ブクマありがとーぅ!
いやいや(*´Д`)
3人くらいで作ってたけど、なんとか成功してよかった!
からくりも頑張る(・ω・´)
莉子さん お久しぶりですっ(*´∀`*)
そ、そんなに褒めたって何もでませんよぅ?
こんなks文才でよければもらってくだs(←
冒頭に戻るのところは翻訳ツールだったなんていえません。
ブクマありがとうございます!
2011/10/31 12:57:46
紅華116@たまに活動。
ご意見・ご感想
カゲロウデイズ!!
大好きな曲だよ><
素晴らしい解釈をありがとう^^
ブクマもらってくね!!
劇の脚本!? 侑子が作るのなら、素晴らしい出来なんだろうね… 見てみたい…
からくりも楽しみにしてるよ^^
2011/10/21 21:45:36
楪 侑子@復活!
紅華ちゃん やっぱ?めっちゃいい曲やよね?
そんなすばらしい曲に侑子のksks解釈でよかったのかな?
ブクマありがとーぅ!
いやいや(*´Д`)
3人くらいで作ってたけど、なんとか成功してよかった!
からくりも頑張る(・ω・´)
莉子さん お久しぶりですっ(*´∀`*)
そ、そんなに褒めたって何もでませんよぅ?
こんなks文才でよければもらってくだs(←
冒頭に戻るのところは翻訳ツールだったなんていえません。
ブクマありがとうございます!
2011/10/31 12:57:46