UV-WARS
第一部「重音テト」
第一章「耳のあるロボットの歌」
その9「コクピットvs砂嵐」
コクピットにいる全員が凄まじい重力に晒された。
一気に自分の体重が百倍になったのと同じ感覚だった。
指一本動かすことが不可能だった。まるで、指が釘で打ち付けられたようだった。
不意に加速が止んだ。
「目標地点まで、あと30秒」
「サラ、パラシュートの用意だ」
「了解」
コクピットを満たしていたサラの触手が溶けるように消えていった。
全員、自分の体に異常がないかチェックを始めた。
「あれがボーヤのGチューブという技かい?」
サラがドアの境目にビニールテープのようなものを貼り付けながら言った。
「そうだ。特殊なチューブ状のバリアを形成して内部の物体に特定方向の重力をかける」
「磁石を使わないレールガン」
「大掛かりな空気鉄砲」
「だから、テト! おまえが言うとレベルが下がるから止めろ」
ユフ、サラ、テイの顔が綻んだ。
モモは緩みかけた口元を引き締めた。
「目標地点まであと10秒。現在、高度4000」
「サラ、パラシュート、展開」
「了解!」
サラは勢いよく扉を蹴破った。
扉が落下していき、室内の気圧と温度が一気に下がった。室内の空気とともに、赤い布がコクピットの外に広がった。
ピンと張られたそれはまさしくパラシュートだった。
ガクンとコクピットが大きく揺れ、ブランコのようにゆっくりと振れだした。
「目標地点まであと5秒。高度2000」
「モモ、下はどうなってる?」
「砂漠です」
「目標は?」
「砂嵐のため、超音波測定は不能。光学測定でも、はっきりしませんが大きな岩のようです」
「Vのバリア発生装置は岩の形だったな」
テトの指摘に、小隊長の片方の眉がぴくっと動いた。
「いえ、Vの反応はありません。現在、高度800。あと2秒」
「全員、降下用意。飛び降りるぞ」
「ユフとお嬢ちゃん」
サラはテイを指差した。
「わたしに掴まりな」
それを見て、小隊長はテトとモモを促した。
「テト、モモ、先に行け」
促されて、テトとモモが飛び降りた。
小隊長は振り向いてテイの肩にポンと手を置いた。
その時見せた笑顔をユフとサラは珍しいと感じた。
「テイ、ありがとう。おまえがいなかったら、ここまで来られなかった」
テイは少しびっくりした表情から、はにかんだ笑顔になった。
「いいえ、すべて、ウタ小隊長の指示のおかげです」
小隊長は視線をサラに送った。
「サラ、格納庫のおにぎりのコードは、443だよな?」
一瞬、詰まったサラはチラッとユフを見てから答えた。
「ああ、そうだけど、今さら?」
「あともう1つくらい食べたかったな、と思って…」
「高度500です」
小隊長は踵を返すと、飛び降りた。
続いて、サラに抱えられてユフとテイが、飛び出した。
飛び降りた荒野は一面砂に覆われた見たことのない世界だった。
吹き荒れる風が砂のカーテンを捲り上げ視界を遮った。
唯一、識別信号だけがお互いを確認する手段だった。
「全員、いるな?」
その時、サラとテイの反応が消えた。
「ユフ、サラとテイは?」
「わかりません」
砂嵐の中でユフは辺りを見渡したが、なにかが見えるはずもなかった。
テイは不敵な笑みを浮かべていた。
「見えるわけないでしょ。ここはアタシの空間なんだから」
サラはそのテイと対峙していた。
「お嬢ちゃん、本気かい?」
「もちろん」
テイは不敵な笑みを浮かべた。
UV-WARS・テト編#009「コクピットvs砂嵐」
構想だけは壮大な小説(もどき)の投稿を開始しました。
シリーズ名を『UV-WARS』と言います。
これは、「重音テト」の物語。
他に、「初音ミク」「紫苑ヨワ」「歌幡メイジ」の物語があります。
最近、「ボカロP」の物語も書き始めました。
年末年始は何かと忙しいので、先に投稿してみました。
皆さま、良いお年をお迎えください。
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想