-WELCOME-
「ようこそいらっしゃいました」
門の前で赤黒い可笑しな色の兎が頭を下げた。
「…地獄の入り口へ」
そういった途端、兎の皮がはがれて中にいた“何か”がうごめいてきぐるみを破くと、襲い掛かってくるのだ。恐ろしく歪な何かが。黒くうねうねと動くそれはもはや生き物ではなく、何かに操られた傀儡としか言いようがなかった。
…と、言う夢を見た。
えらく悪趣味な夢だ。朝っぱらから気味の悪いものを見たのは、以外にもリンのほうで、なんとなくレンから離れないようにしているのが伺えるほど、おびえたようにしていた。
「大丈夫か?リン。学校、休めば?」
「ならレンも休んで!レンは学校、行くんでしょ?一緒にいてくれなきゃヤダ!」
「…どうした?変なモンでも食ったか?」
少し気味悪そうに抱きついてきたリンを引き離すと、レンはそういった。無論、そんなわけではなく、リンはレンのその態度にいささか不満を覚え、レンの足を思い切り踏みつけてやった。
「いっ…たぁ!!何すんだよ!」
「私だって悩むもん!ひどい」
半泣きになったリンの顔を見てレンは少し慌てたように、弁明するかと思えばどうしたらいいのか分からずおろおろと困っているだけだった。
「と、兎に角、学校に行こう。な?」
「……うん」
仕方なくスクールバッグを持ち、学校へと向かう足取りはいつもよりずっとずっと重かった。
「リン!ねえ、ちょっと!」
学校に着いたリンを、聞き覚えのある声が引きとめた。
「あ、テト先輩。どうしたんですか?」
「ねえ、リン、やっと使い魔が使えるようになったんだって?それも悪魔!!見せてよ」
「ええ。…分かりましたよ。レン、ちょっと」
「ん?どうした?リン。…誰?」
「部活の先輩。テト先輩」
簡単なリンの紹介を聞いてレンは軽く頭を下げたが内心相手を睨みつけていたことだけは確かだった。レンを見るなりテトの目が鋭く、かつ怪しく光った。
ビクッと身震いをして、リンの後ろに隠れて後ろからリンの肩に両手を置き、テトから身を守ろうとした。
「どうしたの?レン。ところで、どうしたんですか?」
「しらないの?悪魔ってフォルムチェンジみたいなのが出来るのよ。ね!!」
隠れていたレンを引きずり出し、勝手に同意を求めてくるテトに軽い恐怖心を覚えながら、レンは軽くうなずいた。
「へえ!みせて!」
「…えー」
「いいからやってよ」
「しかたねぇなぁ」
面倒くさそうに小さく呪文を呟くレンの足元に紫色の魔方陣が形成され、したから吹く風にレンの前髪が上へと靡(なび)き、淡い光がレンを包んだ。
光が消えたところにいたのは、かわいらしい耳と尻尾を生やして恥ずかしそうに経っているレンだった。
「きゃあ、可愛い!!」
「本当!猫?ね、後二つできるはずでしょ!」
「…狐。出来るから、離れて」
もう一度、呪文を唱えると紫色の魔方陣が怪しく朱にかわり、さっきより強い風が吹き、レンの整えられた髪を解いてぼさぼさにしてしまった。
また、光がレンを包み込んだかと思えばその中からは、大きな薄く黄金色がかった、狐がこちらをみていた。目はエメラルドグリーンで、尾が九本もあって耳や足もそうだが、何となく炎のように揺らめいていた。
「…レン?」
『ん?』
二重に重なったような、不思議な声が返ってきた。
また、短い呪文を唱え、レンの周りに尾の炎が渦巻いたかと思えばその炎はじきに小さくなり、小さな子狐がそこに立っていた。勿論、四本足で、だ。しかしエメラルドグリーンの目や九本の尾、体中のゆらめく炎と黄金色の毛並みは変わらず美しかった。
「可愛い!!」
「本当だ!!ちょ、こっち来て!!」
明らかにテトのほうには寄りたくないのだが、リンがそう促すので仕方なく、仕方なくだ。断じて自らではない。仕方なく、テトのほうへ歩いて進み出ると、
「可愛いなぁ!!リン、このこ、くれないか!?」
「だめです!!レン、こっちおいで!!」
『あのなぁ…。俺はぬいぐるみじゃない!!』
少しイラついたのか、小さな狐のレンの表情がピクンと動いて尾の炎が燃え広がったかと思うと、レンを包み込み、結局はもとの姿に戻してしまった。
「あー。残念、可愛かったのに」
「うるさい。結構疲れるんだぞ。あー肩こる」
「じじくさーい」
「うるさい」
二人のやり取りを見ていたテトはすこし笑った。
「…」
あまり、レンの好きなタイプではなく、どちらか問えば嫌いと即答できるくらい、絵に書いたように嫌いなのだ。
「あ、授業、始まっちゃう。じゃね、リン」
そういって立ち上がったテトの後ろに、大きな黒い影が立った。影に気がつくとテトは一瞬ビクッと反応して、恐る恐る振り向いて影の正体を確認しようとした。
「テートー?」
「る、ルコ…。ごめん、今行くから!!」
「だめだ!!」
平謝りの状態のテトを抱え上げ、お姫様抱っこの状態にすると二人に一礼し、ルコは一つだけ謝罪の言葉をのべた。
「テトが、申し訳ない。…では。授業に遅れるので、このへんで」
そういってルコはまさに俊足で廊下を突っ切り、階段を駆け上がっていった。
「行くぞ」
「ねえ、お姫様抱っこ」
「遅れるぞ」
「…」
鏡の悪魔Ⅱ 2
毎日これを書くのが酷になってきています。
辛いです。
でも楽しいです。
イラストも投稿したいです。
コメントしてくださる方が欲しいです。
帯人がほしいです。アカイトがほしいです。
メイトもミクオもほしいです。
追記 7/16
レンさん、コメントアリガトウございます!!
とてもうれしいです><
今まで見てくれている人がいるのかどうかも分からずに投稿していたので…見てくれる人がいたということで、何だかやる気が沸いてきました!!
毎日ワードで三ページ以上書いているんですが、もっとかけちゃいそうです!!
何か要望なんかあったらもうどんどん書いてやってください!!
コメント2
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ご意見・ご感想
リオン
ご意見・ご感想
どうも、Ж周Ж さん。
うわぁ★たった一文字の違いで★
日本でなきゃできないことですね。東洋の神秘です。
では、頑張って投稿続けますね!
2009/10/14 21:12:16
レン
ご意見・ご感想
いつも、この小説見てます!!すごい、読んでて楽しいです。毎日見るの楽しみにしています。これからも、がんばってください!!応援してます!!
2009/07/15 22:01:51