「…ん?」
靴箱の中に、何かが入っている。グミヤは中を探って、それを取り出した。どうやら手紙のようだ。
これは、あれだ。所謂――
「ラブレターだ」
隣からレンが言った。
それは薄桃色の封筒で、淡いブルーのペンで丸い文字が書かれていて、いかにも可愛らしい手紙だった。
まず盛り上がったのはリンだった。
「ヤバい! わ、すごい可愛い! うわぁぁああっ」
ぴょんぴょん跳ねながら、封筒を陽に透かしてみたり、匂いをかいでみたりして、またはしゃぐ。
「わぁ、本当。可愛いラブレターだね。これがグミヤ君の靴箱に?」
「ああ、うん」
少しボーっとしながら、グミヤが答えた。
一方、苛立っているのはグミである。
「何、ラブレター貰ったくらいで、はしゃいでんの? バッカみたい!」
とげとげしいオーラを放ちながら、今にも目から光線でも発しそうな勢いでグミヤを睨みつけている。
「まーまー、落ち着けって。仕方ないだろ、貰ってうれしいモンはさ…」
フォローに入ったレンに、リンが言う。
「レンももらったら嬉しいんだ?」
はっとして、レンはリンを見ると、わなわなと震えて、
「いや、俺は…そんな…その…いや…」
「馬鹿、揺らぐな」
動揺しまくりのレンの頭をたたいて、リントが代わりにフォローに入った。
「じゃあ、リントくんは…、やっぱり嬉しいよね。可愛いラブレターとか貰ったら…」
「いや全く。」
リントは即答した。
あの裏切りもの共め…。
舌打ちをしながら、グミヤは廊下を歩いていた。放課後、レンは塾、リントとレンカは夕飯の準備、リンは見たいテレビがあるとかで、六人は解散していた。
グミヤはポケットを探って、手紙を出した。少し甘い香りがする。手紙の内容は、大体、予想通りだった。
「すきです。付き合ってください。放課後、校舎裏で待ってます」
そんな感じだった。
(返事するのとか、めんど…)
ささっと終わらせて、かえってゲームでもしよう。
「…げ」
目の前を見て、グミヤは露骨に嫌な顔をした。こちらに気付いて、相手もいやな顔をした。お互いに立ち止まって、グミヤとグミは対峙した。
「何やってんだよ、お前」
「グミヤに答えること無いもん」
「そうかよ。じゃあな、俺は今からこのラブレターくれた相手に会いに行くから」
グミヤは歩き出した。まだ立ち止まったままのグミの隣を素通りしていく。
「…いいんじゃない。その子、学校でも可愛いっていわれてるし、あたしと違って女の子らしいし!」
「あー、そうだな」
グミは振り返った。グミヤはまた歩き始めていた。
「あ…の、…」
グミは追いかけようとして、やめた。足が動かなくなっていた。
校舎裏は漫画でよく見る体育館裏のイメージで、まず人目にはつかない。
そこへグミヤがやってくると、ラブレターの送り主は既にそこにいて、グミヤの姿を認めると、緊張した面持ちで軽く会釈した。
「あの…、考えてもらえましたか…?」
確かに、可愛らしくて、女の子らしいかんじである。
グミヤは少し遠慮がちに言った。
「ごめん」
少女はひどく傷ついた表情をしている。
「好きな奴がいて…。だから…」
こういうとき、どうやって相手をいたわっていいのか、やんわり断る方法とか、全然知らないから、すごく胸の辺りが痛くなる。なんか、相手を虐めてる気分。
はー、と息を吐き出すと、手が少し暖かくなった。厚手のマフラーが嬉しい。
ふと顔をあげると、校門に寄りかかって、携帯をいじっている奴がいる。
「…何やってんだ、お前」
顔をあげて、グミは少し驚いたようにグミヤを見て、それから無理矢理平静を装うと、携帯をしまって、
「別に」
といって、校門を出たグミヤの隣を歩き出した。
しばらく二人の間に間があって、
「…告白、受けたの?」
グミが口を開いた。
「断ったけど」
さらっとグミヤが答えると、グミは立ち止まって、
「何で!? あんな可愛い子だよ? それに、ずっとぼーっとしてさ、嬉しそうだったじゃん!」
「はぁー?」
わざとらしく声を裏返してウザさを数十倍まで膨らませて、グミヤは振り返りながら聞き返した。グミは少し不満そうである。
「馬鹿、ボーっとしてたのは、どう断ろうか考えてた所為。大体、どんなに可愛くても、俺、好きな奴いるし」
いいながら、グミヤはてを差し出した。グミはぱっとその手にくっついてきて、手をつなぐと、二人はまた歩き始めた。
「あー。お前の手、ほんと温い。手袋要らず」
「あたしカイロじゃないんだけど」
不満げに言って、グミはくすりと笑った。
「何笑ってんだよ」
「別に? ホントは振られたんじゃないかと思ったの」
「何で告られた俺がふられんだよ」
「グミヤバカだから在りあえる!」
