[第10話]~笑顔
 がらりと開け放った襖の先に居たのは、連と、それに寄り添うみくさんだった。
2人共私の思わぬ登場に、唖然と、口を開いている。

 私は、そんなこと気にせず連に近づいて行った。
そして、連の腕をぐいと持ち上げ、みくさんから引き剥がした。

 「お届物の反物は、若旦那がお渡ししましたね?」
思い切りみくさんを睨みつける。
 
 「え、はい。」
戸惑った様子でみくさんが言う。
 「でしたら、私たちはお暇します。鏡屋もあるので。」
 皮肉っぽく微笑む。
 
 みくさんは何か言いかけたが、口を開いただけで、言葉にはしなかった。
 めい子さんを庭から呼び戻し、3人で鏡屋への帰路についた。

 行きとは一変、私が2人の前を歩く。

 「りん、どうしてあんなこと…」
連が私に問う。
 
 どうしてって、なんとなくだよ。

そうは言えなかった。連に背を向けたまま歩く。

 どうしてあんなに、怒ったんだろう。
 どうしてあんなに、みくさんが連に寄り添うのが嫌だったんだろう。
 どうしてあんなに、私はお凛さんの生き写しにしか見られないのが哀しかったんだろう。

 何にも分からない。

 さっきから、連もめい子さんも何も言わない。
そう思っているうちに、鏡屋が見えてきた。

   *    *    *    *    *    *    *    *

 「りん、いるかい。」

 優しい、連の声。
す、とひらく襖。その先には、連ひとり。

 花林糖と茶を乗せた、盆を私の前に置いた。

 「…怒ってる…?」
恐る恐る私は、聞いてみた。
 「怒ってなんかないよ。」
思ったより、明るく答えた、連。

 「みくさんが、りんのこといらないと言ったんだ。」
 え、と私は短い声をあげる。
 「でもそれを聞いた時、私は初めてみくさんに腹を立てたんだ。」
みくさんには気の毒だ、と思った。

 でも、なんだか嬉しくて、くすくす笑ってしまった。

 それを、見た連は、前に巡屋でしたような眼をした。
私を愛でるような、目をした。

 でも、前に見た過去への暗い影はなかった。

    *    *    *    *    *    *    *    *

 りんが、笑ってる。
笑った顔は、はじめて気づいたが、姉さんと少し違う。

 可愛らしい笑顔だ。

 さっきは言わなかったが、みくさんに「好きだ」と
そう言われた時、りんの顔が浮かんだこと。


 これは、わたしだけの秘密にしておこうか。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

緋色花簪

「お凛編」完結ですww

次から、新しい編が始まりますww

 追記

皆様方のおかげで、我が作品が注目の作品に追加されました!!
ほんとうにありがとうございます!

閲覧数:346

投稿日:2012/05/30 21:10:06

文字数:1,052文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    やっぱり、レンのとなりはリンですかww

    あれ?うーん、でもこれだと…めーちゃんも…
    カイトはミクが好きなんだよね?
    めーちゃん(・へ・。)

    2012/03/25 23:55:49

    • イズミ草

      イズミ草

      そうですねw
      個人的には、リンレンセットがイイですww

      次からばばんと新展開です!

      ただの恋愛小説じゃ江戸にした意味ないのでww

      2012/03/26 12:24:09

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