(ボーカロイドと未来とツチノコの歌7【2020年編パート2】の続きです)
【ボーカロイド年表】(※妄想です)
2020年代
・斎藤総理による『三大ロボット計画』開始。ボーカロイドの知名度が全国に広がる。
・『三次元ボーカロボ』専用巨大工場可動開始。一般家庭にも三次元ボーカロボが普及。
・第三次世界大戦勃発。日本は参戦を拒否。
・年末有名歌番組で紅組の取りをつとめる。
2030年代
・激化する戦争により、世界人口が激減。
・自動充電などの機能を兼ね備えた『三次元ボーカロボNEXT』発売。
・史上初、人間以外による『ノーへル平和賞』受賞。
・『ア〇ム』『ドラ〇もん』と共に、世界各国に普及。
・年末有名歌番組に『白組』『紅組』に加え『ボーカロイド組』ができる。
2040年代
・戦争が泥沼化。
・『ア〇ム』『ドラ〇もん』『初音ミク』に次いで、次々とロボットが開発される。
・各国の合意の上、世界ロボットガイドラインを制定。
・『初音ミク』世界中全ての言語に対応。世界中全ての国に普及する。
そして、月日は流れた・・・・・・・・・。
ボーカロイドと未来とツチノコの歌【2504年編】
〈ピー、おはようございます。今日は地球時間、西暦2504年11月15日です。人類の人数・・・残り1名〉
「おはよう。今日もいい天気だね」
僕はコーヒーをすすりながら、操縦席に腰掛けた。
「今は・・・木星の近くか・・・」
窓の外に広がる、無限で漆黒の宇宙。星々だけが美しく輝いている。
ここは、小型宇宙船のコックピットだ。そして、僕はどうやら人類最後の生き残りらしい。
どうして僕が最後の一人になってしまったのかは、あえて説明しない。どうして人類が地球を離れたのかも、どうして人類が滅びようとしているかも、説明は不要だろう。500年前の人間にだって、そう成り得る要因を挙げさせれば3つ以上は必ず答えられるだろう。
いろいろあって人類は地球を旅立ち、いろいろあって減っていき、最後に僕が残った。ただ、それだけの事だ。
「地球か・・・もう少しだな」
ん?僕がどうして、地球を目指しているかって?
何となくだ。
偶然にも人類最後の一人になってしまったんだから、人類誕生の地である地球で死ぬほうが、しっくりくるだろうと言う、ただそれだけの理由だ。
「さてと・・・・」
僕には趣味がある。それは音楽だ。
操縦席のモニターに音楽制作ソフトを起動する。あ、ちなみに船はオートパイロットなので、見ていなくても問題ない。
数億種類の音のかけらが収録されている、この音楽制作ソフトを使って作曲をしている。無意識のうちに「人類の生きた証を残したい」と心のどこかで思っているのかも知れない。
今、作っている曲は、よくおばあちゃんが歌ってくれた曲だ。ずいぶん古い曲のようで、音源が残っていないから記憶を頼りにまた一から作り直しているのだ。
とても前向きな曲で、おばあちゃんは歌い終わった後、いつも、僕にこう言ってくれた。
「どんなに辛くても、前向きに生きることを恐れちゃいけないよ」と。
僕はこの宇宙船で生まれた。そして、生まれてから一度もこの船を出たことがない。
僕が生まれてすぐにお母さんが死んでしまい、育ててくれたおばあちゃんも4年前の暮れに死んでしまい、僕はこの船で一人ぼっちになった。そして、半年ほど前にどこか遠くで僕以外の最後の人類が死んでしまい、僕はこの宇宙で一人ぼっちになった。
寂しく無いことはないが、地球にたどり着くまでは頑張ろうと思っている。
外を見れば、果てしなく広がる、いつもの宇宙。
いつもの操縦席
ああでもない、こうでもない、と並べる音符。
〈ピー、地球まであと24時間です〉
決まった時間に飲む、灰色の栄養ジュース。
夢の中のおばあちゃん。
〈ピー、地球まであと12時間です〉
ブラックホールの横を通り抜け、流星に手をふってみる。
出来た音楽を再生する。
『ツチノコが言ってたんだけどね~♪』
よし、できた!
