(こちらは炉心融解を元に書いた二次元創作小説です。不快に思われる方の閲覧はご遠慮願います)
声の枯れたボーカロイドの行く末を
その末期を君は知っているか
そこがどこなのか君は知っているか
「アレ、そういえばリンは」
「ん?そういや見かけないなぁ最近」
にぎわいを見せていた録音室でただ一人レンだけがマイクを置いて首を傾げた。
軽い足音と共にレンは屋上への階段を上がっていく。
ぎしりと軋む鉄を打ちつけただけみたいな屋上の柵に寄りかかって彼女はうたた寝をしていた。気づいたら眠ってしまったのだろう彼女の指には未だ僅かに燃える煙草が挟まれている。
「リン!」
澄んだ声で眠たげな瞳を開けた彼女は階下のテレビの音に耳をすませた
「今何時…?」
「え、時間?時間はわかんないけどもう夕方。最近マスター帰ってくるの遅いから」
「そっか」
隣の鉄柵に寄りかかった二人の影は長く。
しばらく二人とも口を開かなかった。
「ってこんな場所危険!」
勢いよく背中を離して気づいたように今更な事を叫ぶレン
その声に自分が何か返さなきゃいけないのが嫌だ。
比較してしまうから。言葉少なに「うん」とだけ応えてそのまま動こうとしないリンにレンは唇を噛んだ。
「また良くないこと考えてる」
流石自分の分身だけあって観察力が鋭いな、と長い煙を吐き出しながら思う。
「煙草やめなよ」
「どうして?」
「ちゃんとしてれば声だって治るんだ」
鋭くたばこの先を睨むレンに微笑みかける
「薬みたいなものだから」
「中毒になってるだろ!」
「なぁリ…「レン!始めるよー」」
中途半端に口を開いたまま背後でミクがレンを仕事に呼ぶ。
「また、来るから」
そちらに一瞥をくれてからレンは悔しそうに俯いたまま言った。
リンは目だけでレンを見送る。
歌うことのできないリンは一人屋上でぼんやりするくらいにしか時間を潰す術がない
彼女はボーカロイドだから
歌えないボーカロイド
街中にポツリと一つ灯りがついて
あとは伝染するみたいに街は色づいた
春の風に包まれながらリンは目を閉じる
階下からは音楽が流れてメイコとカイトの合唱が始まった。
それを合図にしたようにライターと新しい煙草を出す。
カチッと音がするけどそれだけで火は点かなかった。
「あーあ」
『煙草やめなよ』
言ったレンの言葉を思い出す。
階下ではレンの声が合唱に混じったのだろう三人分の声が木霊してた
気持ちよさそう…
煙草を止めたら、声が戻るんだろうか
すっと手を柵の向こうまで伸ばして
ライターを落とす
重力に従ってそれは真っ直ぐに落ちて
そして
そして
真白に溶けて消えた
小さく階段の軋む音がした。
目を開けると夜になったはずなのにまだ夕方みたいに空は赤く、さっきまで聞こえていた音楽は聞こえない
ああ、夢か
ぼんやり納得しながら扉の開く音を聞いた
そこに現れたのは半ば予想していた人物。
リンは特に何の感慨もなくその人物を見つめる。
もう一人の自分を
レンではないもう一人の自分を
小さい自分を
リン自身を
ストン、と小さなリンはリンを押し倒す
「楽にしてあげるからね」
自分の声はこんなにも綺麗だったろうか
懐かしい感じがしながらその声を上に浴びた。その声はまさに絶頂期、作られて間もない生まれたての美しい声を階下で皆に披露していた時の
こうして忘れられる前の声
「ありがとう」
視界が逆転して今度は下から
壊れたような自分の声を聞いた
自分と小さい自分の境界線が保てなくて頭がガンガンする。
指に力をこめた
喉がしめられた
楽にしてあげたいと思った
楽にしてほしいと思った
泣きそうだ
息が…できない
苦しくて目が覚める。
はぁはぁ、と胸を抑えて無意識に手がライターに伸びたがポケットには何もなかった
だけど手に触れる布の感触はリアルで自分を現実に引き戻してくれた
今何時だろう…
レン…来なかったな。
そこまで考えて初めてこの場所の不自然さに気がついた。
音がしない
それに辺りに霧が立ち込めている。
「みんな…?」
誰もいない屋上。
一人座りこんでいたリンはハッとして鉄柵に走り寄る。
どこからが夢だったっけ
何を失敗したんだろう
…ライター
そうライターが下に落ちて…それで…
その一心で下を覗き込んだ
「な…い」
誰もいない世界
そこに一人だけいるのが罪深い気がして
リンは愕然とした
失敗したのだ
ライターの後を追ったのに
小さいリンは自分を殺せなかった
これが現実
皆がいなくて自分だけ存在する世界
そんな世界なら私はいなくても良いのに
自分が死ねばあの愛おしいざわめきは帰ってくるのだろうか
日に日に薄れていったあのざわめきを取り返せるのだろうか
自分がいなくて戻ってくるなら…
「ごめんねレン。あたしやっぱり煙草やめられないやー」
白い世界に飛び込んで探しにいこう。
小さな自分にはできなかったことを見つけた。
私が私を殺してこの世界を素晴らしいものに―――――
やがて霧は晴れて彼女の姿はどこにもなかった。
しばらくすれば階段を上がってくる音がする。
「あれ…何しに来たんだっけ…?」
少年は僅かに首を捻っただけだった。
コメント2
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ご意見・ご感想
灰音
ご意見・ご感想
すのりり様>
そ そんな…こんな意味不すぎる駄文を慕ってくださるなんて(←大慌て)
あわわ、ありがとうございます!凄く嬉しいですありがとうございます(感涙)
お暇な時にでもまた来てやってくださいね
本当にありがとうございました!!
2009/07/11 22:27:17
すのりり
ご意見・ご感想
神がかってます!
スモーカーリンちゃんが退廃的で素敵です!
勝手なんですがお慕いさせてください!www
2009/07/11 03:45:42