『懐かしいっすねぇ……かれこれ300年ですかい!?兄貴!!』

 『く……クロスケ……!?お前、本当にクロスケなのか……!?』


 ロシアンに親しげに話しかける黒猫又と、混乱しているロシアン。その様子を見て混乱しているルカは、恐る恐るロシアンに話しかけた。


 「ね……ねぇ、ロシアンちゃん?あいつのこと知ってるの?」

 『……クロスケ。純血の日本黒猫で……吾輩の一番弟子だ。』

 「一番……ってことは、ロシアンちゃんが猫又になる前からの知り合い……ってこと!?」


 一方、黒猫組幹部たちのほうも混乱していた。


 「お、おい!?どういうことだよ!!」

 「俺たち、まさか猫につかえてたってのか!?」

 「っざっけんじゃねぇえ!!!なめてんじゃねぇぞオラ――――――――――」


 幹部の一人が、ロシアンが『クロスケ』と呼んだ黒猫又に殴りかかろうとした瞬間―――――


 『シャアアアアアアッ!!!』


 黒猫又が鋭い鳴き声を上げ、紅い焔を周りに炸裂させた。殴りかかろうとした幹部は直撃を喰らい、後ろの壁まで吹っ飛んでいき、壁にめり込んだ。


 『せめて俺に触れるようになってから言ってみろってんだ。この俺に近づくことすらできねえくせに何が『ざけんな』だよ。』

 『お前……本当にクロスケなのか……!!?』


 ロシアンが恐る恐ると足を踏み出すと、黒猫又―――――クロスケはにっと笑った。


 『やっぱり驚いてるみてえですねぇ、兄貴!そうでしょーなぁ、俺は兄貴に自分が猫又だなんてこと言ってなかったから……。』


 尻尾をゆらり、と揺らして。

 クロスケの自分語りが始まった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 俺はね兄貴……物心がついたころから、自分が100年生きれば猫又になれる素質のある猫―――――『神の落仔』だってことがわかってたんですわ。猫又になれる猫ってのは、生まれつきその素質を自ら感知できるらしいっすね。

 そして俺が生まれた土地の長老猫から、『神の落仔』は他の『神の落仔』のことを感知できるって聞いて、さっそくあちこちの猫を倒しがてら『神の落仔』かどうかを探し始めたんです。

 ところがどいつもこいつも『神の落仔』じゃないどころか、俺がちょいと手を出せばあっという間に倒れちまうような軟弱な奴等ばかり……そんな生活に飽き飽きしてきたところに―――――兄貴、あんたと出会ったんだ!!

 その強さは俺が身震いしちまうほどだった……今までの奴らなんか比べもんになんねぇ……紛れもない戦闘の天才だった……!!……だけど兄貴からは自分と同じ気配が……『神の落仔』の気配が全然しなかった。少し寂しさを感じながらも、俺はあんたに一生ついていくって決めたんでさ。


 ところが……兄貴は9年後、いきなり猫又になっちまった!!そして『惚れた女を追いに行く』なんて言って俺たちの元を去っちまった!!あん時の俺の失望感……今の兄貴ならわかりますよね?

 俺にとっては兄貴は最大の目標だった……!!それがいきなりいなくなっちまったわけですからねぇ。がっくりですよ。


 それからというもの、俺はちょいとばかし荒れちまってねぇ。猫又になるまでも、歩いて山越え谷越え、手当たり次第獣を倒して回って……100年たって猫又になってからはもう世界中飛び回って人間の戦争だったりなんだったりをつぶして回って。荒れまくりっすよ。

 そんな中でも、俺はずっと兄貴のことを探してた。なんでかって……そりゃ決まってるっしょ。『俺は今ではこんなに強くなった 昔の俺とは違うんだ!!』ってあんたに見せつけてやるためっすよ!!

 ここで会ったのも何かの縁……一つ、俺の力、見ちゃくれませんかね?



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





 『吾輩が今知りたいことはお前のあれからの暮らしでもお前の力でもない……!!一つ……!ここに偵察に来た猫たちがいただろう。彼らをどうした?』


 ロシアンが語気を強めて詰め寄ると、クロスケは少し疑問を浮かべるような顔をして、そしてふと思い出したように嗤った。



 「ああ!夕べアジトのドア前まで来てたあいつらっすね!同族を『喰う』のは初めてで、あんまり気分のいいもんじゃあなかったけど……悪くねえ味でしたねぇ。二度とやりたかねえけど。ハハハハハ!!』



