モモの家を出、駅に入り、いくつか電車を乗り継いだ。
その金ヅルにメールを送った。すると、
「駅前の茶色の壁の喫茶店に・・・」
ときた。私の記憶が正しければ、その店はそこそこ値の張る喫茶店だったはず・・・
戸惑いながらも店内に入ると、席と席を仕切る壁の間から手が覗いていた。
その場所に行ってみると、
「こんにちは。スリープさん」
今まであってきた人の中で最も端正な顔がそこにあった。
~巡り廻るナイフの物語~ 第1章「不良少女」 第5話
私は、目の前にいる男性の表現に困っていた。爽やかにカットされている青い髪、そして同じく青い瞳。
唇の端はシャープな線で書いた様になっており、まるで刃物のようだ。
いつまでも椅子に座らずその人を見つめている私を訝しげに思ったのか、その人が視線を向けてきた。私は急いで椅子にすわった。
「こんにちは。スクリームといいます。」
スクリームと名乗った人は、頭を下げた。
「あ、こんにちは・・・スリープです・・・」
見計らったように店員がやってきた。私とスクリームさんは同じくアップルパイを注文した。
アップルパイが来るまでの間、普通の会話をした。契約の話をするのはそのあとでも良いような気がした。
たわいもない話をしつつ、スクリームさんの顔を細部まで確認した。
・・・ホントに整った顔だな・・・
今まで私が援交してきた相手はみんな何か汚れているような印象を受けていたが、この人は既婚者であるにも関わらず、全く汚れがないように思えた。
そうこうしているうちにアップルパイが二人分運ばれてきた。私は、手をつける前に切り出した。
「スクリームさんは、どんなことがお望みですか?」
スクーリームというハンドルネームは、アイスが好きででも「アイスクリーム」はカッコ悪いのでこの名前にした、ということらしい。
これからは、契約の確認など、様々な事務的手続きをして終わった。
「ではこれにて今日は失礼します・・・」
「あ、いえ。こちらこそ」
こうして私とスクリームさんは別れた。
終わったよ、とモモにメールを送る。
すると、ほんの数秒で、
「わかった~今行くね(^ω^)ノ」
ときた。私はケータイを閉じ、待ち合わせの場所へと向かった。
待ち合わせ場所について数十分後、モモがk「何そのカッコ・・・!!」
私はため息をつく。モモがそのようなカッコしかしないことは百も承知だったが、やはりつっこまないワケにはいかなかった。
今日のモモの出で立ちは、全身ピンクのロリータファッションだった。無意味に取り付けられたフリルは、まさに「歩く風景破壊」と名づけるにぴったりだ。
周りの都会の風景と一%も調和してない。
「ネルう~これのどこがいけないの?かわいいじゃんw」
はあ・・・
私とモモはそのまま買い物に行くため、デパートの中に足を踏み入れた。
「う~ん・・・どれにしようかな・・・?」
モモが今着てるのと同じようなフリフリな服を物色している。
どれも同じように見えるんだけどな・・・
こうしてモモの一人ファッションショーに付き合わされること30分。
やっとお目当ての服が見つかったらしく、レジへと向かっていった。
しばらくして、両手に袋を抱え、モモが戻ってきた。非常に楽しそうな顔をしている。
楽しそうでなによりです。
その後は、モモの提案でちょっとお高いレストランにいったり、モモが行きたいとかでアニメグッズがおいてある店に行ったりした。 すごい楽しかった。
「今日は楽しかったね~」
「ね~また行きたいね」
とたん、私のケータイが着信する。メールだった。
・・・送り主はナスだった。内容は
「ごめん。話したいことがあるんだ。明日、謳卯駅前のカラオケに来てね~」
だそうだ。
「え~メンド~」
私は叫んでいた。
「いいよ、行ってきな。お金もらえるんでしょw」
モモはそういって抱きついてきた。
「いやっ、やめてw」
モモにあったのは、コレが最後だった。
次の日。
私はナスに言われたとおり、謳卯駅の前のカラオケに入った。
中にはいると、ロビーにナスがいた。
「なんの用ですか?ちゃんと追加料金は払ってくれるんですよね?」
「あ~うん、もちろんだよ~お~」
ほんとキモイな・・・
部屋に入り、何曲か歌った。すると、ナスはA4サイズの紙袋を取り出した。
そして次のナスの言葉に、私は耳を疑った。
「ねえ「ネル」ちゃん、この紙に書いてある事はほんとーなのお~?」
・・・・・はあ?なんて言った、コイツ・・・!?
