『……うーむ』





ヴォカロ町に到着早々、俺は一つ唸り声を上げた。


「……人っ子一人いねえな、この時期は」

「そりゃあ、町の人も忙しいもの」


俺たちが降り立ったのは町の中心部―――――センターステージ。普段はミク達が歌を歌い踊りまわって大騒ぎしている場所だが、さすがにこの師走月末に騒いでいる人はそうそういない。




「あれぇ? Turndogさんとどっぐちゃんがこっちに来るっていうのは珍しいですね」




―――――いや、一人いたな。騒いでこそいないが、結局年末までいいように使われているようだ。


「おう、カイト。また毎度の如く雑用係の様だな」


俺たちに声をかけてきたのは―――――カオスな匂いを漂わせたカイト。

なぜカオスな匂いかというと……現在カイトは右手に20袋近いゴミ袋(生ゴミ含む)を、左手に大量のスルメと昆布の入ったエコバッグを持っているからだ。


「……大変そうだな」

「ええ、まぁ。これからまずこのごみを捨てに行って、その後この松前漬け用のスルメと昆布を届けに行って、その後も年越し蕎麦の配達があって、おせち作りの手伝いがあって、深夜には忘年会の盛り上げ役で呼ばれてるんです」

「あんた、少しは断りなさいよ……」


呆れ返ったどっぐちゃんが頭に手をやるが、カイトは気にする様子もなくニコニコしている。


「誰かが喜んでくれるなら、どんな面倒な仕事も引き受ける。それが僕の信条だからね。町の皆のために僕があるんだ」

「だがしかしなぁ……」

「それに」


突如カイトの周りに3体のロボットが出現した。……いや、よく見ればそれは幻影のロボット。

だがこいつの使う幻影のロボットと言えば……


「……卑怯プログラムか」

「ええ。僕は卑怯にも使える手が一つじゃないですから」

「全く……」


だが何だかんだで、町を回す機構の大部分を担っているのはこいつの雑用だ。馬鹿にはできないというのがまた卑怯だ。


「その調子でいろんな人に使われちまえ。じゃ、俺は他を回ってみるわ」

「はい、よいお年を~」

「おう」


カイトは大量のごみをロボットに持たせ、ゴミ捨て場へと飛んでいった。





「とりあえずは……っと」


俺たちはボカロマンションへとやってきた。だって他に行くとこなんてないしさー。


「おーい、おまいら元気か――――――――――」



『ツゥイィンズインパクトォオオ―――――――――――――――――――!!!!』



「げぼばっ!!?」


共有部屋の扉を開けた途端、猛烈な勢いのリンとレンのフライングクロスチョップが俺の腹を抉ってきた。あれ? なんかデジャヴ……。


「この野郎!!」

「いーじゃん、年収めチョップだよTurndog!」


リンが満面の笑顔を向けてきた。かわいいから許すとか言わないぞ、それで許される威力ではないのだこの双子のフライングチョップは。ヴォカロ町補正で筋力アップしてなかったら風穴空いてたぞ俺。


「あら、Turndog珍しいわね」

「あー!! Turndogさん!! 今ちょうど年越しそば食べてたのー!」


奥からはメイコとミクの声が。……ミクの前のドンブリは普通サイズなんだが、めーちゃんあんたそのドンブリは……。


「なんだその怪物サイズ」

「んー? 腹減ったから。大晦日皆で過ごすために、3日ほど飯抜きで仕事してたもの」

『おい』


どっぐちゃんも一緒にツッコミ。普通の人間なら死ぬぞおい。


「あたし等はこのからだ有効活用してかないとね。普通の人間にできないことをするためにいるんだから」

「そりゃそうだがな……少しは体をいたわれ。弱らない体じゃないんだから」

「……心配ありがと。少しは考えとくわ」


とか言いつつ絶対来年も無茶するんだろうなぁ、この敏腕町長は……。


「そういえばルカさんは?」

「ルカ姉はまだ仕事が終わらないから、夜帰ってくるってさ。ついでにカイト兄さんもそうだって」


ネギの小口切りを山盛りに乗せたそばをすすりながらミクが答える。どうでもいいがそれ本当に蕎麦か? ネギすすってるのと違うか?


「ね、食べていきなよ、おそば!」

「あ、それいいな! Turndog、食ってけよ! めーちゃんが大量に作ったからまだまだ余ってんだ!」


ぐいぐいと俺とどっぐちゃんの袖を引っ張るリンとレン。


「……どうする?」

「メイコ、蕎麦の出汁は?」

「土佐産の鰹出汁よー」

「おっしゃ喰ってきましょ!!」

「釣られんのはええな!!」


ブレないなぁ、どっぐちゃんは。



だが、土佐の鰹節とも聞けば、どっぐちゃんでなくとも心動かされる代物だ。





「……そいじゃあ、少しごちそうになるかな」





ということで。


メイコ特製手打ちそばをごちそうになった俺たちは、ルカさんを探すべく再び街に繰り出した。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

dogとどっぐとヴォカロ町!Part11-2~年収め:カイト・ミク・リンレン・メイコ

舞台はヴォカロ町に!
こんにちはTurndogです。

年末までカイトは便利屋扱いですw
だって使えるんだもん、仕方ないね。
めーちゃんのドンブリのサイズは大鍋二杯分ぐらいと考えておkです。
三日三晩喰わなかっためーちゃんならそんぐらいは楽勝です(え?

因みにネギドカ盛りは普段私がラーメンでやってることww
ボカロに関わってからネギ大好きになったのはきっとミクさんのせいだ。

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投稿日:2013/12/31 15:47:57

文字数:2,058文字

カテゴリ:小説

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