ある日ある朝、目覚めてみたら。
ナゾのイキモノが、俺のベッドに侵入していた。
すうすうと健やかな寝息を立てるソイツは、蒼い髪、白いコートに青いマフラーの、どう見てもKAITOだった。そこまでなら。
だがしかし厄介な事に、そこで終わっちゃいなかった。まずサイズがおかしい。矢鱈にコンパクトで、しかもせいぜい2~3頭身。更には、妙なオプション付きだった。もふもふしたケモノ耳(垂れた感じが犬っぽい)と、同じく尻尾が。
「……っ?!」
寝惚けたアタマが遅まきながら状況を把握した途端、がばりと勢い良く身を起こした。反動でスプリングが軋みを上げ、その拍子に丸くなって眠るソイツがベッドの端から転げ落ちる。
べち。
何とも言い難い音がして、次の瞬間――。
「うああああぁああぁんっ!!」
鼓膜どころか壁まで揺るがすような、大音量の泣き声が響き渡った。
更に。
「ぅん……? 何騒いでるのさ、イチぃ」
気怠い声を上げながら、布団の奥からごそごそともう1匹――いや、もう1人? もう1体?――KAITOっぽいナニカが這い出てきた。こっちも耳と尻尾付き――ただし、どちらもすんなりとして、どうも猫のそれのようだ。
ふにゃぁあ、と欠伸を零し、緩く指を握り込んだ『猫の手』で顔を擦るソイツを呆然と眺めつつ、俺は脳内で昨夜の俺の肩を引っ掴んでガクガク揺さぶっていた。
一体全体、これはどういう事態なんだ、俺。
とりあえず、まずは泣き喚くKAITOっぽいのを宥めようと、冷凍庫からアイスを出してきてみた。
「うあぁ……あ♪」
一目で泣き止んだぞオイ。まだやるとも言ってないんだが、凄まじくゲンキンなヤツだな。
一瞬で号泣を消し去ったKAITOっぽいの(犬っぽい方)は、ただでさえデカい瞳をいっぱいに見開いてきらきらと輝かせた。目玉が転げ落ちるんじゃないかと心配しそうになるほどだ。おまけにぶんぶんと風切り音が聞こえそうな勢いで尻尾を振って、口には今にも垂れ落ちそうに涎を溢れさせている。
あまりの食いつきっぷりに、思わずアイスカップを持つ手を動かしてみた。犬っぽいのは視線どころか、身体ごと揺れて追いかける。左右に手を振ってみると、やはりついてくるちっこい頭。揺らす速度を変えればこれまた合わせてきて、まるでメトロノームだ。
(……面白い)
うっかりハマりかける俺に、淡々とした声が掛けられた。
「マスター、溶けるよ」
そりゃそうだ。
猫っぽい方の冷静なツッコミに我に返って、俺はアイスカップの蓋を開ける。ほら。と置いてやれば、待ちかねていた犬っぽいのが飛びついてきた。
「零すなよ、って聞いてるか? 顔ごとカップに突っ込むな! 耳と尻尾以外はヒト型なんだからスプーンくらい使え!」
「あぅ。あい……えへ、おいしーです」
「そりゃ良かったな」
にま、と幸せそうに笑う顔に少々呆れつつ、静かなもう一方にもアイスを出してやる。猫っぽいのは黙ってスプーンを抱え(何しろコイツらときたら仔猫くらいのサイズしかないので、流石に片手で持つのは難しそうだ)もくもくとアイスを口に運んでいった。
「ん、お前は大人しく食ってるな。よしよし」
「……」
こちらはちゃんとスプーンを使うのを見て、食うのを邪魔しない程度に頭を撫でる。蒼い髪はとろりと艶めいた触り心地で、こんなところまで猫仕様らしい。
てのひらの下、猫っぽくKAITOっぽいナニカは無言だったが、しなやかな尻尾の先がゆらりと揺れた。
* * * * *
「で……KAITOマスターじゃなくナゾのイキモノの飼い主になった、と」
「飼い主っつーと微妙に厭な感じだな何か。マスターでいいだろ、一応KAITOはKAITOらしいし」
「ますたー、マスター俺もー!」
「本当かよ? ちゃんと歌えるのか、コイツら」
「ねーマスターってばー」
「そこは確認したそして寝オチした。ナマでツインはα波パねぇわ」
「ねー! ゼロばっかりずるいですよぅ」
「いや寝るなし。……いや、解るけどな」
「まーすーたーぁー、ってばーぁ」
ゆさゆさ。腕に取り縋って揺すられ、俺は話を中断してイチ――犬っぽいのはそういう名らしい。猫っぽい方はゼロだ――を膝に抱き上げた。
訪ねてきた悪友に、KAITOっぽいの達は警戒心を刺激されたらしい。イチはソファに掛けた俺の背の後ろに潜り込み、ゼロは俺を駆け登って後頭部に張り付いて――そのゼロがどういうわけだか羨ましくなったらしいイチが、隠れるのも忘れて「俺も」と連呼していたのだった。
「俺の頭はふたり分には狭いし、お前は何か落ちそうだから止めとけ。撫でてやるからお膝で我慢しろー」