 途端にロシアンの焔が、ロシアンの体を包み込むように吹き上がった。まるでそれが、ロシアンの怒りを表すかのように。


 「……酷い!!」

 「同じ猫を喰った……っていうの!?」


 ミク達も怒りのあまり、今にも力を解放しようとしている。

 ルカが一撃を入れようと、一歩前に踏み出すが―――――


 『ルカ。』

 「!!」


 たった一言。ロシアンのその名前を呼んだだけの言葉が、ルカの心に力強いメッセージを持って叩き込まれた。



 《―――――こいつは吾輩が叩きのめす。手を出すな!!!!》



 思わず、足が竦む。

 これほどまでに怒りを露わにするロシアンは、ルカも今まで見たことがなかった。

 一歩前に出たルカの足が後ろに下がったのを見て、ロシアンはクロスケに向き直った。

 そして怒気を込めた声で―――――声を放つ。


 『……………もう一つは……貴様がなぜ人間界に紛れ込んで、こんな仕事に手を染めたか……ということだが……!!まずは貴様を一度徹底的に叩きのめしてから、力尽くで聞き出させてもらう!!行くぞこのバカ弟子が――――――――――――――っっ!!!』


 ドン!!と畳を蹴り裂き、クロスケに向かって突っ込んだ。

 焔槍が同時に放たれ、超高速でロシアンと共にクロスケに飛んでいく。

 これはいける―――――ルカたちがそう思った――――――


 その瞬間。



 『ぬるいっすよ、兄貴。』



 『がっ!!?』


 突然のロシアンのうめき声。その場にどさりと倒れこみ、焔がすっと消えた。

 そして―――――その背後にクロスケの姿が現れた。


 「なっ!?」

 「速い……ロシアンがああも簡単に……!!」


 カイトとメイコの驚く声が響くが、そんな声はルカの耳には届いていなかった。

 あのロシアンが。がくぽとも対等に戦ったあのロシアンが、胸を押さえて地に伏している。

 信じられない光景だった。


 「……うそ。」


 思わずこぼれる言葉。震える声。

 誰もが静まり返る中で、クロスケの高笑いが響いた。


 『ハハハハハハハ!!!!昔の俺と同じと思ってくれちゃあ困りますぜ、兄貴!!俺はただの猫又じゃない……『破壊』を司る猫又、『紅蓮の猫又』なんだ!!この俺の操る焔『紅蓮劫火(ぐれんごうか)』の前に、どんな敵も灰すら残らず消し飛んでいき、俺の血肉となっていった……!!兄貴……いや、猫又ロシアン!!あんたもこの俺の焔で焼き尽くし!!俺はあんたを越えてやる!!ギィオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!』


 猛々しい咆哮を挙げ、未だうずくまって動かないロシアンに突進するクロスケ。

 その爪に紅蓮劫火を宿らせ、今にも襲い掛からんとした瞬間!!





 ―――――ひゅっ―――――





 小さな風切り音とともに、今度はロシアンの姿が掻き消え。


 『な……!?』


 クロスケが思わず間の抜けた声を上げた、次の瞬間には―――――





 ――――――――――――焔拳っ!!―――――――――――――





 爆音にも等しいほどの凄まじい連打音が響いて、クロスケの体が地面にめり込んだ!!


 『がはっ!!?』


 クロスケの潰れた悲鳴が聞こえると同時に、天井から地面に突き刺さるように、碧い焔の塊が降ってきた。

 その焔の主は―――――当然ロシアン。全身から漲る碧い焔は、さっきまでとは質が違った。


 「な……何?何が起きたの、今!?」


 リンが混乱している。いや、今のはリンでなくても混乱しそうなほどの超スピードだった。

 ルカも茫然としていた。なぜならロシアンの今のスピードが―――――『心透視』で追い切れなかったのだから。

 しばらくして地面にめり込んだクロスケが這い出てくると、それまで黙っていたロシアンが口を開いた。




 『……くっくっく……やるじゃねーかよ、クロスケ……おめーもちゃんと強くなってやがったんだなあ。安心したぜ……!!』




 『え!?』

 「口調が……違う……!?」


 リンとレンが同時に驚きの声を上げ、ミクが困惑の表情を浮かべる。




 『こりゃあ……ちったぁ『俺』も、本気を出しても問題なさそうだな……!!』


 (『俺』……!?いつものロシアンちゃんじゃない……!!)


 ルカもまた、困惑していた。そこにいるのは本当にロシアンなのか、まったく掴めなかった。



 ―――――突然、地鳴りが始まる。


 それと同時に―――――――――ロシアンの周りの碧命焔が、一気に天井近くまで吹き上がった!!


