「だんだん、お客さんが増えてきたかしら」
ブースの前に出て、テトさんはコヨミ君に言う。
「そうですね。午後になって、出足が良くなったんでしょう」
コヨミ君はうなずいた。
東京ビックサイトで開かれている「雑貨&コミック・フェア」。
会場のホール1とホール2を使って、いろんな出展者が販売用の机やブースを出している。
コヨミ君は、自分が店長を勤める会社の、リサイクルショップ「鑑定団」として、出展した。
ブースには、彼やテトさんが協力して作った人形の「テト・ドール」のグッズが並んでいる。
ドールのデザイナーであり、デザインのモデルでもあるテトさんも、出展者スタッフとして来ていた。
「テト・ドール」の他にも、コヨミ君が「丸谷プロ」とコラボして作った怪獣のフィギュア、「快獣ウルトラ・ぶースカ」も並んでいる。
コヨミくんは言う。
「この会場なら、いろんな出会いがありますよ。テト・ドールの“メジャー・デビュー”のチャンスも、きっとネ!」
このところ、徐々に人気が上昇中の「テト・ドール」の人形。
いまは、コヨミ君たちのショップのチェーン店をはじめ、雑貨店などで扱われている。
このコミックフェアの会場で、新しい取引の出会いがあればいいと、彼らは考えて出展したのだった。
「そういえば、霧雨さんたちも、となりのホールで出展してるんだよね。どうだろう、彼女たちの調子は…」
コヨミ君はつぶやいた。
●個人コーナーで、売れ行き上々…
コヨミ君とテトさんのいるホール1の奥には、いろんな食品や飲み物を売るコーナーがある。
たこるかちゃんたちの移動カフェ「ドナドナ号」も、そこにいた。
その向こうに、ホール2が続く。
ホール2には、デザイナーや同人誌、フィギュア作家などの「個人出展コーナー」が設けられていた。
そこに、霧雨さんと駿河ちゃんの出展しているブースがある。
「ありがとうございますっ」
商品と、お釣りを渡して、元気よく、駿河ちゃんが言った。
「売れ行き、結構イイねえ」
霧雨さんが、椅子に座って嬉しそうにうなずく。
2人の目の前には、デザイナーの霧雨さんが描いた“ちょっと不思議な”感じのイラスト原画が並んでいる。
メルヘン調のものから、魔術っぽいマジカルなタッチのものまで、いろいろだ。
男女、年齢を問わず、結構、来場者に好評のようだ。
「あ、リンちゃん!」
机の前に立って、会場を眺めていた駿河ちゃんは、声を上げた。
向こうから、2人のブースを目指して、リンちゃんがやってきた。
●心シテ、ヤロウゼ!
「こんにちは。お疲れ様です~」
「いらっしゃいませ!」
笑顔で2人は迎える。
この間、ライブハウスで演奏したリンちゃんにつきまとった男の子たちを、霧雨さんと駿河ちゃんがうまくやっつけた。
それから、彼女たちは仲良くなったのだ。
「わあ、素敵なイラスト!」
「どうもありがとう」
リンちゃんは、魔女が描かれたイラストを、楽しそうに眺める。
「このポストカード下さい!」
「有難うございまーす」
駿河ちゃんが、いそいそと袋に詰める。すると…
「アリガトウゴザイマース!」
ブースの机に置かれていた、「はっちゅーね」人形が、あいさつした。
「あれれ、はっちゅーねだ」
リンちゃんは、思わず吹き出した。
「うん。今日、リンちゃんがここに遊びに来てくれるって言ってたでしょ?」
にこやかに、霧雨さんが言う。
「でも、この前みたいなことがあったら、私たちと、この“はっちゅーね”で、ボディガードしてあげるからね!」
お釣りを渡しながら、駿河ちゃんがみんなに目配せして教える。
リンちゃんと霧雨さんは、視線の先を見た。
何人かの男の子がこちらを見ている。
「リンちゃんだ」という声も聞こえた。
「また、リンちゃんのブログのファンかな。この間の“追っかけ君”じゃ、ないみたいだけどね」
霧雨さんは腕を組む。
「リンちゃん、人気があるからなあ」
駿河ちゃんもニヤっと笑った。
「大丈夫よ。何かあっても、私たちがいるからサ」
霧雨さんの言葉に続いて、「はっちゅーね」が大声で言った。
「オウ!心シテ、ヤロウゼ!」
リンちゃんは思った。
「ありがたいけど、なんか、自分のイラストの商売より、男の子対策に、もえちゃってるなあ」`s(・'・;)
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ブクマつながり
もっと見る霧雨さんのブースに向かって、ルカさんがゆっくりと歩いてきた。
「ルカさん!」
「たこるかちゃん、おつかれサマ」
彼女は、たこるかちゃんに向かって微笑んだ。
「あら、れおんさん。どうしたの?」
たこるかちゃんは、ルカさんにこれまでのいきさつを、手短かに説明した。
「そうなの!れおんさん、リンちゃんと“...玩具屋カイくんの販売日誌(192) リンちゃん+“はっちゅーね”の行方は?