「む~……あぅ。マスター、なでなできもちーです」
「よしよし」
「………………マスター、僕も」
「ん、頭に載せて撫でるのはキツイから降りて来い。膝の上ならふたりでも平気だろ」
「……わかった」
よじよじとゼロが降りてきて、イチと並んで膝に収まる。左右の手をそれぞれに提供して撫でてやれば、すっかり安心した顔で満足気に尻尾を揺らした。どうやら人見知り終了……というよりは、存在を忘れ去られてるな、ヤス。
「雁屋。やっぱお前、それはどう見てもマスターじゃねーわ。ム○ゴローさんか保父さんか、っつー感じだぞ」
妙にしみじみとした口調で言われて、俺は顔を上げてヤスを見た。そのまま真顔で見詰め合う事数秒……無言のまま、視線を膝へと戻す。
「……否定できなかったな?」
「言うな。」
追撃を短く遮って、俺は膝の上の青いの達を撫で続けた。柔らかな毛並みは、極上の撫で心地だ。
「ま……いいだろ。歌えるんだしな」
なぁ。と呟きを落とす先で、ふたりは青い毛玉と化して丸くなっている。それに思わず和みつつ、羨む視線に気付いて口の端でニヤリと笑った。
そういえばこの悪友は、昔っから犬猫好きだがフラれっぱなしなんだった。
B.C.D?!【「D.D.D.」セルフパロ】
※拙作「D.D.D.」のセルフパロです。「D.D.D.」本編、及び実在のKAITO、マスター、団体等とは一切関係ございません(笑)
「ところでさ」
「うん? 何、ゼロ?」
「タイトル……『C』は僕の『cat』で、『D』は『dog』でイチなんだよね」
「うん。あ……」
「うん。『B』は、じゃあ何かなって。流れからするとマスターだけど」
「『boy』、とか」
「そんな歳でもねぇだろ」
「まぁ……じゃあ、えっと。『無愛想』の『B』……」
「『仏頂面』の『B』?」
「『不精』の『B』でいいんじゃねぇか」
「「マスター、それ自分で言っちゃうんだ……」」
(まぁ何か、そんな感じですw)
あ。今気付いたけど、結局ゼロイチが来た経緯書いてなかった←
えー、本編通り酔った勢いでKAITOお迎えしようとしたマスターでしたが、帰り道に雨の中で段ボール箱に入って震えるゼロイチと目が合って保護しましたw
ゼロイチが何でSD化した上ケモノ耳&尻尾付きなのかは、考えるな、感じろ(←
コメント2
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ご意見・ご感想
acuzis
ご意見・ご感想
考えるよりも先に感じました←((何を?
リアでヨダレが流れそうになったじゃないですかッ!!
KAITOでワンコ&ぬこちゃんは最強です*><*
よく動物と子供に勝るものは…とか言いますけど
まさにソレですよもうどうしようどうしてくれるんですk妄想が暴走しt((←黙れ青廃変態w
ワンコ→イチくん ぬこ→ゼロくんとは性格もハマっちゃってるしッ!!
ムツ○ロウ雁屋さん、デレデレですね~*^^*プフフv
オイシかったです*>q<*((いろんな意味で←
ごちそうさまでしたvvv
2011/10/09 06:56:17
藍流
感じ取ってもらえましたか、流石は副隊長殿!(何が?
最強、まさしく!
最初は単発ネタとして考えた『ぬこKAITOとマスター』だったんですが、私の兄さんはわんこっぽいと言われるなぁ……とふと思い、色々と捏ね回した結果このトリオでのパロネタになりましたw
ツンとしつつ本当は構ってほしいぬこゼロは割と元のままですが、わんこイチは幼児化したような←
ちびっこKAITOズに懐かれてご満悦の雁屋マスターでしたwww この雁屋はきっと禁煙したに違いないです(火傷とか誤飲とか危ないから)
美味しく楽しんでいただけて嬉しいです♪
お粗末さまでした☆
2011/10/09 10:11:16
sunny_m
ご意見・ご感想
なんか可愛い生き物が来てる~!!!
和みました!というかにやけが止まりませんww
イチ君をもふもふして、ゼロ君を撫でたい衝動に駆られています!
可愛い!!
我が家の愛犬、朝起きたらKAITO仕様になっていないかしら…?
は~ごちそうさまでした!
2011/10/08 22:24:13
藍流
和んでもらえましたか?!
私だけの俺得にならなくて良かったw
もふもふして撫でくり回したいですよねww
我が家の愛猫も、朝起きたらKAITO仕様になっていないかしら……。
うちのにゃんこ雌だけどなwww
お粗末様でした?!
2011/10/09 00:38:45