-序-
さあ、物語は今からずっとずっと昔。貴族の服がいっそう華やかになったころ。
悲しくも哀れ、そして狂おしい一生をたどった、美しい双子の物語。
彼らは望まれずに祝福の光を浴び、生まれてきました。何も知らぬ民衆からは喜ばれ、両親には望まれぬことなった、過ちを犯した少女と過ちを隠そうとする少年が主人公です…。
とある王国。
国民のためを思い心優しい国王と、見目麗しくとても国民を愛する王妃様の子供ができたという国を挙げる一大ニュースは、いつの間にか街から町へ、人から人へと伝わっていくのは明らかでした。協会の黄金の鐘が赤子の誕生を祝福しているように、大きく響く音を鳴らし、午後三時を告げています。
しかし、そのことで困ったのは王宮の大臣たちでした。
「どうする、このようなことはいくら調べても、前代未聞だ」
「二人も世継ぎがいるなどというのは、国民の反感を買いかねない」
「かといって、どちらかを処分したりしたら、我々の首が飛ぶ」
この国の周りには、大きな三つの国があります。そのうちの一つ、「紫(し)ノ国(くに)」とは同盟を結んでおり、どちらかが応援を求めれば戦争にだって加担するほどの中でした。
一つの国、「緑(りょく)ノ国」はとても栄えており、この「黄(おう)ノ国」ですらもかなわないほどの食物や富が豊富な土地です。緑ノ国の大臣たちは、いつか黄ノ国をわが国の領土にしてやろう、と目論んでおり、黄ノ国の大臣たちはそのことに気がついていました。
そしてもう一つは「青(せい)ノ国」。これは同盟を結んでいるわけでもなく、敵対しているわけでもない、微妙な関係にある国でした。下手をすれば敵に回しかねませんが、うまくやれば黄ノ国と同盟を結ばせることも可能、と大臣たちは踏んでいました。
ところで、大臣たちがなぜ悩んでいるのか、気がついた方も多いのではないでしょうか?
この国では、王家の血筋であり、かつ、第一子が王位を継ぐことが伝統となっていました。
しかし、今回は特別でした。生まれたのが、双子だったのです。
大臣たちは生まれたのが双子であることはどうにか隠していましたが、このことがばれるのも時間の問題というもの。
仕方なく、弟の「レン」を王位継承者、姉の「リン」を大臣の一人、「ルカ」の元で育てることときめ、王や王妃に説明をしました。こういう場合は五億年以上前の歴史書に書かれていることでも参考にすることにし、過去にこの国は男系優位の国だったというのですから、こうなったのも無理はありません。
王妃様は仕方が無いといいながらも、
「二人はどちらもれっきとした私の子です。それに兄弟なのですから、五歳まではこの王宮で二人、育ててください」
大臣たちは渋々承諾し、世継ぎの双子はしばらくの間は王宮で育つこととなります…。
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