「それがね、まあ、たんなるウワサなんだけどね」

ルナさんは、ちょっと声をひそめて言った。

先ほどまで、けっこう多くの人で賑わっていた、「ニコニコ・デザイナーズ・ビレッジ」のティールーム。
いまはなぜか、お客さんは、ルナさんたち4人だけになっていた。

「このニコビレには、1階の奥の隅に、みんなで共同で使う“作業室”があるの」
「ああ、あるある」
マコさんがうなずいた。

「先月かな、あそこでデフォ子さんが、何かの実験をしていてね。なんか、爆発があったんだって」

「またなの?よう、爆発さすねえ、彼女は」
ルナさんの話に、マコさんはあきれ顔で言った。

「壁の一部に、小さな穴ができちゃってね。一応、応急の修理はしたらしいけど。でね、それから、誰かがそこで作業をしていると」
ルナさんは、声をひそめて言った。

「その穴のあたりから、話し声が聞こえるんだって。一人っきりで、作業しているのに」

「ええー、何それ!」

ぱみゅちゃんは、まゆをしかめて言った。「コワイじゃんよ~」

「あら、いいですね」
レイムさんが、さわやかに言ったので、みんなは驚いて顔を見た。

「そういうの、けっこう好きなんです、ワタシ」

マコさんは、ため息をついて思った。
「おやおや、ヘンな奴ばっかり、入ってくるとこやな、ウチの施設は…」



●デビちゃんすべり出し順調!

「よーし、できたわー」

お店の売り場の棚に、ポーチを並べて、汗をぬぐうゆくりさん。

テト・ドール“デビちゃん”の柄の新製品が、たくさん並んでいる。

「この間、試しに仕入れたデビちゃんのポーチも、売り切れましたよ」
カウンターから、レンくんが声をかける。

「そうねー、すべり出し順調ダヨ!」
ゆくりさんは答えた。

「けっこう、置いているお店は多いのに、どこでも人気があるみたいですね」
棚の前にやってきて、レンくんは、新製品を手に取った。

「そうそう。マルクトのトニオさんのとこでも、人気だって言ってたわ。ちょとコワいけど、かわいいものねー」
ゆくりさんも“デビちゃん”ドールの頭を、指でチョンとこづく。


●新しいカフェもスタートへ…

「そういえば、テトさんが言ってましたけど」
レンくんは言った。

「こんどできる、新しいカフェの雑貨売り場にも、この新製品を置くそうです」

「あら、カフェ・つんでれにも?」
彼女は、あごに手を当てて、思い出したように言った。
「そういえば、あそこのスタッフって、もう決まったのかしらー?」

「ええ、ウエイトレスの1人は、決まったそうです。でも、もう1人を探してるんだって」

レンくんは腕を組んで言った。
「へへ、僕、けっこう情報通でしょ。営業回りで、いろんなとこの話を聞くから、物知りなんすよ」

「うん、いい事よー。雑貨の仕事は、情報がイチバンだからね」
ゆくりさんは笑った。

「でも、新しいカフェ、上手く行くといいわねー」( ^・ェ・^)/

ライセンス

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玩具屋カイくんの販売日誌(145) ニコビレの怪?

レンくんの雑貨店アルバイトも、ようやく板についてきたようです。

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投稿日:2012/03/18 16:21:49

文字数:1,236文字

カテゴリ:小説

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