「着いた・・・・」
ここが、遊郭・・・・
煌びやかな建物でも、やはりどこか気味悪くて、寂しい感じがする。
「嫌だわ・・・・気持ち悪い・・・・・」
さすがの芽衣子も俺の後ろに隠れて震えていた。
「参りましょう」
芽衣子とは裏腹に、美紅はどんどん建物の中に入っていく。
建物の中に早く入りたい、という心情まで読み取れるくらい堂々としている。
ギシ、ギシ、ギシ・・・・
広い廊下を歩くと、床の軋む音に混じって
「・・・・・・」
「・・・・!!」
女の喘ぎが聞こえた。
ここは遊郭。
男の性欲と、それに抵抗すらできない娼婦の身体が、喘ぎが交じり合う所。
「き、気持ち悪い・・・・」
「芽衣子!」
耐え切れなくなったのか、芽衣子は床へ崩れ落ちた。
「もう少しだ、もう少し、頑張れ・・・・」
「うん・・・・」
なんとか芽衣子は立ち上がり、俺の腕につかまりながらよろよろ歩き始めた。
「・・・・ッ!」
「・・・・!!」
聞き覚えのある声が、目の前のふすまから聞こえてきた。
「楽歩・・・・?」
「え?」
楽歩の声に交じって女の声と、刀がぶつかり合う音が聞こえた。
「・・・・開けますよ」
「ああ・・・・」
スッ

美紅がふすまを開けると、楽歩が赤く染まって倒れていた。
その横に、赤く染まった麻奈と百合も倒れていた。
「こんなものか、心中姫とやらの家臣は」
血を吐き捨て、刀の先を静かに舐める、桃色の髪をしたくの一。
「凛!!」
ふすまに寄りかかるように、目隠しをされ、口封じをされた凛が寝かされていた。
女は、俺達の気配に気づいたのか、ゆっくりと振り向いた。
「これはこれは・・・・」
女はにやりと笑った。
「あの横暴な大名の長男、海斗殿ではございませんか」
横暴・・・・?
「その話は気に入らぬぞ、瑠華」
美紅が低い声になって、瑠華という女を睨んだ。
「おや、あの男に捨てられた・・・・・美紅様まで。いい男を見つけになられたのですか?ああ、海斗様には婚約者の芽衣子様がおられるというのに」
「・・・・!!」
芽衣子は瑠華の目つきと、血を見たショックからか倒れてしまった。
「芽衣子!!」
「芽衣子様!」
「まぁ・・・か弱き方ですこと。まるで・・・・男と心中した誰かさんのようですわねぇ、海斗様?」
「瑠華!やめろと言っておろう!早う凛様を返さぬか!!」
美紅はふところから短刀を取り出し、瑠華に突き立てた。
「そんな短刀で私に対抗してくるとは!いいぞ、かかって参れ!」
瑠華はあざ笑いながら、刀を跳ね返した。
「お前・・・・!!」
美紅は理性を失ったのか、我を忘れて無我夢中に刀を振り回した。
「甘い、甘いぞ美紅よ!お前はまた・・・・また私に負ける気か!知能も体力も無い、愚かな貧乏娘め!」
「うるさい、うるさい!!」
また・・・・?負ける?
男と心中した?
そのことをなぜ俺に聞く?
「騒がしいな・・・・静かにしてくれ・・・・」