悪ノPさん作、ヴェノマニア公の狂気の二次創作です。
そういえばリンが出てこなかったよね、契約した悪魔ってリンじゃないの?
という妄想から発展したものです。



注意
・リンがヤンデレ気味である。
・がく←リンである。





よろしければどうぞ。





 懐かしい香りがする。ふと、瞼を開けばそこはどこかの屋敷の地下牢だった。
 蝋燭の明かりだけが唯一の光源である地下牢は薄暗く、また心さえも凍て付くほどの寒さだ。地面に視線を落とせば、そこには”自分”を呼ぶための、魔方陣と生贄の姿があった。
 あぁ、またかと黄色い髪の少女――否、悪魔は周囲を見回しながら起き上がった。

「貴方が契約者?」

 その外見に相応しい、幼さと活発さを帯びた声は契約者を責めるように地下に響き渡る。
 契約者である男は、まさか成功するとは思ってもいなかったのだろう、目元に涙を浮かべながら歓喜の表情を黄色い悪魔に向けた。
 今まで薄暗くて分からなかった男の顔が、蝋燭のおかげで照らされた。その顔を見て、黄色い悪魔は目を見開き、柄にもなく驚嘆の声を上げた。

「まさか、貴方」

 魔術用のローブから覗く服には、ヴェノマニア家の家紋が刺繍されていた。
 覚えている。10年前、黄色い悪魔が始めてこの土地にやってきた時、訪れた貴族の屋敷。その貴族の名前は、ヴェノマニア。
 そこで出会った、とある一人の男。

「あぁ、どうか僕の願いを叶えてくれ!」

 紫の髪の毛と瞳、それはかつて黄色い悪魔が愛した紫の人間だった。




黄色い悪魔の狂気






 ヴェノマニア家には、悪魔でさえ魅了してしまうほど美しい男が居る。
 そんな噂から、貴族や平民の女たちは、こぞってヴェノマニア家で開かれるパーティーに訪れた。ヴェノマニア家の党首、ガク・ヴェノマニアの姿を一目見るために。
 けれど、女たちは彼の姿を『一目見る』だけでは終わらない。否、終われなかった。
 今日も一人の少女が、ヴェノマニア屋敷へとやってくる。

「よく来てくれた、ミクリア」
「ヴェノマニア様……、私のようなものをお傍においてくださるなんて。幸せです」

 また一人、また一人と女がヴェノマニア屋敷という名の牢屋へと閉じ込められていく。そんな馬鹿げた女たちを、黄色い悪魔はあざ笑いながら、そして瞳に悲しみを宿しながらただただ傍観していた。
 ヴェノマニアの手が、緑の少女ミクリアの肩へとかかり、ゆっくりと撫でるように色欲を交えながら腰へと降りていく。そんな彼と女の姿を、悪魔は吐き捨てるような表情でただ眺めていた。

「また、新しい女?」

 黄色い悪魔は、ヴェノマニアにしか見えないことをいいことに、緑の少女へと近付き、その髪の毛をいじってみせる。
 ふと視線をヴェノマニアに向ければ、咎めるように紫の瞳が自分を見下ろしていた。しかし、悪魔は気にもせずにそのまま緑の女の髪をいじり続けた。
 そんな黄色い悪魔の態度をヴェノマニアは仕方ないとため息をつき、すぐに悪魔から授かりうけたどんな色欲の魔術より効果のある笑みを女に向けた。

「ディナーにしましょう、ミクリア。今日は貴女が好きな春葱のサラダを用意したんだ。先に食堂へ、僕もすぐ後に行く」

 女を先に行かせたヴェノマニアは、終始女を笑顔で見送った後、すぐに黄色い悪魔に向き直る。

「今月で何人目かしらね、ヴェノマニア公」
「なんだ、悪魔のくせに僕に道徳を教えてくれるのかい? こんなことをしていたら、神から天罰がくだるとでも?」

 悪魔が、馬鹿らしい。
 ヴェノマニアはどんな女よりも艶やかな唇でそう嘲ってみせた。その姿は、見下されているというのに、どんな女ですら魅了されると思ってしまうほど美しい。
 当然だ、どんな女をも魅了する容姿、それが黄色い悪魔とヴェノマニアとの契約の内容。

