「マスター、マスター。訊いてもいいですか?」
「うん? なぁに、カイト」
「えっと、ですね。マスターは、俺のこと……どれくらい、好き、ですか?」
「『どれくらい』? 難しい事言うね、カイト。そうだなぁ……『春に浮き立つ気持ちと同じくらい』、とか?」
「わ、わかるような、わからないような」
「他の言い方だと……うぅんと、じゃあ、『今までの自分を全肯定して、感謝を捧げられるくらい』、かな」
「……余計に難しくなってます、マスター」
「あれ、そう? ――私は大きな病気とか怪我とかもなく、平穏に恵まれた人生を送ってきてると思うけど。でも、その時々で、その時なりに悩んだりきつい思いをしたりもして。それは生きてたら誰でも皆当たり前にある事なんだと思うんだけど」
「……はい」
「そこを乗り越えて、諦めなかったり折り合いつけたりして何とかやってきて、今こうしてて。その果てにカイトと出逢えて、カイトに好きって思ってもらえたのも、きっとそういう積み重ねのおかげで。だから、悩んだりきつかったりした事も、失敗したり後悔したりした事も、今なら」
「それは、……それは、凄いことですよね、マスター」
「うん。凄く凄く、凄いことだと思うよ、カイト。自分をまるごと大好きになるって、本当は一番難しいんじゃないかなぁ」
「――それが、できちゃうんですね。マスター」
「うん。ふふ、だってほら、カイトにこんなに想ってもらえる私だからね。そういう風になってくれてありがとう、って思えるし、そういう未来が待ってるからね、って言いたい気もする。……それくらい、」
「マスター。マスター、俺は、俺も、きっと貴女に負けないくらい、」
「……うん」

 ――あなたのことが、だいすきです――

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『あなたと、しあわせ』【カイマスSS】

あなたと、しあわせ。
実は、3月からちょこちょこ上げてきたカイマスSSシリーズの総タイトルのつもりでした。
『もしもの話』から始まって、次に上げる『いつかの話』まで、全てはこれがメインコンセプトです。
日常に転がる、些細な『しあわせ』のシーンを書きたかったのでした。

閲覧数:215

投稿日:2011/04/27 00:07:08

文字数:728文字

カテゴリ:小説

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