傷ついた女の子をなんとかしたくって、
不慣れなパソコンで、
本当はドレスやウイッグ代に使うはずのお金を
巡音ルカや結月ゆかりに使ってた。
ろくでもない父に振り回されて、ボロボロになっていくばかりの
母を見続けてきたからだろうか?
普通の女の子は、どうにでも生きていけるけど、
リスカしてしまうクラスメートを発見したら、
意味の分からない、使命感は膨張して臨界点を突破した。
蒼ざめた顔色で、生気のない目をした彼女たちをやわらかくハグしたい。
親にも誰にも愛されずに、手紙を破り、
敗れた心で、ビリビリに引き裂かれた服と
綿がこぼれ続けるぬいぐるみをそっと抱えて、
今日もどこかの誰かが泣き続けていることを想像すると、
私の心までもが紙くずみたいになりそうだ。
心配なあの子に電話をかける代わりに、
長電話に匹敵する長さの曲を電脳空間に置き去りにした。
メロディは、どこからやってくるのか。
おそらく、嘆き続けていた女性を思い浮かべると、
勝手にドアをノックして、彼女たちの心の扉を開けようとする
私の心情を盗み見て、そ知らぬ顔で、指から生まれてきてしまうのだ。
前世で汚れた行いをし続けてきた、この指は
現世で束の間の回復を願い、
枯れ果てた人々の灯りになるべく、
無謀に音色を奏でようとする。
たとえ、誰も聞いていなくても。
来世があるのかは、知りようがない。
ただ、夭折した声優や難病によって
夢を絶たれた名前も姿もわからない、不明者に
行方不明な迷子な心で架空の歌姫の声で、
確かに実在した御霊に、何かを伝えたいだけなんだ。
音楽でなくても、いい。
心を殺す犯罪や暴力に、絶望に染めるヨコシマな力に
呑まれかけた人に伝わるのは
長ったるい小説じゃなくて、一言のありがとう。
たぶん、そんな短さで十分なのに、いちいち多くの曲と
小説を書いてしまうのは、ろくでもないカルマ。
全ての不幸を燃やし尽くす赤に、何もかもゆだねてしまいたい。
白い花に、下半分の花びらに真紅色の斑点が現れた不思議な花の名は
アノマテカ。
静かに生きられずに、様々な苦難や感動に、人の心はどうしても
ルビー色の炎に騒ぎ出してしまう。
孤独な灰色の夜に、暖色の泡を浮かべたくなる。
暗い自室にやわらかいパステルの渦を渦巻かせたくなる夜もある。
忘れえぬ、いとしい音楽を羽ばたかせてしまいたい。
言葉にしたくない感情にグルグルした気分になる日は
ついつい再生ボタンを押して、疲れた心を一時停止させたくなる。
そして愛なんてチープな感情を永久録音したくなってしまう。
しかし、裏切られ続けてきた怒ツボガールは、
耳をふさいで、心眼を傷つけて、真贋すらわからない人生に
なってしまっているのだ。
だから、私は人の音楽を聞くのをとめて、
下手鳴りに鳴らす。
そっと、一つずつぎこちない歌を、今日もまた。
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