薫る幽玄の山風
楽の音 淑やかに
血塗る尖端の昂り
息の根 尽きるまで

水底に揺らぐ俤が詠う
篝火に浮かぶ憶念が嗤う

徒の廻廊 夢寐の燈籠
彷徨う眼を誑かす
千の武士 勝鬨を挙げ
久しい日輪に泪せよ


語る言葉より雄姿を
男軍 高らかに
契る逢瀬より二月
露草 褪せないで

白煙に揺らぐ動乱の鬼面
漆黒に浮かぶ泥沼の花蓮

宴の兵 快闊に酔え
新たな夜明けを引き寄せよ
朝の楼観 無味の旋回
流れた桧扇が舞い落ちる


 愛しさ募り 待つ時長く
 何か燃え尽きぬ 私の心
 いざや帰らん 真心逸る
 もどかしきや 道 いみじく長し


旗の煌めき 馬の嘶き
届くは恋しい彼の姿
天の祝いぞ 今我を呼べ
懐かしい腕に眠る為

この身果てる迄 ともに……


――――
W……Woman(女性パート)
M……Man(男性パート)

(かな)
タイトル:いくさのはな おうぎのきず

W:かおるゆうげんのやまかぜ
W:がくのね しとやかに
M:ちぬるせんたんのたかぶり
M:いきのね つきるまで

W:みなそこにゆらぐおもかげがうたう
M:かがりびにうかぶおくねんがわらう

W:あだのかいろう むびのとうろう
W:さまようひとみをたぶらかす
M:せんのもののふ かちどきをあげ
M:ひさしいにちりんになみだせよ


M:かたることばよりゆうしを
M:おいくさ たからかに
W:ちぎるおうせよりふたつき
W:つゆくさ あせないで

M:はくえんにゆらぐどうらんのきめん
W:しっこくにうかぶどろぬまのかれん

M:えんのつわもの かいかつによえ
M:あらたなよあけをひきよせよ
W:あさのろうかん むみのせんかい
W:ながれたひおうぎがまいおちる


 W:いとしさつのり まつときながく
 W:なにかもえつきぬ わたしのこころ
 M:いざやかえらん まごころはやる
 M:もどかしきや みち いみじくながし


WM:はたのきらめき うまのいななき
WM:とどくはこいしいかのすがた
WM:てんのいわいぞ いまわれをよべ
WM:なつかしいかいなにねむるため

WM:このみはてるまでともに……

(一字下げ部分の訳)
愛しさが募り、待つ時は長く(感じている)。
(それでも)なぜ燃え尽きないのか、私の心。
さあ帰ろう! (逢えると思うと)心が逸る。
もどかしいなあ。(君への)道は甚だ長い。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

軍の華 扇の瑕

戦場を駆ける男、帰りを待つ女
互いの想いは交わることなく
それぞれの生き様を魅せるだけ
ただそれは、
想い合っているからこそ――

――――

一字下げにした箇所は心内文なのでセリフっぽく書いています。他の部分とは書き方が違うよ、ということを表すために一字下げました。でもセリフで言わせているわけではなく、ここもちゃんとメロディーがついた歌です。
最後の一行はハモっている感じで。

構成:ABサビABサビCサビ

(以下ざっと自分用解説:読まなくても大丈夫)
軍で奮闘し、勝つことだけを考え、置いてきた妻に配慮せず、しかしそれは言葉にするのが苦手な性格故であり、この活躍する姿が届けばいいと、妻への想いを胸に抱く男(夫)。
遠くで戦っている夫の帰りを便りもなく待ち、音楽に興じてみても、舞を踊ってみても、胸を占めるのは夫の安否で、想い続けるのを止めようとしても夢に見、寝ても覚めても愛の炎が消えない女(妻)。
ようやっと逢えた時、二人は懐かしい温もりに喜び震える。
いつ命を落とすか分からないこの世の中、どちらかが先に亡くなった時、残った方だけでもまた愛した誰かと幸せに長く生きてほしい、永遠は望まない、せめて今のこの身が果てるまではともに想い合い、愛し合おう――という心情。

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投稿日:2013/01/29 11:19:18

文字数:997文字

カテゴリ:歌詞

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