なんで私の名前を知ってるの・・・!!
「・・・は?」
私は、声が出なかった。ナスは、なおも続ける。
「昨日、誰かが拙者の家のポストにこの封筒を入れたんだあ~ネルちゃんの生写真つきで♪」
ナスは、私の目の前でA4のコピー紙をヒラヒラさせる。
まぎれもなく私と別の金ヅルが抱き合ってる写真だった。だれが、こんな事を・・・?
「拙者、そ、その・・・ネルちゃんの、・・・その、下着の柄、知りたかったんだあ~」
ナスがおぞましい笑みを浮かべる。脳が危険信号を鳴らす。
しかし、遅かった。ナスはすばやく私の懐に入り込み、私を押し倒した。
「キャアッーーー!!」
私は叫び声をあげる。しかしカラオケはしっかりと防音されていて外にはほとんど声が聞こえない。
しかもこの部屋はフロントから一番遠い。運が悪すぎる。
ナスがスカートに手を入れてくる。私は逃れようともがくが、ナスは想像以上に力が強かった。
「ネルちゃんは拙者のものだ~ へへへへえw」
机が足にあたり、上においてあった私のバックが落ちた。
バックは私が手を伸ばせば届きそうなところに落ち、中からタオルに包まった何かを吐き出した。
ナスの方からは見えないだろうが、私の方からはタオルの隙間から光るナイフの刃先がのぞいていた。
こんなときに・・・
「ぐへへへwネルちゃんのパンツは何色かなあ~♪」
私は、ナスに気づかれないように手を伸ばし、ナイフをつかみ、
ナスに思いっきり、突き刺した。
それから、どのくらい座っていただろうか。
私の傍らに、紫の髪を床に垂らした死体が横たわっていた。
ちょうどお腹の辺りに、私が持っていたナイフが刺さっている。
突如、壁に取り付けられた電話が鳴る。
その音が、私を正気に戻す。
「いややややあああああああああああああああああああああああ!!」
私は部屋を出て、走り出す。
店員が引き止めるのも聞かず、私はカラオケを出た。
カラオケの前は大通りになっていた。私は気にせず横断しようとした。
「危ない!!」
誰かが叫んだ。その時私の横にはトラックが来ていた。
ダメだ、もう避けられn
神威が横たわるカラオケの一室に、一人の人が入ってきた。
「あ~あ。殺しちゃったか。しょうがないな~」
その人物は神威の腹に刺さっていたナイフを抜き取った。
「これはまだ使うしね~」
ナイフをポケットにしまいこみ、その人はカラオケを後にした。
END
2章に続く
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ご意見・ご感想
目白皐月
ご意見・ご感想
こんにちは、目白皐月です。
カイトのハンドルは「スクリーム」とのことですが「叫ぶ」という意味なのには、本人気づいているんでしょうか……? いなかったらヌケてますね。
後、ナスが「下着の柄が知りたかった」と言っていますが、援助交際をしていたんですよね? お金払えば見れるものだし、他の人と関係を持たれるのが嫌なら、お金を積んで専属になってもらうとかの手もあるのに、いきなりこんな行動に出る辺り、頭のネジが五、六本ぐらい飛んでいるのかなあと思いました。
2011/10/05 01:02:12
苺ころね
コメントありがとうございます。
カイトは気づいています。カイトは、まるで普通のひとなのでw
ナスはキャラ設定をする際に、「とりあえずアタマのネジが飛んでる、オタク、変態」というコンセプトを盛り込んで作りました。
気づいていただけて光栄です^^
2011/10/05 13:06:00