しんしんと降る雪。


鏡音レンは、新幹線のホームにいた。
地元に帰るために。


「・・・やっと来たか」
新幹線に乗る。
お正月に実家に帰ってのんびりしたい、という思いから仕事を溜めずに早く帰省することができた。
日付は12月26日。
レンの実家はそれなりに遠い所にあったが、それでも何とか27日の昼にはつくだろう。


レンには彼女がいる。
鏡音りん。地元の中学で知り合い、卒業して付き合ってから今日までずっと関係が続いている。
ただ、最近は連絡が途絶えている。会うのだって一年振りだ。
明日は彼女の誕生日。仕事を早めに終わらせてきたのもこのためだった。
地元に着いたら花束と共にプレゼントを贈ろうと、レンは心に決めていた。



新幹線から電車に乗り換え、その電車の終点駅から船に乗った所にレンの地元はある。
港町で、旬ものの時期になると競り市場では活気溢れた声が聞こえてくる。
レンも地元にいた頃は、お使いといえば魚市場というほど、よく来ていたものだ。


「おっ、レンじゃねえか。今年は帰ってくるの早いんだな」
レンが市場を通っているときに声を掛けたのはカイト。1つ上の先輩で、今は漁師をやっているらしい。
「カイト先輩。彼女は出来ましたか?」
「ケッ、会って早々それを言われるってことは、まだりんちゃんと続いてるんだな」
「もちろん」
「俺ももういい歳だしなあ、早く嫁さん貰わないと・・・あ、こんなこと話してる暇なかった。じゃあな、りんちゃんに宜しくな」
そういってカイトは市場の中へと入っていった。


市場を抜けた所の商店で黄色い花束を買い、実家へ向かう。
実家に荷物を置いたあとにりんの所へ向かうのだ。
「・・・レンかい?」
実家の庭で、雪かきをしている母と目が合った。
「・・・ただいま」
「レン!?おかえり!よー帰ってきたね!」
「父さんは?」
「まだ帰ってこーへんだわ。今日は何が食べたい?」
「とりあえず、オムライス」
オムライスは、レンの大好物だった。
レンは荷物を置き、そのままの格好でりんの家へと向かった。



山の上の神社、そこが彼女の実家だ。
町に1つしかない神社で、レンも毎年ここで初詣をしていたのに、りんには全く会わなかった。
レンの記憶が正しければ、りんは此処で巫女をしている。
とりあえず、レンはおみくじを買う客を装ってりんに会うことにした。いわゆるサプライズというものだ。


「あのー、おみくじ一枚下さい」
「分かりました。ではこの・・・」
受付にいた巫女は、くじの番号が入った筒を両手で持ちながら固まっている。目には涙が溜まっていた。
「れ、レン・・・?」
「うん、帰ってきたよ」
巫女の頬に雫が一粒流れ落ちた。


「連絡・・・くれれば港まで迎えに行ったのに・・・」
「いや、そこはサプライズとして」
神社の境内でレンとりんは今までのことを存分に話した。
途中でお互い泣きそうになりながら。



「そうだ・・・りん、誕生日おめでとう」
そう言いながらレンは、さっき買ってきた花束をりんに渡した。
「誕生日、覚えててくれたんだ・・・」
「当たり前だろ?そのために早く帰ってきたんだし」
「・・・レン、ありがとう」
りんにそう言われたレンは、少し頬を赤くした。
そして、今までにない真剣な目をしてこう言った。
「・・・りん、もう1つ、プレゼントを受け取ってくれる?」
「え?」
レンはコートのポケットに手を入れ、青色の小さな箱を出し・・・



「僕と、結婚してください」



・・・そう言いながら、りんに手渡した。

中身を確認し感極まったのか、りんの目から大粒の涙が溢れ出した。
「ここから離れることになるのは嫌かも知れないけど、僕はりんと一緒に人生を歩みたいんだ」
「・・・私も、レンと一緒に生きたい」
りんはそう言いながらレンに近づき、軽く口にキスをした。
「レンも誕生日なんだし、コレぐらいはしないと・・・」
「りん、プレゼントありがとう」
「こちらこそ、素敵なプレゼントありがとう。大好き!」
そしてもう一度キスをして、お互いに微笑みあった。


雪は、2人の声を消さぬようにと静かに降り積もっていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

雪【リンレン誕】

はい、こんにちわ。
密かに時間狙ってますが多分遅れるでしょう。
そしてリンちゃんが主役の作品はお蔵入りとなりました(
またいつか、機会があれば。

閲覧数:168

投稿日:2013/12/27 12:28:04

文字数:1,734文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • 雪りんご*イン率低下

    雪りんご*イン率低下

    ご意見・ご感想

    リア充結婚しろ!と叫んだ奴がここにいますww

    プロポーズに花束、ってやっぱり女性の憧れですよね
    誕生日プレゼントが結婚指輪というパターンも
    だから誕生日プレゼントが花束&結婚指輪だなんて、ロマンチックすぎて最高のプロポーズだと思います!

    しかもリンちゃんからの誕生日プレゼントがキスだなんて……どんだけロマンチックなんですか
    あなたがロマンチックの天才だったのですか

    2013/12/29 16:51:18

    • すぅ

      すぅ

      大声で叫んじゃってください!ww

      ですよねー!
      まあ定番ではありますがね、やっぱ夢見る女子の憧れですよね。
      しかも花束といっても、背中で隠せる程度のものを意識して書いてましたが・・・(汗

      やっぱキスは外せないです!という自己概念(
      雪に負けないほどの甘い空間を考えてたらこうなりました、というw
      ど、どこがですか・・・!?

      2013/12/29 20:04:09

  • しるる

    しるる

    その他

    帰省のあたり、よく気持ちわかるねww
    まるで、一人暮らししたことがあるみたいだよw

    恋愛にサプライズは重要
    ただ、リスクを伴うので、最終奥義だとおもう

    2013/12/28 12:12:40

    • すぅ

      すぅ

      そうですか?
      漫画やら小説やら妄想やらの情報(?)を頼りに書いたのですが・・・。

      確かにサプライズですれ違うこともありますもんね。
      次回から気をつけてサプライズイベントを使用したいです!

      2013/12/28 20:45:48

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