「ねぇよ!」
ぎゃあぎゃあ言い合いながら帰る帰り道は、なんだか昨日より暖かい。
「…ねえ、グミヤ」
「ん?」
「好きな人ってさ、うちのクラス?」
「…うん」
「可愛い系? キレイ系?」
「…お馬鹿系」
ここまで言ってもきづかねぇか。
ホント馬鹿。
コメント1
関連動画0
オススメ作品
*3/27 名古屋ボカストにて頒布する小説合同誌のサンプルです
*前のバージョン(ver.) クリックで続きます
1. 陽葵ちず 幸せだけが在る夜に
2.ゆるりー 君に捧ぐワンシーンを
3.茶猫 秘密のおやつは蜜の味
4.すぅ スイ...【カイメイ中心合同誌】36枚目の楽譜に階名を【サンプル】
ayumin
インビジブル BPM=192
とんでもない現象 どうやら透明人間になりました
万々歳は飲み込んで
ああでもないこうでもない原因推測をぶちまけて
一つ覚えで悪かったね
まあしょうがない しょうがない 防衛本能はシタタカに
煙たい倫理は置いといて
あんなこと そんなこと煩悩妄執もハツラツと
聞きた...インビジブル_歌詞
kemu
chocolate box
作詞:dezzy(一億円P)
作曲:dezzy(一億円P)
R
なんかいつも眠そうだし
なんかいつもつまんなそうだし
なんかいつもヤバそうだし
なんかいつもスマホいじってるし
ホントはテンション高いのに
アタシといると超低いし...【歌詞】chocolate box
dezzy(一億円P)
デパーチャー
作詞・作曲・編曲:海霧
今でも好きかと言われると
それはもう分からない
同じ人を7年間好きでい続けた
他に好きな人はできなかった
恋人を作るチャンスは
たぶんあったけれど
君じゃなきゃ嫌だったんだ
眩しい笑顔を独占したいと...デパーチャー / 海霧 feat. 初音ミク
海霧
おはよう!モーニン!
全ての星が輝く夜が始まった!
ここは入り口 独りが集まる遊園地
朝まで遊ぼう ここでは皆が友達さ
さあ行こう! ネバーランドが終わるまで
案内人のオモチャの兵隊 トテチテ歩けば
音楽隊 灯りの上で奏でる星とオーロラのミュージック
大人も子供も皆が楽しめる
ほら、おばあさんもジェ...☆ ネバーランドが終わるまで
那薇
(イントロ)
世界はずんだ餅でできている
世界はずんだ餅でできている
大事なことだから2回言った
There are a lot of ずんだ餅. (ずんだ!)
(イントロ2)
世界はずんだ餅でできている
世界はずんだ餅でできている
大事なことだから2回言った
There are a lot of ...世界はずんだ餅でできている
掙の琴
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想
アストリア@生きてるよ
ご意見・ご感想
至極簡単に言うとあの6人はリア充の集まりですね!!←
リント君……歪みねぇ……!!ww
レンフォローしようとしたら自分が揺らいでしまうというww萌えましたww
てかグミヤモテるのか……!たまたまその女の子が好きになっただけか……?
どちらにせよおいしかったぁ……(((((
てか最後のセリフ……グミヤ君、あんたってやつは……!!
これだから2次元のリア……じゃないけど充は素晴らしく萌えるんだっ……!!ww
グミ「好きな人ってさぁ、○○ちゃんでしょ?ドジっ子で可愛いし!!」
グミヤ「なワケねぇだろ。ドジと馬鹿は違うぞ?………バーカ」
グミ「むむ……まさか、あの子か……?」
グミヤ「……ハァ……全く、お前は……」
グミヤ君の憂鬱。ww
続き頑張ってくださいーっ!!
ミヤグミ最高!リトレカ超最高!!リンレン言葉にならないくらい最高!!です!!!←
2011/12/18 02:22:52
リオン
そうですね、リア充と可愛いの集合体だと思ってくれれば(笑
リントくんは揺らぎません。
リントくんが言っているのは一般論で、リント君自身はレンカちゃん以外から貰っても嬉しくないんです。
グミヤはちょっとモテますね。裏で。ラブレターとか貰ったのは初めてですね。
美味しかったですか! 妄想垂れ流しでしたが…。ありがとうございます^^
グミヤ君は苦労人です。だからさりげなくアピールするけど、気付いてもらえません。
限りなく恋人に近い幼馴染の関係すごく美味しいです(笑
グミ「アレ以来グミヤがやたら馬鹿を連呼するんだけど…」
グミヤ「いや、だから…」
四人「超不憫!!」
皆応援してるよグミヤ(笑
次もがんばりますね!
結論「六人マジ天使。」ですねわかります(殴
2011/12/18 09:59:15