最近のマスターは、
「カイト、アイスちゃんと買ってきたからねーｗ」
「ありがとうございます、マスター」
とっても優しい。マスターは怒れば恐いけど、でもいつもは優しい。それはさておくとして、問題は・・・。
「マスター、１つ聞きたいことがあるんですけど」
「なあに？」
相変わらず笑顔が可愛いマスター。溶けてくる心をそのままに、僕は言った。
「・・・最近、襲ってないですけど」
「だって、眠いもん」
「それは分かりますけど、・・・僕に襲われるのは、いやなんですか？」
少し上目遣いになる。
「いやじゃーないよー・・・？」
「だったら今夜・・・」
「えー、でもなー」
マスターの目が泳ぐ。・・・ものすごく珍しい。
「あのね、これはカイトのためを思ってしてるの」
「全然僕のためになってないですよ」
「あはは、カイト、ツッコミ早くなったｗ」
「・・・話を逸らさないで下さい。何ですか、他に好きな人でもできたんですか」
「えーｗ　そんなの恥ずかしくて言えなーいｗｗ」
「あの人だったやつは結構話題にしてｔ「うるさーい！！」
僕の言葉を遮るマスター。
「いいの、もうあの人だったやつのことなんか興味ない」
「わーいわーい♪」
思わず喜ぶ僕。話がひと段落したところで、再びマスターが口を開く。
「だってさー、本気すぎてカイトにも言えなーいｗｗｗ」
「・・・誰ですか」
言いながら僕はマスターの肩に手を置く。
「教えてくれないと、・・・分かってますよね？　僕が何をするのか」
「・・・しょーがないなー。ま、いっか。えっとねー」
一息置いて、マスターは言葉を放った。
「“彼女”だよ」
「ええええっ！？？？」
僕は驚いて、１、２歩動いてしまった。ほんとにびっくりした。
「実は実在してたんだよ・・・私が住んでる世界にね」
「ん？　ということは、マスターも最初気づかなかったんですか？」
「そうだね。でも今は結構分かってるけど」
「へー」
「これ、案外分かってる人は分かると思うんだよなー。名前は色々あると思うんだけど」
「・・・僕と“彼女”って、面識あります？」
「・・・んー？　どうだろ・・・って、あああ！！！」
「？」
「あー・・・多分知ってるよ。何ってったって、“彼女”だからね」
「そうですか。だとしたら、どんな印象持ってくれてるんでしょうかね？」
「・・・いつか、聞いてみたいなぁ。っていうか、同居したい同居。何でもいいから、一緒にいたいな」
「・・・」
今、聞き捨てならない単語を聞いた気がする。しかも、２回も繰り返したし。
「マスター」
「ちなみにね、同い年なんだよ、私と“彼女”」
「・・・んっ？」
確かあの人だったやつは１つ年上・・・良かった、全然ちがう。良かった良かった、本当に良かったｗ
「しかも、話が盛り上がった女の子なんだよー」
「・・・」
僕の知らないところでマスターが“彼女”と話してもかも盛り上がったとか、・・・正直、ものすごーくうらやましい。
「マスター、襲っちゃだめですか？？」
「だから言ったじゃん。“彼女”がいるからって」
「で、でも、僕・・・」
「アイスで我慢してよー」
「できません。マスターはアイスよりも大好きなんです。そんなマスターが僕を見てくれないなんて・・・」
「見てるじゃんか、今」
確かにマスターは僕だけを見ている。でも・・・。
「心は、僕を見てません」
「・・・」
「少しくらいは僕のこと見てますけど」
「・・・カイト」
マスターはなぜか今にも笑い出しそうな表情で僕の名前を呼ぶ。
「もっともそうなことばっかり言わないで、強引にすればいいのに」
「だって、・・・いいんですか？」
少し困惑して、マスターを見る。
「だめ」
「・・・」
きっぱりあっさり首を横に振るマスターに、僕は無言にならざるを得ないのだった。