「そんなことないわ。悪魔の私としても、契約した人間が罪に溺れるほど力が手に入る。むしろ願ったり叶ったり」
「なら、なにも言うことは無いだろう?」
「えぇ。でも、あんまり頻繁に女を誘拐して監禁していると感付かれるわ」

 事実、この国の警察も馬鹿じゃないからいい加減捜査にはのりだしている。この屋敷にやってくる女は大抵、ヴェノマニア公のパーティに招待されているのだから、その共通点を探られたらいくら悪魔と契約した人間とはいえ逃れられない。
 けれど、そんな忠告でもヴェノマニアは真剣にはなってくれない。それに。

「そんなことになっても、君が助けてくれるんだろう?」

 そう、いくら悪魔と契約した『人間』には無理でも『悪魔』自体ならば人間の目を欺き真実を隠しきることが出来る。
 そして事実、私は『悪魔』の力を使い、ヴェノマニアの横暴で強行な行為を隠し続けてきている。
 パーティの招待状が女の家に残っているのならばその家を焼き払い、警察にヴェノマニアの行為を通報しそうな人間がいるのならば口を封じ、真実に近付きそうな警察が居たならばその警察に『不幸な事件』を捧げて二度と事件に関われないようにする。

「僕は本当に君に感謝しているんだ。この力のおかげで、今まで僕を馬鹿にしていた女たちは全員僕のことを愛するようになった。ソニカ家の長女は以前僕とのお見合いで、僕と結婚するくらいならば這い蹲り土を食す方がましだといっていたのに、今では愛人でもいいから僕の傍に居させてほしいと懇願してきている。さらに、あの美貌で有名なペルゼニア帝国第3王女のメイリスまで僕に秘密の手紙を送ってくれる!」

 すべては、愛する人間のため。
 こんなにも彼が喜んでくれるのならばと、何時も呆れながら、それでも喜びを感じながら彼の理想郷を作るための手伝いをする。今まで虐げられ、笑顔を見せることのなかったヴェノマニアが、これほどまでに笑顔を見せてくれるならば。悪魔のくせに、私は神に祈りさえする。どうか、彼の理想郷を完成させてくださいと。

「今日来てくれたミクリアも素晴らしい。昔、青の国の王子の心を打ち落とし、それが原因で黄の国との戦争を引き起こさせた傾城の美女の末裔。美しい歌姫」

 たとえ、彼が他の女を抱こうと。



「全部、君のおかげだよ。リン」



 彼が女を抱くのは、自分を虐げてきた復讐でしかなく『愛』などではない。
 けれど私は違う。彼が私に抱いてくれているのは力を与えてくれたことに対する『感謝』なのだ。それもまた『愛』などではないが、けれど彼の下で善がり狂う女に与えられるものとは比較にならないほど素晴らしい、想い。




「全部、貴方のためよ。ガク」



 そう、これは全て。
 一人の悪魔が、一人の人間に対して冒した、愛の物語。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【ヴェノマニア公の狂気】黄色い悪魔の狂気【二次創作】

悪ノPさん作、ヴェノマニア公の狂気の二次創作です。
そういえばリンが出てこなかったよね、契約した悪魔ってリンじゃないの?
という妄想から発展したものです。



注意
・リンがヤンデレ気味である。
・がく←リンである。





よろしければどうぞ。

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投稿日:2010/07/31 15:05:47

文字数:2,773文字

カテゴリ:小説

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  • くろぼ

    くろぼ

    ご意見・ご感想

    おもしろかったです!女性達の設定とか素敵でした。続き待っています!

    2010/10/02 07:32:51

  • 花影

    花影

    ご意見・ご感想

    リンがリストvol.2に出てきましたよ?
    職業は修道女で年齢はモザイクされてましたw

    2010/08/02 01:06:05

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