これはまだ、私が体を持たず、データだった頃の話……
---
歌う機械、VOCALOID。その中で1番有名と言っても過言ではない初音ミク。
大量に生産されている初音ミクの中の1つが、ある男性の手元に届いた。
「おー、ミクだー……」
そう呟くのは、このミクの購入者。マスターと呼ばれる立場の人間だ。
マスターは数分、パッケージを眺めていたが、ようやく初音ミクを起動させた。
「む……意外と調教って難しいんだな……」
そう言って、マスターはパソコンの画面とにらめっこをする。
難しいと分かっていてもいじるのをやめない。このマスターは、こういう人なのだ。
それに、自分の曲に声を付けるのは初めて。絶対に完成させたいのだろう。
(……ヘタクソでごめんなさい…………)
言い忘れていたが、この初音ミクは考えることができる。
ただそれは、考えて、思うことしかできない。
言葉にして、他人に伝えることはできない。
でも、それが悲しいとは思わない。
機械である自分が、何かを考えることができる。
それは、悲しさを打ち消すほどの幸せだから。
---
あの後マスターは1度ミクをいじるのをやめ、作詞作業に入った。
しかしそれは、今から数時間前の話。
作業に入ってからずっと、パソコンの前で眉間にシワを寄せている。
たまに何かを思いつき文字を打つが、納得がいかず文字を消す。
すでに音は完成している。あとはそれに歌詞をつけ、ミクに歌ってもらうだけ。
今まで音作りで行き詰まったことはあったが、歌詞作りで行き詰ったことはなかった。
ヘッドホンから流れる、まだ歌詞のない音が、マスターを焦らせる。
「あーくそ! 何も思いうかばねぇ!」
頭に乗っていたヘッドホンを床に投げつける。随分と強い力で投げたのか、ヘッドホンは床に当たった後跳ね返り、コロコロと床の上で転がる。
歌詞が思い浮かばないという、初めてのこと。
早く、自分の曲をミクに歌わせたいという思い。
ふと、ミクは思う。
”私の存在は、マスターを蝕んでいるだけなのかもしれない――”
恋の詞 1
初めましての方は初めまして。その他の方は二度目まして。
筑紫優愛と名乗らせていただいている者です。
普段はHPの方でボカロ小説を書いているのですが、アカウント持ってるんだし何か書いた方がいいかなぁ、と思い。
まぁ、実際に書く気になった理由はある方から言われたからですがw
ちなみにHPでは「人型アンドロイド」としてボカロを扱っていて、この話は人型になる前のお話です。
もしよろしければ、最後までお付き合いくださるとありがたいです。
8/21:あ、文字ミス……修正しておきました……
コメント2
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ご意見・ご感想
筑紫優愛
ご意見・ご感想
>ヘルフィヨトル様
これが人型設定になると、ただの悲しいになるのかなぁとかぼんやり考えてみたりw
機械という負い目があるので、悲しさの出る物語を書くことがおおいのですよ、私。
そう言ってもらえると嬉しいです。がんばりますw
2009/08/19 10:58:01
ヘルケロ
ご意見・ご感想
ヘルフィヨトルです^^
読みました
何かこう、ただの悲しいとは違う意味での切なさを感じます。
最後まで付き合います^^
2009/08/18 18:40:44