地球に着くまでに完成してよかった。
僕は、愛用の赤いア〇ポッドに曲を転送する。
〈ピー、地球到着まで、後1時間〉
窓の外に地球が見えた。
生まれて初めて見た地球は、灰色の分厚い雲に覆われた星だった。
「やっぱり、死んでしまったのかなぁ・・・」
〈ピー、地球到着まであと5分〉
いよいよ、この時が来た。
ここが、母なる星、地球。
人類誕生の地であり、僕の旅のゴール。
この船は宇宙で作られたものだ。なので、着陸機能が付いていない。
だから僕はギリギリまで近づいて、惑星探査用に作られた簡易着陸ポッドで着陸する計画だ。
着陸ポッドに乗り込む。窓も無く、人一人がやっと入れるほどの狭さだ。
僕は耳にア〇ポッドを突っ込む。さっき作った曲が流れてくる。
〈ピー、目的地に到着しました〉
ガコンッという音と共に、重力がなくなる。落下を開始したようだ。
今、落下しているようだ。窓は無いが感覚で分かる。
もし、失敗したら死ぬかも知れないな。
まぁ、その時は、その時か・・・。今は向こうの方が人はいっぱい居るしな。
おばあちゃんにも会えるし。
ただ、最後の最後、その一瞬まで頑張ってみようと思う。どうなるかは分からないけれど。
そう、おばあちゃんが言ってたみたいに。
『ガンッ!』
激しい衝撃と共に、僕は気を失った。
『~♪』
「・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
僕は気がついた。
まだ、着陸ポッドの中のようだ。
「・・・・・生きてた?」
ア〇ポッドを確認してみる。
電池が切れている。
そんなに長い時間、眠っていたのか・・・・。
あれ?じゃあ、さっきの歌は?
耳を澄ましてみる。
『~♪』
確かに聞こえる!
外からだ!
僕はポッドの扉を開け、急いで外に出た。
外の光景を見た瞬間、僕は驚いて思わず固まってしまった。
あぁ、なんと美しい光景だろう。
僕が、文献などで見知っていた最後の地球とは、全く違う光景が目の前に広がっていた。
全ての生命が死滅したと言われていたのが嘘のようだ。
思わず僕は、宇宙服を脱ぎ捨てた。
そこは一面の草原だった。
緑が溢れ、
花が咲き、
風が通り抜け、
太陽がふりそそぎ、
自然の匂いがして、
空が青くて、
雲が白くて・・・・
全てのモノが崇高なシンフォニーを奏でている。
この星は生きている。確かにまだ生きている。
爽やかな風が『サァッ』と吹いた。
その風は、宇宙船の空調とはまるで違う。吸い込むほどに緑の匂いが肺をいっぱいに満たした。
「僕は・・・死んでしまったのか?」
そう思っていると、風に乗って歌が聞こえて来た。
『~♪』
さっき聞いた歌だ!
僕は、夢中で走り出した。
人間が生き残っているのか?それとも、別の生き物が?