 『ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』


 クロスケに劣らぬとも勝るようなすさまじい咆哮を上げるロシアン。

 天井まで上がった焔が、ロシアンの元に舞い戻り、そして弾ける。

 荒れ狂う碧命焔の中で、ロシアンが嗤った。



 『これまではお前を制裁してやろーなんて軽い気持ちでいたが……やめだ。こんな素晴らしい強さを持った奴と戦えるチャンスなんざそうそうねぇ……!!』



 一歩前に踏み出して、クロスケに向かって碧命焔をまとった尻尾を突き付けて、叫ぶ。

 まるでこうなることを待っていたかのような笑みを浮かべて―――――





 『来な!!クロスケ!!まずは望み通りてめーのその強さ、しっかり確かめてやる!!全力でぶち当たってきやがれ!!!!!』

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ボーカロイド達の慰安旅行(13)~ロシアンとクロスケ‐弐【ロシアン・過剰疾走(オーバードライブ)!!】~

ロロロロロロシアン!?どうしたお前!?
こんにちはTurndogです。

クロスケの強さもさることながら。
ロシアンがとうとう本気出しやがった!!
一人称や口調の変化は某飛天御剣流の十字傷さんを参考にしました。
でもさすがにあの十字傷さんもここまでひどい変わりようはしなかったよなぁwwwww

同族を殺したことに対する怒りすらも吹き飛ばすクロスケの強さ。
そしてそれに対し本気を出したロシアン。
こんな二大化け猫が激突したら―――――どうなるか?

閲覧数:341

投稿日:2013/04/17 22:31:29

文字数:4,238文字

カテゴリ:小説

  • コメント4

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  • イズミ草

    イズミ草

    ご意見・ご感想

    おわわわああ!!!!!
    かっけーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!
    ちょっと「るろうに剣心」を思い出したのは内緒内緒ww

    2013/04/20 09:03:00

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      だいじょぶ内緒にしなくてもwwwww
      だってそう書いてあるじゃないの?www
      某十字傷がモデルと。

      2013/04/20 11:16:00

  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    いやいや、ボカロが戦わないの!?ww
    猫ちゃんがテキストを支配しようとしてますよ!?

    某逆刃刀の侍も、ざっくりいうとこんな感じでしたよw

    2013/04/18 20:11:57

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      主役?猫ですよ?wwwww
      たぶん次からボカロの皆さんは空気とかタグ付くと思う。

      ざっくり言うとねwwww
      でもロシアンの場合はぶっ壊れてますからねw性格が原形をとどめてない。

      2013/04/18 21:34:16

  • ゆるりー

    ゆるりー

    ご意見・ご感想

    ロシアンがイケメン(←)…だと…っ!?かっけえええええええええええええ!!!
    どうも、「眠いよ眠いよ!よし寝よう…何、ターンドッグさんの新着投稿…だと…」と眠気が吹っ飛んでしまったゆるりーですww

    クロスケ…面倒だから(短いのに!?)ロスちゃんで。(どうしてそうなる
    ロスさんはなして共食いをしたとや?そったらことしたらバニカさんになっちまうがね((
    …さて、リアルでほとんど使わない博多弁らしきものはこのへんで終わり。
    違ったらすみません。

    そしてそして…ロシアンが、ついに…『俺』って言った!俺って言ったああああ!!!((
    たまに『俺』って言ってましたけど、本気モードは口調も変わるんですね!
    っていうかいつもの口調より、こっちのほうが凄くかっこいいですね!
    っていうか焔が熱い熱い!熱くてドキバクが止まらないよ!((怪光線か

    某十字傷さんですかw彼もここまで変わりませんでしたねw
    だけどギャップがすごいと『俺』のとき凄くかっこよく思える不思議。
    二大化け猫が激突したら?周りへの被害が半端ないことになりますよww

    …そういえばそろそろ、がくルカも書かないといけませんね……
    うちのがっくんも今回のロシアンみたいにかっこよかったら、もう少しうまく書けそうなんですが…って、ん?うちのがっくんとロシアンの共通点…?
    ……そっか、口調と一人称の変化だ((

    2013/04/17 23:58:07

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      ロシアンは元からイケメンなのさ!!普段堅苦しいだけで!!
      待たれぃwwwwちゃんと寝ないと勉強に響きますよwww
      ……え、俺?大学の課題終わんねーから起きてるのさ(威張るな

      ちょwwwどうして真ん中をとっちゃった!?
      猫又って実は人食いだったり。だからほんとなんで猫を喰ってんだかこのクロスケは。
      私に謝られてもわっちも博多弁はわかりんせん(なぜ花魁化した

      と、とりあえずまぁなんだ、落ち着け!wwww
      口調を変えてるというよりただ単にタガが外れるんでしょうなぁwww
      怪☆光☆線……はだめだぁあああああ((((

      せいぜい『俺』ぐらいですよね、あとそれから『殺してやるからさっさと来い』とかw
      ロシアンは普段が堅苦しいですからねえwww

      待てその共通点はなんかちg((

      2013/04/18 02:04:32

  • 和壬

    和壬

    その他

    猫又+猫又=吸収?←www

    ちょっと…ロシアン?なんかヤバいけど?
    クロスケぶった斬っちゃえ~☆

    2013/04/17 23:41:37

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      なんで吸収しちゃったwwww

      オーバー☆ドラァアアアイヴっ!!!!
      クロスケお仕置きの時間です!!

      2013/04/18 00:34:31

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