今日も、パソコンのメモ帳を開いて想いを綴る。
1つ年上のあの人に向けて。
さて、今日は何を書こうかなと迷うのは一瞬。次の瞬間にはキーボードを打つ手が止まらない。
これが、溢れる想いってやつかな?
「・・・『君を 何かに 例えてみる』」
そう口に出しながら打つ。そうすると、言葉の1つ1つに意味がちゃんと宿るようで、なんとなく嬉しくなる。
私は、おぼろげな君の姿を思い浮かべる。
少し茶色の髪に、くりくりな目。それに君の可愛い笑顔。あと付け加えるなら眼鏡・・・かな?
「・・・・『動物に例えるなら・・・・君は犬みたい』」
と打ってひと呼吸置いて考えて、
「『でも 君は 猫みたい』・・・」
またひと呼吸おいて考え考え、
「『はたまた 狼にも似てる』・・・・・・・」
どんどん付け足す付け足す。
そんなことをしていると、ドアが開いて、
「何してるんですか?マスター」
カイトが部屋に入ってきた。
「ななな何でもないよ!!」
私は慌ててメモ帳を最小化にしてサイドバーに隠した。
カイトは私のことが好きだから、私が別に好きな人がいること知ったら、相当落ち込んじゃうんだろうな・・・。
でも、いっそのこと全部言っちゃえばすっきりするのかな?でも、傷つけちゃ元も子もないし・・・。
などと、くよくよ悩んでいるとカイトは、
「それ」
そう言って最小化されてサイドバーに収められたメモ帳を指差し、
「何書いてたんですか?」
と、極めて優しい声音で私に聞いた。
「・・・んー、と」
私は言おうかどうしようか迷ったけど、
「しょうがないねぇ・・・・誰にも言わないよね???」
「はい、言う意味がないですからね。最もマスターが自分から流しちゃえばそれはなにか意図があるものですしねぇ」
・・・。
なんか、意味深だけど、まぁいっか。どうせ誰とも会話しないと思うし。
「ほふぇ・・・。・・・どうりで最近マスターが僕と寝ようとしないわけですね、なるほど」
話を聞き終わってのカイトの第1声。・・・ちょ、いきなりそんな発言しちゃダメだよ。私お嫁に行けなくなr・・・というツッコミは、もういいとして。
「でも・・・そうですか。僕って年下のそいつに負けたんですね」
「ん?カイトって何歳?」
ふと気になって聞く。
「精神年齢は・・・そうですね、65歳と言ったところでしょうか」
「あははははっ!大人すぎ!!」
それに、真面目な表情でそれを言うのもどうかと思う。
「それで、メモ帳に書いてたんですねぇ・・・納得です」
「・・・カイト、怒ってない・・・?」
「へ?何がです?」
「その・・・カイトじゃなくて、その人と将来・・・寝ること」
「・・・・ええ?」
「・・・・え・・・?」
その時、やっと分かった。自分が何を言ったのかを。
「・・・あっ!?えーと、ご、ごめん。寝るじゃなくて・・・付き合う、だ!」
我ながら言い間違いをするとは情けない・・・。
「・・・・そうですよね!聞き間違いでした、あははは!!」
カイトも決死のフォローをしてくれる。・・・でも、元はといえば、カイトが変なこと言うからなんですけど・・・。
「・・・はぁ」
私はため息をついたあと、気を取り直してサイドバーに隠されたメモ帳をクリックして再び画面に表示させる。
「・・・その人って、犬と猫と狼に似てるんですか。ずいぶん、すごい人なんですねぇ」
カイトが妙な感心をしながら画面をのぞきこむ。私は頷いて、
「そうだよ」
「・・・・・・・」
なぜか黙りこくるカイト。
「・・・」
私はそんなカイトをスルーして、また文字を打っていく。
「・・・んーと『しっかり者で』えーと『冷静で』んー・・・『勘も鋭い君』で・・・『だけど』・・・」
そこまで打って、カイトを見る。
「ね、カイト」
「なんですか・・・?」
心なしか元気がないようなカイト。気のせいかな。
「・・・あのさ、ここからどう書いたらいいと思う?」
「・・・そうですね」
カイトは、しばし考える素振りをしてから、
「さっきの話をを聞いた辺り、どうも恋愛経験がなさそうなので・・・もし僕だったら、こう書きます。『それと同じくらい 臆病で 気が弱い』」
「・・・・なるほどね」
私は、その言葉を打つ。・・・意外と詩的センスいいな。ちょっとびっくり。
「『なんてこと言ったら 君は 気が強いふりをするのかな?』」
「・・・分かりません」
「いや、別にカイトに言ってないから」
ボケるカイトに突っ込む私。・・・漫才してどうするよ。
「ああ、1つ参考なまでに言っておきますけど・・・・・・・・」
カイトは今度はボケずに言った。
「恋に、臆病ってことはですね・・・・・」
「・・・・・え、あ、ほんとだ・・・」
私はカイトの言葉を聞いて納得してしまった。
そんな考え方って、あるんだね。
「ありがと、カイト」
「今なら、僕に寝返ってもいいんですよ」
「・・・まぁ、それもアリかな」
「ほぇ、それじゃあマスターは・・・」
「あはは。・・・まだ分かんないよ。まだ告白も言葉さえ交わしてないんだもん。せいぜい、和歌・・・じゃない、詩だね。詩のやり取りみたいなことはあるかな・・・・?」
「・・・なんか、新古今和歌集に出てくるあの2人みたいですね」
「あ、それ国語の先生も言ってた。あと友達も」
「でしょうね」
そう言って笑うカイト。
「・・・・・・・・・・」
私はしばし、その笑顔に見とれてしまった。
「ん、なにか僕の顔に付いてますか?」
「えっ・・・ううん」
少し慌ててしまう。なんか、気まずい。
「だいぶ進んできましたね」
・・・ある意味空気を読まないカイトはそう呟いた。
「・・・そうだねぇ。結構進んできたし、今回のところはここまでしようか」
「そうですね、お疲れ様です。」
「別に、このくらいなんともないよ」
これ以上の量を打ったことがある私にとってはこんなのなんともない。
だけど、さすがに疲れたような気がする。
やっぱりいきなり書いちゃだめだよね。
私は心の中でそう呟いて、メモ帳を閉じた。
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