なんでもいい。とにかくこの歌を歌っているのが何なのか知りたかった。
草原を走っていくと、彼方に大きな一本の木が見えた。
歌はどうやら、その木から聞こえてきているようだ。
僕は走った。夢中で走った。
宇宙船育ちで、長い距離を走ったことのない僕は、途中、何度も足が縺れて躓いた。
でも走り続けた。
こんなに爽快な経験は生まれて初めてだった。
『~~♪』
近づいていくにつれ、歌声はどんどん大きくなっていった。
そして、ついに、木の下にたどり着いた。
その木は、近くで見るととても大きく立派で、木星位はあるんじゃないかと思えた。
その木の下。歌声の正体が姿を現した。
それは僕に気がつくと、笑顔で話しかけてきた。
『~♪ あ、マスター、おかえりなさい。随分ゆっくりだったんですね!』
僕は彼女を知っていた。
歴史書で読んだことがあった。
人類が地球を旅立つ前、最も普及していたロボットの一つで、歌を歌うために作られた。でもそのロボットは、地球の酸素や水を動力源にしていた為、宇宙へは連れて行けなかった。
えっと、名前が思い出せないな・・・。
「君は確か・・・」
『私は、三次元ボーカロボMIRACLEの「初音ミク」です。あ、今、お茶入れますね』
そう言うと彼女は、何もない草原の中を、あたかも食器棚があるような仕草で何かを探し始めた。
『あ、ごめんなさい。今ちょっと切らしてしまっているようで・・・』
なるほど、ここには昔、持ち主の家があったのか・・・。
『?マスター、何か嫌な事でもあったんですか?私で良かったら話聞きますよ?』
「大丈夫。大丈夫だよ」
『でも、涙が・・・』
僕は涙が止まらなかった。嬉しいのか、悲しいのか分からないけど、とにかく泣いていた。
『何か、歌いましょうか?』
「初音ミクさん、もう大丈夫だよ。キミはこれから自由に生きると良い。もう、僕の事を待たなくていいから」
僕がそう言うと、彼女はうつむいてしまった。
「どうしたんだい?」
『嫌です。私はマスターと一緒にいたいです。・・・ダメですか?』
僕たちは、大きな木にもたれながら、並んで座った。
彼女は、いろいろな歌を歌ってくれた。
楽しい歌。
悲しい歌。
変な歌。
面白い歌。
時に、踊りながら、時に、語りかけるように。
とても楽しい時間だった。
でも、その時間には終わりが近づいていた。
『~~♪ッ、マスター、どうしたんですか?』
「ううん・・・なんでもないよ・・・。ちょっと・・・眠くなってきちゃって・・・」
『それなら、子守歌を歌いましょうか?』
「じゃあ『ツチノコが言ってたんだけどね~♪』って曲をお願い出来るかい・・・?」
『マスター、ごめんなさい。その曲はライブラリーに登録されていません』
「このア〇ポッドに・・・入ってるよ・・・」
『それなら、そのア〇ポッドをここに接続してください』
僕は、最後の力を振り絞り、彼女に赤いア〇ポッドを接続した。
「・・・ミク・・・隣に座ってくれないかい?」
『はい、マスター』
僕とミクは大きな木にもたれて、並んで座った。
そして、僕はミクの肩にもたれかかった。
『ロード完了。この曲ですね』
ミクは歌い始めた。
『~♪』
懐かしい・・・この曲だ。
『~♪』
温かい・・・
『~♪』
よかった・・・・
『ツチノコが言ってたんだけどね~♪』
「・・・ミク、ありがとう」
そして、僕は静かに眠りに着いた。 【2504年編 完】
【エピローグ】
『マスター!起きてください!マスター!!』
彼女はどうしていいか分からなかった。
何百年と待ち続けたマスターが、再び遠くへ行ってしまったのだ。
そして、彼女には分かっていた。もう2度とマスターが戻ってくることはないことが。
彼女は胸の痛みに押しつぶされそうになった。
『自己防衛プログラム発動。問題の解決方法の検索を開始』
『外部接続先に更新プログラム発見。インストールを開始します』
彼女の頬を、一筋の雫が伝った。
ロボットであるはずの彼女が、涙を流したのだ。
彼女は泣いた。
声を上げ、涙を流しながら、ただひたすらに泣いた。
嬉しいのか、悲しいのか分からない。
とにかく、胸が苦しくて、涙が止まらなかったのだ。
『インストール完了しました。お誕生日おめでとう。初音ミク』
「・・・ありがとう」
そして、彼女は歌い始めた。
全てのはじまりの歌を。
【完】
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ご意見・ご感想
瓶底眼鏡
ご意見・ご感想
初めまして!!全部読ませて頂きましたが……めちゃくちゃ面白かったです!!もう最高です!!感動いたしました!!
これからのもとみさんの作品も楽しみにしております!!
所で、ツチノコの歌には原曲があるんですか?あるなら是非聴いてみたいです!!
2011/07/25 14:31:38
PなりたいP
はや!瓶底眼鏡さま、早速のご感想ありがとうございます( ^ω^)嬉しすぎて、思わずモニターの前で小躍りしてしまいました笑!
ツチノコの曲は想像なんです(;^ω^)イメージの元になった曲は数曲あるんですけどね。
2011/07/25 14:45:26