日向先輩に連れられて澤田先輩のデートを尾行して…そこで私達は何だか凄い光景を見てしまった。日向先輩の叫び声の後は正直何が何だか覚えていなくて、そして現在駅から近かったと言う理由で2人共私の家に呼ぶ事にした。
「あの、お茶です…。」
「う、うん!あの…ごめんね、急に押し掛けちゃって。」
「もぉー!何呑気な事言ってんのよ!解ったでしょ?!あの人このゲームに託けて彩花に手出す気満々なんだってば!」
私の部屋で先輩達が喧嘩されても困るんだけどなぁ…。でも、今日の事で色々解った。先ずあのサイトは私達が思っているより広まってて認知度もあるって事だ。イベントや指令みたいなのを決めてるのは多分佐藤さん達なんだろうけど、悪ノリして変な命令が出ないとも限らない。でも逆に安心した点もあった。それは『ゲームのデータテスト』と言うのを前面に出しているお陰で目立ちに目立ってる。もしイベント中に妨害目的で殴ったりしようものなら証人は幾らでもいる。それ故においそれと私達に手は出せない状況が出来上がっているという点だった。
「ひおちゃん!何か言ってやってよぉ!彩花ってばあのセクハラ野郎庇おうとしてるんだよ?!騙されてるってばー!」
「だ、だって、顔が好みで…ぐ、ぐるじい…!」
ふと見ると中々にバイオレンスな状況になっていた。後始末が面倒そうだし首を絞めるのは止めさせた。日向先輩には悪いけど私は全く別の事が気になってしょうがなかったのだ。
「あの、澤田先輩、聞いても良いですか?」
「はいはい?」
「キスって気持ち良かったですか?」
2人してお茶を盛大に吹き出してむせている。真面目に聞いたんだけどまずかったのかな…?2人の背中を両手でさすっていると、涙目の日向先輩が自分の胸をトントンと叩きつつ言った。
「ひおちゃんって、天然…?」
「いえ、そのつもりは無いですけど…私彼氏居た事もキスした事も無いからどうなのかなって思って…。」
私の言葉に2人は目を真ん丸にした。
「えぇ?!じゃあ旋堂さんは?!姫抱っことかしてたじゃない!」
「幼馴染と言うか…勿論好きですけど、子供の頃なので…。」
「そのおっぱいで色んな人を翻弄しまくってるんじゃなかったの?!」
「若葉、それじゃ緋織ちゃん只の尻軽悪女だよ…。」
若干引っ掛かったけど、大体合ってるので私はコクリと頷いた。確かに色々言って来る人やナンパは何度も遭ったけど誰かに告白されたりラブレター貰ったりは一度も…。
「ああ、生徒会長の天城先輩なら入学式の時に『その身体は危険だから俺を虫除けにしろ』って言われてぶん殴りました。」
「それは正しいわ、私あのエロキングのパートナーだけど触ったらボールペンで刺してやるつもり。」
「若葉、生徒会長に『エロキング』って…。」
漫才っぽい2人の会話を宥めつつ聞いていると放置してあった携帯が鳴った。
「あれ?睦希先輩だ。はい、倉式で…。」
『ごめんなさぁーい!!』
むしろその大声に謝って欲しいです。耳を突き破るかと思う程の大声は余裕で先輩達にも聞こえていた。2人はアイコンタクトの後携帯に耳を傾けた。睦希先輩は受話器の向こうで深呼吸を繰り返していた。
「一体どうしたんですか?」
『せ…せ…せ…!』
「せせせ?」
『旋堂さん取っちゃった…!』
「はい?」
私達は3人で顔を見合わせた。
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