-第二十一章-
無意味な沈黙が病室を支配する。
「…あの、さ。ルカ?」
「はい?どうしたのかしら?」
ふっとルカが顔を上げた。
「いや、なんだってこともないんだけど」
「レン、そこの赤い色鉛筆とって。…まあ、メイトは気を使ってくれたようだし、帝国がどうのこうのって、詳しく教えてくれないかしら。まだ、理解しきれていなくて」
「あ、うん。めぐと神威の試練が終わった後、ミク姉の試練を受けに行ったんだ。いろいろあって、ミク姉とリンで犬の散歩に行くことになったんだ。俺は留守番していたんだけど、ミク姉が散歩のときにやるっていってた犬のおやつを忘れてたからさ、それを渡しに、二人を追ったんだ、そうしたら二人が――」
「帝国関係者に襲われていた、ということね。でも、それだけで帝国が動いていると断定したわけではないのでしょう」
「勿論。リンと俺が居候しているところが、素人探偵事務所なんだけど、そこに帝国の使いを名乗る客がきてね――」
「それで、暴走ってどういうことですか」
テーブルに両手をつき、前のめりにメイトを見つめながら、リンは先ほどの話の続きを促した。
「ああ。そうして、レンに彼女ができてからしばらくしたとき、また帝国からお達しがあった。そのときの帝王の妃を選ぶために、国中の見目美しい娘を城へと連れてくるように、と。レンの彼女はその辺では有名な美少女って奴だったから、連れ去られた。けど、そんな簡単にキレるほど、レンも短気じゃないからな。彼女が帰ってくるのを、待っていた。それは健気で、みているのも痛々しいくらいだった。けど――」
「けど?けど、なんですか?」
「彼女は帰ってこなかった。彼女も、レンの元へ帰ろうと国の兵士相手に抵抗して、そのまま――。それが彼女の関係者に知らされたのは、彼女が帝国に連れ去られてから一年が過ぎた頃だった。レンはしばらく放心状態だったけど、数日後、ふらっと出て行ったきり、三日も帰ってこなくなった。後から聞いた話では、城に金髪の少年が一人で乗り込んでいって、いくつかの軍がその少年によって壊滅にまで追いやられたとか。そんなことを聞くけど、まあ九分九厘レンだろうな。それで、三日後、レンは体中に小さな傷をつけて帰ってきた。大きな傷はなかった。それから何年かは帝国も静かだったんだけどな。また調子に乗り出して…。いや、こっちの話だ。それから、レンは口調も静かになったし、町のほうに出なくなったな。…まだ、人の心が残っているうちに、人と接触していたほうがいいと思うんだが…」
「人の心…?」
思わず、リンが聞き返す。
そのリンの反応に、メイトは少し驚いたように顔を上げて、リンをじっと見て疑わしげなまなざしを、リンに向けた。
「何だ、レンから聞いてないのか?…どうしたら守護者になるかは知っているだろう?」
「はい。宝石を全部集めると…って、本に書いてありました」
「その守護者は、かつてこの地に住んでいた『魔女』を守る、『守護者』の意味。だから、知力や体力がひつようなんだ。そして、その守護にはできるだけ私情が介入しないことが望ましい。だから、守護者になると、守護者になる前の記憶は消えてしまうんだ。その内に、何が人なのか、気持ちを理解できなくなっていくらしい」
「じゃあ――」
「もしかしたら、レンはもう、自分が何故守護者になったのかすら、覚えていないのかもしれないな」
そういうと、メイトは少し悲しげな顔をした。
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ご意見・ご感想
リオン
ご意見・ご感想
こんばんは!
メイトはしっかり者だと思うけど、実は案外ヘタレだと思いますよ。レンの兄貴だし。
やめて!ネギや花や、マフラーがかわいそう!あ、店員さんも可愛そうです。
…カイト?なんですかそれ。美味しいんですか?リンはちゃんとオンオフの切り替えができる子です(笑
魔女誰だろう!?レンの記憶が吹っ飛んだ!!いやっはーー!!(←?)
メイトは…どうなんでしょう。そんな的確なツッコミしちゃ、ダメですよ☆
彼女さんは愛されすぎて束縛されてるってのもいいなぁ、とか考えてましたよ。数日前まで。
何だか、私は暴走する系がすきみたいですね…。鏡の悪魔でも暴走しまくってましたしね…。
リンはあきらめないんじゃないでしょうか。やる気は今、12.825くらいじゃないですか(笑
リンの願い事は、レンの女装…。私も自重したほうがいいですかね?
い、いろいろと仕方ないですよね!そうですよ!そうなんです!
安心して、次の投稿頑張りまっす!!
2009/10/15 20:37:44