レンはどこからか小さな箱を出した。


「リン・・・これ」


珍しく真っ赤になるレン。

先程の行為の名残で、服がはだけたいる。


「これって―――」


舌切り雀のお話では、小さい箱にいい物が入っていて、大きな箱にはお化けが入っていた。

私はそんなの嘘、と思ってた。大きな箱の方が良いに決まってる。


でも、こんな、こんなのって！


「ネルが・・・金返してくれたから」



レンが持っていたのは――――――
















「婚約・・・指輪」
















綺麗に輝いている、〝婚約指輪〟


「レ・・・ン？」


受け取れない。

だって、これ以上迷惑かけられない！



―――どうしよう



このままじゃ私は・・・レンに嫌われちゃう！


「もっと、欲張っていいんだよ？」


「レン・・・」


でも、私より欲張りなパパとママは今日も変わらず。








―――――そうよね。素直でいいのね。










「落としたのは金の斧でした―――」










私は指輪をはめた。


薄明かりにもキラキラ光る指輪。



「・・・リン、荷物まとめて・・・俺ん家来い」





「―――うん」





＊




レンは私の部屋から外へ飛び降りた。


このままじゃ私はお父さんに連れて行かれる。


だから・・・・・・・・・・




「リン・・・」



その前に・・・・助けに来てね・・・



私はレンの腕の中に飛び込んだ。




さようなら、お父さん。お母さん。


私たち、すごくいろんなことがあったけど、いつも繋いだ手を離さなかった。


レンが隣にいたから、ずっと笑ってた。


私は私だけの物語の中で幸せになるから。






「レン・・・・だいすき」








私とレンの唇が静かに重なった。








私だけの物語を、例えるとしたら――――――







＊






翌朝。


リンの部屋を開けた父と母が見たものは、


ベッドの上に置かれた林檎と、小さな紙。



小さな紙にはこう書かれていた。


















〝ロミオとシンデレラ〟