tamaonion
“はっちゅーね”の人形を持った、リンちゃんに、どこかアヤシイおじさんは、話しかけつづけている。
「アナタもかわいいし、人形もカワイイねー。」
リンちゃんはちょっと困って、でも強気に応戦する。
「でも、おじさん。写真ばかり撮ってるけど、私が目的?人形が目的?」
おじさんは、ニコッと笑って答えた。
「ウ...玩具屋カイくんの販売日誌(189) リンちゃん攻防戦、開始!
tamaonion
ブースの前で、コヨミ君と、れおんさんは、にらみあって立っていた。
ザワザワ、と騒ぎ出した男の子たち。
それを見て、テトさんは思わず、コヨミ君に声をかけた。
「ねぇ、どうしたの? もめ事はよくないですよ」
フッと我に返ったように、コヨミ君は彼女の方を見た。
「あ、テトさん。ごめんごめん。ちょっと、大人...玩具屋カイくんの販売日誌(194) 新商品で勝負だ!
tamaonion
お店の売り場には、コスメや、美容関連のアイテムが、いろいろ並んでいる。
それを、レイムさんは目を丸くして眺めている。
「ワタシ、こういうの詳しくないんだわ~」
そうつぶやく彼女に、後ろを歩いているぱみゅちゃんは、諭す様に言った。
「そうそう。あんたはちょっと化粧っ気が無さすぎるからネ。少しは知っとい...玩具屋カイくんの販売日誌(179) レイムさんのオカルト理論 (その1)
tamaonion
「はーい。コーヒー、入りましたよ」
ルコ坊がカップに入ったコーヒーを、レン君たちに運んできた。
ちょっと不思議な雰囲気の、りりィさんのお店「星を売る店・上海屋」
りりィさんを送ってきたレン君は、美味しそうにそれを飲んだ。
「いつも、美味しいね。ルコちゃんの淹れるのって」
「へへ、どーもありがとう」
...玩具屋カイくんの販売日誌(187) 困ったヤツの目的は?
tamaonion
ゆくりさんのお店で、バイトのレン君が、青くなっていた、その頃。
東京・有明にある東京ビッグサイトで、人気のイベント「雑貨&コミック・フェア」が開かれていた。
企業のブースをはじめ、コミックやフィギュアを作る有志や同人の人たちが、それぞれにブースを出展している。
会場のホールの一角に、移動式自動車のカ...玩具屋カイくんの販売日誌(182) コミックフェアで、ひと騒動
tamaonion
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ご意見・ご感想
enarin
ご意見・ご感想
こんばんは~♪
今回はイベントの光景ですね。いや~売られている商品や協賛している企業の名前が、もうピンと来るものばかりで参りました。円○プロとか、ブー○カとか。リサイクルショップの名前も、某火曜日の”いい仕事ですね~”の番組名からかも。
それとコミケとかのイベントって、とにかくそういう”カオス”な状態に”シビレる! あこがれるぅ!”な人たちが集まるので、人によっては酔ってしまったり、俄然元気になったりと、いろいろですが、私は素敵なイベントだと思ってます。なにより、個人が企業ブースとともに、たくさんのお客さんの前で、世に作品を出せる大事な機会ですからね。
さて、リンちゃんのボディガード(リンちゃん防衛隊?)は着々と団結力を固めているようですね。素晴らしいことです。リンちゃんは可愛い!
次回も楽しみにしております! ではでは~♪
P.S 寒い日が続いております。ご自愛くださいませ。
2013/01/27 21:23:36
tamaonion
enarinさん、メッセージありがとうございます
>円○プロとか、ブー○カとか。リサイクルショップの名前も、某火曜日の”いい仕事ですね?”の番組名からかも。
半分正解です!プロ名やキャラ名はご明察。ショップは、実は実際にそういうチェーンが地元界隈にあるんですよ。それをモデルにしています。ちなみにミクさん関連やと東方関連のグッズが豊富です(笑)
>なにより、個人が企業ブースとともに、たくさんのお客さんの前で、世に作品を出せる大事な機会ですからね。
ほんとですね。個人で作品を発信できるシステムがある社会、なかなか今は恵まれてますよねー。
>さて、リンちゃんのボディガード(リンちゃん防衛隊?)は着々と団結力を固めているようですね。素晴らしいことです。リンちゃんは可愛い!
確かに!(笑)ツンな感じがあるくせに、どこか守ってあげたい感じもするんですよね。
感想、有難うございます。また聞かせてください!
P.S.まだまだ寒いので健康にご留意くださいね。今朝は私の地域はまた雪が降りました...春が待ち遠しいです。
では、また。
2013/01/28 22:30:06